2020年12月9日【LEADERS VOICE】 NEXT MOBILITY vol16
逆境が吹く中、三菱自動車が 生き残りを賭け存在感を示す道は(後編)
三菱自動車工業 取締役代表執行役CEO
加藤 隆雄

日本国内販売は、販売体制再編と共に売り方を変える
— 日本国内市場では、この先さらに少子高齢化が進みます。また若者のクルマ離れと言われて久しいですが、同市場は総需要で500万台強から、さらに減っていくのは否めない。国内販売の改革をどう進めますか。
加藤 これは、なかなか頭の痛い問題ですが、やはり決断せざるを得ないだろうと中計発表の前に、我々の100%子会社である北海道三菱自販を売却し、さらに西日本三菱と中部三菱の合併を進めました。こうした計画を含め、バックオフィスの合理化によって固定費を削減します。
併せて数字も大事ですが、もう1度原点に立ち戻って、我々三菱自動車の日本国内に於ける販売の仕方について、細かいところも含め社内で議論しています。それはもう大変細かい話なのですが、車種ラインナップの在り方だけではなく、オプション設定の提供手法など現行が本当にベストなのか。
その他、販社の収益構造に取り組むなど、そういう難しいところに我々は、きちんと適した手を打てていたのか。今しっかり見直そうとしています。
これからはサブスクリプションという新たな流通手段もありますし、オンライン販売も試みて行く訳ですが、その際、我々独自のビジネススタイルを確立させていかないと、次の時代に生き残っていけないと思っています。
商品戦略は、環境対応も含めて三菱自動車らしさを押し出す
— 三菱自動車の商品戦略ですが、これからCASE、MaaSあるいは環境規制などの状況が進む中で、商品バリエーションを今後、どの方向に展開して行くのでしょうか。
加藤 商品戦略については環境技術が鍵となります。さらにもう一つはパジェロやランサーエボリューションで我々が培ってきた走りの技術があります。この二つを柱にやっていきたいというのが、当社の基本的な姿勢です。
仮に都会的な街中で映える流線型のスタイリッシュなだけのクルマ。そういう商品を出したとしても、我々のブランドに期待されているお客様からは、認めて頂けないと思います。
やはり〝三菱自動車らしいクルマを作れ〟と。従って今後は真のブランド価値とは何かを軸に考えていきたいと思っています。そういう意味でASEAN集中という一つの方向性は出したのですが、私としては宿題が残っています。それは先の三菱自動車らしいクルマとは何かです。これをどういう形で具現化していけばいいのか。引き続き社内でも議論し、考えていきたい。
— 三菱自動車らしいというのは、何を意味するのでしょうか。
加藤 そうですね。そこへの問いかけも含めて一般の人には、パジェロや、ランサーエボリューションが既成概念としてあるでしょう。ただ将来の環境規制もありますし、未来永劫そういったクルマがこの先も持続的にお客様に好まれていくのか。また社会に貢献できるのかを考えると、そうとも言えない。
我々の技術をどう使うのかを良く考える必要があるということですね。
— エクリプスクロスは、三菱自動車らしいクルマと評価されました。
加藤 はい、ああいうクルマは、やっぱり三菱自動車だよねと。足回りはAWC構想を具現化するなど、ある意味ランサーエボリューションの遺伝子を引き継いでいます。
実はPHEVにしても、三菱自動車らしいクルマとして、私としてはお客様へのアピール訴求が少し足りないのではないかと思っていて、そうした〝ものづくり〟の提供スタイルをどうするかも考えていきたいのです。
やはりPHEVは我々が大切にすべき主要技術の柱ですから、こうしたものを次世代の製品に三菱自動車らしく反映させていきたい。
— PHEVの技術的原点となった日本初の量産のEV、アイミーブ(i-MiEV)で三菱自動車は電動化技術のパイオニアになりました。
加藤 そうなんですよ。長年温めてきた電動化技術を背景に、日産との共同開発でも三菱自動車らしい環境技術を推し進め、エクリプスクロスPHEVを皮切りに、今後も我々の商品の魅力をアピールしていきたと思います。