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2023年7月27日【アフター市場】

帝国DB、ビッグモーター不正を受けて中古車市場調査

坂上 賢治

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業界大手の不正、中古車業界への「風評」悪化による需要減少が懸念材料

 

帝国データバンクは7月27日、中古車小売最大手「ビッグモーター」の不正により動向が注目される中古車販売業界の現状と今後について調査・分析を行った。

 

それによると、まず22年度の中古車販売市場に関しては過去最高3.9兆円 新車不足に伴う需要拡大が追い風になったという。

 

 

より具体的に2022年度の中古車販売市場(事業者売上高ベース)は、前年度から0.3%増の3兆9073億円に到達。21年度の3兆8948億円を上回り、過去最高を更新した。

 

また売上高の動向では前年度から「増収」となった企業の割合は29%と、21年度時点に比べて縮小したものの、前年度並みを維持した企業の割合が多かった。なお市場シェアのトップは「ビッグモーター」(2022年9月期:推定約5800億円)で、中古車販売市場の約15%を占めた。

 

そもそも中古車販売市場は、東日本大震災の被災地を中心に需要が拡大した2011年度以降、19年度まで9年連続で拡大が続いた。

 

 

コロナ禍の影響を大きく受けた20年度は一旦減少したものの、21年度以降は新車販売で人気モデルやグレードで半導体不足などの影響を受けた供給量減、納車遅れ等が多発。

 

併せて完成車メーカーによる新車価格の値上げも相次いだことで、車検切れなどで発生したユーザーの買い替え需要を中心に、割安で即時納車が可能な中古車の人気が高まり、こうした中古車人気を背景に仕入価格の上昇が続き販売店での店頭価格が押し上げられたことも市場が拡大した要因となった。

 

 

なおユー・エス・エスによると、22年9月に中古車オークションでの成約額平均が過去最高となる122万円を記録した。一方、新車納期の遅れに伴う自動車の下取り件数減少で低走行・高年式の優良中古車などで獲得競争が激化し、中古車の十分な確保ができなかったことで販売台数を減らし、減収となった企業も多かった。

 

この22年を中心とした損益ベースでは、2022年度は「増益」が47%で最も多く、「減益」(30%)を含め81%が黒字となった。

 

中古車需要の増加に伴い、中古車オークションなどの成約価格が高騰したことで仕入価格が上昇した一方、堅調な需要を背景に店頭価格へ価格転嫁しやすかった企業が多かった他、利幅の大きい高価格帯のミニバンなどを取り扱うことで収益性を改善したケースも見られた。

 

一方、車両購入ユーザーを対象に車検など利益率の高い自動車整備ニーズも好調で、結果的に収益面では黒字となった企業が増加した。「赤字」となった企業では、店舗出店など業容拡大や、人件費の増加による販管費の増加を反映した企業が多かった。

 

 

結果、2022年度の中古車販売市場は、新車生産の遅れなどを背景に過去最高の3.9兆円に達した。但し足元では、部品調達難の解消などを背景に国内完成車大手の新車生産台数は回復傾向にある。

 

割安な中古車人気は依然として高い水準にはあるものの、22年度後半以降は成約台数・単価ともに頭打ちが続くなど変調の兆しがみられる。中古車相場の下落により、高値圏での仕入れを余儀なくされた中古車販売店では「逆ザヤ」による収益悪化が徐々に広がるとした。

 

加えて売上高で市場シェアの1割超を占める業界最大手のビッグモーター(東京・港)による不正の影響を受け、消費者の不信感などから中古車需要の減少など風評悪化による影響が懸念される。

 

旺盛な中古車需要と、販売単価の上昇に支えられた中古車販売市場の拡大ペースは、23年度にも一服する可能性があると結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。