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2023年10月20日【アフター市場】

トヨタ、米地域で北米充電規格(NACS)採用を決める

坂上 賢治

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トヨタ自動車傘下の北米事業体Toyota Motor North America, Inc.(TMNA)は10月20日、テスラ社と2025年からバッテリーEV(BEV)に北米充電規格(NACS/North American Charging Standard)を採用することで合意に至ったことを公表した。( 坂上 賢治 )

 

今合意により、トヨタ及びレクサスのユーザーは、北米全域で12,000基以上のテスラのスーパーチャージャー(急速充電設備)を利用できるようになる。

 

現時点でトヨタ車とレクサス車のユーザーは、アプリを通じてACレベル2やDC急速充電ステーション等の充電ネットワークへアクセスできるが、今回のNACS採用により、DC急速充電ステーションを含む、更に多くの充電インフラが利用可能となって自社BEVユーザーの行動範囲拡大に繫がるとしている。

 

またトヨタとレクサスは、2025年からトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキー(TMMK)で生産予定の3列シートSUVを含む、一部のトヨタとレクサスのBEVにNACSポートを搭載する。

 

更にCCS規格(Combined Charging System : コンボ)を搭載したトヨタ車やレクサス車を所有・リースしているユーザーに向けては2025年以降、NACS充電を可能にするアダプターの提供を予定。

 

今回のNACS系チャージャーの利用拡大にあたってトヨタは、「多様な選択肢を提供するという電動化戦略に則り、充電についても、それぞれの地域にあったサービスを提供し、自宅でも公共の場でも不自由のない充電体験を通じ、お客様の利便性向上を目指してまいります」と話している。

 

結果、北米では先の7月26日以降(フォードは米時間の5月25日段階でNACS利用を公表)、ホンダ傘下のアメリカン・ホンダモーター、BMWグループ、ゼネラルモーターズ(GM)、ヒョンデ、キア、メルセデス・ベンツグループ、ステランティスNV、ボルボ、日産と相次いでNACS採用に動き、NACSがデファクトスタンダードになりりつある。

 

もちろんテスラ以外の米国メーカー製EVが採用してきたCCS1(コンボ規格・北米版)規格も引き続き利用されるものの、テスラが実業上に於いて、他メーカーへNACSの利用を呼び掛けた他、バイデン政権が打ち出していたEV拡大政策に乗じるなどのロビー努力も実り、Tesla charging connectorの北米充電標準規格へ向けた戦略が成功。

 

そもそも当初テスラは、充電時にユーザーの車両走行・使用データを吸い上げるべく(納車済み車両を含むハード&ソフトウエアのアジャイル改良・開発に利用していく思惑もあり)、充電設備の完全自前化に動いた訳だが、つまるところ自動車メーカー自身が、充電インフラの独自構築に責任を持つことに動いたテスラに利する格好となった。

 

これで北米の充電網はNACSへ。その他のエリアは現段階で、欧州の充電網はCCS2(コンボ規格・欧州版)、日本はCHAdeMO(チャデモ)となっているものの、今後、充電インフラ網の構築については、個別地域に於ける利用ユーザーを味方につける戦略づくりも求められることになるだろう。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。