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2024年3月7日【IoT】

ライドシェアベンチャーのニューモ、まずは大阪から事業開始

坂上 賢治

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皮切りは大阪のタクシー会社に資本参画し今年秋にも事業開始

 

ライドシェアベンチャーのnewmo( ニューモ / 本社:東京都港区、代表取締役:青柳直樹 )は3月7日、東京都内の会見場に報道陣を募り、事業戦略発表会を開催した。( 坂上 賢治 )

 

同社の設立は2024年1月4日。CEOの青柳直樹氏は、2002年慶應義塾大学総合政策学部卒業。ドイツ証券投資銀行部門での勤務を経て2006年グリーに入社。 グリーでは米国法人CEO、事業本部長を歴任。 2017年11月からメルペイ代表取締役、2022年1月にメルカリ上級執行役員SVP of Japan Regionに就任。

 

 

2023年6月からMarketplace CEOとしてメルカリ日本事業を統括。2023年12月にメルカリを退職し、2024年1月に〝利用者視点に立ったサステナブルな地域交通の実現〟を目指してnewmoを創業した。

 

創業後の動きも素早く、翌月の2月には、メルカリ、みちのりホールディングス( 後に、みちのりホールディングスとはnewmo設立に関わる意見の相違でニューモが自ら投資関係を辞退した模様 )の他、12のベンチャーキャピタルと個人投資家などから約15億円の資金調達を実施。現在、タクシー・ライドシェア事業の本格展開に向けて着々と準備を進めている。

 

吉村洋文大阪府知事は「日本版ライドシェアは旧来のタクシーの規制緩和に過ぎない。この段階でライドシェアに挑むnewmoを応援して大阪で真のライドシェアを実現させたい」と語った。

 

事業戦略発表会では、維新・大阪府知事の吉村洋文氏や、自民党・衆議院議員( 元三重県知事 )の鈴木英敬氏が応援挨拶でリアル登壇するなかで、青柳CEOが自ら、会社設立背景や今後の事業戦略、展開予定。パートナーシップ等についての詳細説明を行った。

 

鈴木英敬衆議院議員は「選択肢のない社会より、選択肢のある社会の方が良い」、自身も自民党でライドシェア研究に携わっていることからnewmoの挑戦する姿勢を評価した。

 

まずnewmoの設立について青柳CEOは、「以前からプライベートにより活動も含め日本各地を訪れる中で、移動手段の不足による機会損失に問題意識を持ち、より便利な移動手段を提案して地域課題を解決したいと考えていました。

 

実は、同分野で過去に起業を検討し断念したこともあったのですが( 7年前にライドシェア企業の設立を志し、二種免許を取得するなど情報収集にも努めたが、当時は今程ライドシェアへの追い風が得られず断念した )、コロナ禍を経て日本各地で移動の課題が深刻化。その後、タクシーの規制緩和やライドシェアの導入の議論も進むなか、長年の目標として抱き続けてきた〝サステナブルな地域交通の実現〟を目指して今年、newmoを設立致しました」と述べた。

 

またnewmo自身の事業展開については、日本国内での現行規制ゆえにタクシー会社でないとライドシェア事業へ参画できない実態を踏まえ、自らタクシー事業者となって事業を始動させるとした上で、「newmoは、地域交通の課題解決を目指し、日本全国のタクシー事業者との資本参加・提携を通じてタクシー事業とライドシェア事業のふたつの事業形態を並立させるハイブリッドモデルで進めてまいります。

 

 

まずライドシェアドライバーの獲得では、安全運転講習の実施や事故対応、SOS機能など安心して働ける仕組みを整備する他、需要に応じた報酬( ダイナミックプライシング )の設定や、高い還元を通じてドライバーとしての成り手を醸成。女性・若年層を中心に担い手の裾野を広げます。

 

 

一方、ライドシェアを担うドライバーの資質については、法人タクシー同様にお客様が安心・安全にご利用頂けるよう、ドライバー登録時に於いて金融機関水準の本人確認(犯収法準拠)することを筆頭に、ドライバー・車両への要件審査( 登録時審査・定期審査での事故歴・違反歴・犯罪歴・反社チェック等を外部データベース活用で照会する )を行うことに加え、実運行時では乗務員管理、車両管理、点呼、乗務・運行記録、事故対応・記録、運転者指導・監督など、安全運行を担える厳格な運行管理システムを構築することによってライドシェア事業の安全を担保します。

 

 

対してライドシェアを利用頂けるお客様側の安心も醸成するべく、専用のアプリを通じてタクシーとライドシェアのいずれかを選択することができるようにする他、ドライバープロフィールの事前確認や、女性ドライバー配車の望まれるお客様対応。大型荷物や車いす対応、ベビーカーへの対応。外国語対応の他、利用シーン、ニーズに応じた多様な選択肢を提供してまいります」と語った。

 

 

またライドシェアサービスを中長期的に安心してご利用頂くための裏付けとして、東京海上日動火災保険( 東京海上スマートモビリティ含む )、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険の3社とライドシェア事業専用の保険商品を検討した上で、個別業務提携契約を各社と締結することを合意しています」と運行上の安全性確保の裏付けを語り、安心の懸念を払拭すると畳み掛けた。

