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2020年12月17日【特集】 NEXT MOBILITY vol16

選択の時代 第3回/ミスミ、部品調達に革命を 起こすオンデマンドサービスを 新たな選択肢に

NEXT MOBILITY編集長 坂上賢治

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第5章 ものづくり現場の選択
ミスミ、部品調達に革命を起こすオンデマンドサービスを新たな選択肢に

 

 ミスミグループ本社がデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した革新的な部品調達システムで業績を大きく伸ばしている。設計データをアップロードすればAI(人工知能)で自動見積もり、部品の即日出荷が可能なソリューションで、金型部品や設計試作品などの部品調達にトヨタ自動車をはじめとした多くの自動車関連企業が導入する。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

 

オンデマンド製造サービスでシェアナンバーワンに成長

 

 展開するのは部品調達オンデマンドサービスの「メヴィー(meviy)」。部品調達能力が製造業の生産性向上のボトルネックになっているのに目をつけて開発した。メヴィーを利用すれば、紙図面などを使った従来の調達方法に比べて、部品調達に要する時間が90%以上削減できるという。

 

利用ユーザー数も直近の1年間で3倍に伸び、4万5千社を突破。今やオンデマンド製造サービスでシェア6割のナンバーワン事業にに成長した。今年からグローバル展開もスタートさせる意向だ。

 

こうした実績を踏まえ、今年7月中旬にはシステムを全面刷新。開発に1年半費やし、レスポンスやアプリ開発・保守効率を大幅に高め、堅牢性、拡張性を確保したリニューアル版を投入した。

 

加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で疲弊している中小企業を支援するため、メヴィーで調達可能な装置・設備用部品を2020年8月末から12月末まで無償提供する取り組みも開始した。

 

 製造業の生産性向上に向け、まさに選択肢を広げるソリューションである。

 

 

 

中小企業の支援が国内製造業強化のカギ

 

 このような取り組みに合わせて8月下旬にオンラインによる記者会見を開いたミスミグループ本社の吉田光伸常務執行役員で3D2M企業体社長は、メヴィーについて「革新的な技術で画期的なサービスを生み出す」ソリューションと強調。

 

中小企業の支援については「国内製造業99%が中小企業であり、いかに同分野の労働生産性を上げるかが我が国製造業の強化のカギだ」と述べ、アフターコロナを睨んで支援に乗り出したとした。

 

 革新的な部品調達オンデマンドサービスのメヴィーは、ユーザーが3DデータをアップロードするとAI自動見積もりで即時に価格・納期を提示し、並行してデータ連携による調達プログラムを自動生成する。この結果、最短で即日調達部品の出荷が可能という。

 

 メヴィーによる部品調達サービスは2016年に金型部品から開始し、2017年には設計試作品などのラピッドプロトタイピングへ、2018年にはFAメカニカル部品へと展開領域を拡大した。

 

 具体的な調達部品でいえば、成長市場である自動車CASE分野の車載用電池、モーター関連試作、電子分野の半導体の製造・研究開発、話題の医療分野のPCR検査装置製造などに応用されている。

 

 

 

取扱製品は約3100万点、取引先は32万社にのぼる

 

 導入企業は、トヨタ、日産自動車、ホンダ、マツダ、デンソーなどの自動車関連企業から、パナソニック、ソニー、三菱電機、東レなど多種多様な分野に及ぶ。

 

1963年創業のミスミは、もともと機械部品のカタログ販売会社として注目されていた。当初は機械商社として展開していたが、2005年に駿河精機を経営統合したことでメーカーへと転身。今日の礎を築く。

 

 取り扱う機械部品はものづくり産業の社会インフラである生産間接材を中心に、自動車やスマホ、家電、オフィス機器など多種多様な分野に供給する。取扱製品は約3100万点、取引先は32万社にのぼり、全世界に22工場、17の配送センターを持つ企業へと発展した。

 

業績も新型コロナ感染症の影響前まで年平均で15%の成長率を達成。前期の売上高は3133億円で、吉田常務執行役員はメヴィーによる業績貢献度についても「ユーザー数の伸びに匹敵する」との見解を示した。

 

同社が早くから展開してきた機械部品のカタログ販売は、規格品ならば3DCAD(3次元キャド)で設計したものに、選択してオンラインで注文すれば約3日間で届く革新的なシステムだ。

 

だが、複雑な部品など規格化が困難なものを採用する場合は、設計は3DCADで行ったとしても、それぞれ調達部品を紙図面で作成する必要あり、さらに加工見積もりや製造・納期を加えると、調達するまでに約21日の日数を要する。シンプルなものでも、穴の位置が違うだけで規格外になるものがあるという。

 

同社によると、現状カタログで提供できる規格品領域は52%、図面品領域が48%の比率とほぼ半々。しかし全体がそろわなければ製品は組み立てられず、紙の図面による調達遅れがものづくり全体のスピードを阻害する要因と分析した。

 

 こうした中で、生まれたのがメヴィー。例えば、部品点数1500点の生産設備の部品を調達する場合、紙図面だと作図に1点30分かかり1500点で750時間、さらに見積もりに80時間、製造に112時間程度かかると試算する。

 

それをメヴィーで行えば、設定に70時間、製造に8時間程度と約80時間で完了する。紙図面を使った場合に比べて92%の時間削減だ。

 

 

今後は世界の有力サプライヤーと連携強化を目指す

 

 吉田常務執行役員は部品調達現場の実態として「作図の手間」「見積もりの手間」「待ち時間」が〝時間〟の3重苦と呼ばれていると紹介し、従来の方法では部品点数1500点の生産設備に費やすトータルの部品調達時間は「約1000時間、約4か月に及ぶ」と述べた。

 

 仮に、日本の製造業38万社が先の設備を1台調達したとすると、コスト換算で年間2兆円以上の浪費になるとも試算。さらに生産年齢人口の減少や働き方改革による残業減らしなどにより、「人手不足」が今後一段と加速するとし、労働生産性の取り組みは急務だとした。

 

現実に、日本の製造業の労働生産性は下がり続けており、OECD(経済協力開発機構)加盟国中、2000年に1位だったのが2017年には21番目に低下した。こうした中で、DXを活用した付加価値向上が求められており、調査でも成長企業ほどデジタルツールを上手く使いこなしている図式が浮かぶ。

 

同社の部品調達オンデマンドサービス・メヴィーはこのようなデジタルツールとして専門的機関からも高い評価を受けており、2019年10月のシーテック・アワード・スマートX部門でグランプリ、2020年3月の日本産業技術大賞で文部科学大臣賞などを受賞した。

 

7月中旬に投入したメヴィーの最新版は、無駄で冗長なコードを整理し最新テクノロジーを駆使することで、サイトレスポンスを15倍に向上。また、アーキテクチャーを全面刷新するとともに、マイクロサービス化したことで、アプリ開発・保守効率が4倍に高まった。将来の拡張性も確保するシステムだ。

 

 吉田常務執行役員は今後のビジネス展開として加工種類を一段と拡大するとともに、世界の有力サプライヤーと連携強化を目指す考えを示した。すでに同社は海外事業が売上げの半分以上を占めているが、メヴィーについてもグローバル化に乗り出す。これにより労働生産性改革を世界レベルで推進する。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。