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2020年12月9日【LEADERS VOICE】 NEXT MOBILITY vol16

逆境が吹く中、三菱自動車が 生き残りを賭け存在感を示す道は(前編)

三菱自動車工業 取締役代表執行役CEO

加藤 隆雄

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 三菱自動車。日本の旧財閥のスリーダイヤ・三菱グループの自動車企業である。三菱自動車工業が属する三菱グループは国産初の量産乗用車「A型」を製造した名門だ。三菱自動車は、かつて米クライスラーとの資本提携を皮切りに、独ダイムラーとの資本提携を経て2016年から日産と資本提携してルノー・日産の日仏国際連合に加わった。だが、この日仏3社連合はコロナ禍による業績悪化が追い打ちをかけ、いずれも苦境の中にある。

 

 そんな三菱自動車も、燃費不正問題を経た日産との提携によって打開を求めV字回復を目指したものの、その拡大路線は収益性低下を招いてしまい大きな転換点を迎えている。昨年6月に就任した加藤隆雄CEO(最高経営責任者)は、今期から22年度までの新中期経営計画で経営基盤安定へ向けて思い切ったコスト構造改革と収益力改革に乗り出した。だが、その矢先に約16年も三菱自動車を率い、日産との資本提携を決断した益子修前会長が急逝。これまで3社連合の折衝役でもあった益子氏の不在は、傍目には加藤三菱自体制の〝大黒柱〟を失った恰好に映る。就任1年で多くの課題を突きつけられた加藤体制が、構造改革と選択と集中を推進すると共に、3社連合に於ける三菱自動車の存在感をどう示していくのか。(主筆・佃 義夫)

 

 

益子前会長の急逝は、三菱自動車にとって大きな痛手で残念なこと

 

— 益子修前会長が8月末に急逝されたのは驚きました。まずはご愁傷申し上げます。8月7日に突然の会長退任の発表があってから1カ月足らずで亡くなられたのは残念です。約16年も三菱自動車再建に注いできた方で、日産との資本提携の筋道をつくった方ですから、ご本人も無念だったでしょうし、加藤CEOにとっても後見役だった。

 

加藤 本当にそうですね。ちょっと急なことで我々も驚きましたし、大変、残念なことでした。

 

 

三菱自動車CEO就任から1年、コロナ禍は構造改革の必要性を高めた

 

— 昨年5月に益子会長・加藤CEOのトップ交代内定会見があり、6月に加藤三菱自動車体制がスタートして1年が経過。今日に至る流れは加藤さんにとっても大変な日々となりました。

 

加藤 一言で言いますと本当に激動の1年でした。ただ益子会長と相談しながら今の新中期経営計画をまとめ、やるべきことは明確にしています。難しい状況であることに変わりはないのですが、落ち着いてやっていきます。

 

そもそも私は、去年6月にMMKI(インドネシア合弁生産会社)から帰ってきたのですが、赴任地(MMKI社長で現地赴任)ではアライアンス効果で大きく台数も伸びて収益も上り坂。当社も復活して、いい会社になったのかなあと思って帰ってきたらですね。

 

 

— 昨年5月の加藤CEO内定会見で、益子さんも順調な業績回復による〝若返りのトップ交代〟と言っておられた。

 

加藤 三菱自動車本体の中身をつぶさに見ていくと、思わぬ課題が見つかったことに驚きました。利益の出る体質になっていると思っていましたが少し無理があった。そこで改革をやらなくちゃ駄目だと認識し新中計を発表。対策を打っている内にコロナ禍が来て、乗り越えるべき壁が更に高くなった印象です。しかし今は、既に決めた構造改革をやり切るのみという姿勢です。

 

 

新中期経営計画発表で思い切ったコスト改革と収益力改革で経営基盤安定化を

 

— 三菱自動車は、前期でまたも赤字転落となり、今期もコロナ禍が加わって連結最終損益が3600億円の赤字予想と厳しい業績下にあります。今期からの新中計は22年度までの3カ年計画で、三菱自動車再建への〝最後の砦〟とも言われています。新中計を〝スモール・バット・ビューティフル〟と名付け「選択と集中」「構造改革」を思い切って断行し、しっかりと収益体質を取り戻すことが最大の眼目となる。その中でも優先事項といいますか、特に重要な点はどこでしょうか。

 

加藤 まずパジェロ製造での生産停止。欧州に新車を投入しないこと。それから間接人員を主体に人員削減を行うこと。この三つのどれが欠けても駄目だと思っています。これに欧州での固定費を下げていくことを組み合わせて、しっかり実施することが一番大事です。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。