 

なお肝心の事業の本格開始について青柳CEOは、「今年秋、大阪でライドシェア事業を開始いたします。この際は、大阪市域交通圏でタクシー事業を提供する岸和田交通グループ傘下の岸交に資本参加。

 

 

共同経営を通じてタクシー・ライドシェア事業の双方を推進していきます( 現行の規制下では、特定地域のタクシー事業を行うには、当該地域で事業権を持つタクシー会社との提携が無いと事業参加できないため )。

 

資本参加する岸交は、大阪府内にてタクシー会社を複数有する岸和田交通グループの一社で、大阪市域交通圏にて車両40台、ドライバー60名を有しています。

 

同社は、年々減少するタクシー運転手の不足を補うためには抜本的な取り組みが必要だという考えのもと、5年以上前から日本におけるライドシェアの可能性を模索するなど、新たな取り組みを積極的に検討していました。

 

その一方で、コロナ禍での需要の落ち込みに伴うグループ全体の売上減少などもあり、個社でライドシェア導入に向けたアプリ・システム開発やドライバーの採用等を推進することは難しいという課題がありました。

 

そこで今回、newmoが岸交に資本参加して共同経営を行うことでnewmoからは、資金面はもちろん、タクシー業務の運行管理DX化やライドシェア導入に向けた技術支援・ドライバー採用支援を行います。

 

対して岸交は車両・タクシードライバー、運行管理のノウハウ、営業権等の既存アセットを活用することで、タクシー事業とライドシェア事業の双方を推進していきます。

 

そもそも当地では、2025年の大阪・関西万博開催で約2,800万人の来場者による交通需要増が見込まれています。この需要増に応えるべくnewmoと岸交は2024年秋より大阪府内にてライドシェア事業を開始することになります。なお、岸交に対する出資金額・比率は非公開となります。

 

 

また今回の岸交とのパートナーシップを踏まえ、近隣エリアのタクシー事業者がライドシェア参入を検討される際、newmoの〝OSAKAモデル〟との連携を通じたライドシェア事業も併せて展開してまいります」と説明した(但し実行にあたっては、大阪万博に伴う政府の特例的な規制緩和措置が必要)。

 

また最後に青柳CEOは、「子育て世代や高齢者、買い物難民、インバウンド観光客といった様々なニーズに対し、便利・安心・快適な移動手段を提供することを通じた〝移動の負の解消〟だけに留まらず、地域経済の活性化、更には日本経済の活性化を目指し、2025年度中( 2026年3月末まで )に〝全国主要地域での展開〟〝配車対応3,000台〟、〝ドライバー数1万人〟を目指します」と結んだ。

 

 

ちなみに岸交の中塚貴志代表取締役は、「当社は昭和56年に設立し、大阪府内にて皆様の移動の足を支えてきましたが、近年コロナ禍を経て、人手不足や設備投資の不足に課題を持っていました。

 

また、以前から、ライドシェアはタクシー業界が恒常的に抱える人手不足等の問題を解決するツールの一つであると考えておりました。

 

タクシー業界は、今後大きな変革の時を迎えます。先人が築きあげてきた世界に誇る日本のタクシーのすばらしさを継承しつつ、今後直面する人手不足問題に対処し、全ての人が不自由なく移動できる社会の実現を目指して、newmo様と共に頑張って参りたいと思います」とのコメントを残している。

 

なお会見後の筆者としては、政府や団体等の諸々の規制により、自由な動きが出来ないベンチャー企業の今後の困難が垣間見えるようにも思える。一方で、政府による規制があるゆえに消費者や社会が守られる一面もあり、必ずしも規制自体が悪者という訳ではない。

 

ただ、これまで国内人口が右肩上がりだった昭和はとうに過ぎ去り、今や令和を迎えて、かつて有用だったビジネスモデルが通用しない時代となって久しい。大阪で吉村知事から、仮に間接的であったとしても幾何かのサポートを受けつつ、日本に相応しいライドシェアサービスの一端を見い出せることができれば、現在、困難を極める輸送産業に於いても新たな突破口が見てくるのかもしれない。

 

 

法人名:株式会社岸交(岸和田交通グループ)
設立: 昭和56年12月4日
代表者:代表取締役 中塚貴志
本社所在地:大阪府岸和田市木材町1-4
営業所所在地:大阪府堺市西区鳳北町九丁41番地
車両台数:40台
従業員数:60名(令和6年3月時点)
展開エリア:大阪市域交通圏
資本金:5000万円
WEBサイト:https://kishiko.co.jp/company/

 

法人名:newmo株式会社
代表 :青柳直樹
設立 :2024年1月4日
資本金:16.65億円(2024年2月末)
所在地 :東京都港区虎ノ門5丁目9番1号 麻布台ヒルズガーデンプラザB 4階
事業概要:タクシー・ライドシェアサービスの運営
WEBサイト:https://newmo.me/

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。