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2020年6月8日【アフター市場】

2020年ボッシュ・グループ年次記者会見を開催

松下次男

2019年度の日本国内の売上高約3300億円(前年比1%増)

 

 ボッシュ(クラウス・メーダ―社長、東京都渋谷区)は6月8日、2020年ボッシュ・グループ年次記者会見をオンライン方式で開き、2019年度業績や新たな事業展開、戦略を公表した。それによると交差点での交通事故削減効果が高い新世代側方レーダー搭載の運転支援システムを2020年から量産化するほか、コネクテッド・モビリティソリューション事業部を日本で20年1月に立ち上げ、ネットワーク化事業を強化していく考えなどを明らかにした。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 メーダ―社長は会見でまず新型コロナウイルス感染症の影響に触れ、同感染症の拡大が同社の働き方改革に変革を与えたことに言及。このような変化に対する準備が整っていたことから在宅勤務などが「スムーズに対応ができた」と述べるとともに、新しい措置の一部をニューノーマルとして残す方針を示した。

 

 一例として、在宅勤務を今年8月から従来の月額所定労働時間の月約25%から50%に上限を引き上げる。また、新型コロナ感染症関連ではボッシュ・グループが完全自動の新型コロナウイルス感染症の迅速検査システムを開発しているほか、従業員向けマスクの製造、ドイツと米国では工場勤務者向けの消毒液の製造に乗り出している。

 

 

グローバルでの日系自動車メーカー向けの売上は前年比10・2%増

 

 新型コロナが事業活動に及ぼした影響については、サプライチェーンの脆弱性を掲げて、改善に取り組んでいる方針を示した。「当初の中国にとどまらず、インド、マレーシア、メキシコなどグローバルの拠点へと影響が広がったことで、問題が生じた。サプライヤーを含めて、製造を1か所に集中する弊害性などを研究している」と述べた。

 

 

 2019年度業績では、ドイツ本体をはじめとしたボッシュ・グループのグローバルの売上高は前年と同水準の777億ユーロを達成。営業利益は33億ユーロで、売上高の約8%に相当する61億ユーロを研究開発費に投入した。世界中で約40万人に雇用し、うち7・3万人が研究開発部門の従事者だ。

 

 これに対し、2019年度の日本での第三者売上高は約3300億円で、前年比約1・0%増と成長した。また、アジアパシフィック地域はグループの売上高の約30%を占める。
アレクサンドレ・リーステラー副社長によると、ボッシュは4セクター制でビジネス展開しており、グローバルではモビリティソリューション事業が売上高の60%を占めるが、日本は同事業が90%の比率とモビリティ事業の高さが際立っていると述べた。

 

 

独全拠点でのカーボンニュートラル達成に続き、2020年に全世界へ実現へ

 

 ボッシュ・グループの全世界における日系自動車メーカー向けの売上げは、2013年から年平均二けたの割合で増加しており、2019年も前年比10・2%増の伸びとなった。日系自動車メーカーの生産台数は19年微減となっており、ボッシュ製品の日本車ブランド向けが拡大していることが数字で表れた格好だ。

 

2020年は新型コロナ感染症の影響で厳しい年になると予想。現時点での業績見通しは公表を見送った。2020年の展望、長期的な戦略については、まず気候変動に伴う地球温暖化対策の観点から、カーボンニュートラルの取り組みを強調。2019年にドイツの全拠点で達成したのに続き、2020年に全世界でカーボンニュートラルを達成するとした。

 

 

さらに2030年までにエネルギー効率改善や再生可能エネルギーの自家発電を一段と拡充し、カーボンニュートラルの質を向上させる方針。長期駅な観点からは、AI(人工知能)分野への投資を拡充。2020年1月にAIの倫理方針を発表するとともに、2025年までにボッシュもすべての製品にAIを搭載する考えを打ち出した。日本でもAIの独自研究に加え、大学などと共同研究を構築する。

 

 

シェアリングは減速へ。対して電動化、ネットワーク化は重要度が高まり加速する

 

 事業展開では、PACE(パーソナライズ化、自動化、電動化、ネットワーク化)強化を打ち出す。
このうち、交通安全の観点から自動化の重要性を掲げて、新世代側方レーダーの量産を2020年から開始する考えを明らかにした。ボッシュの試算によると、ドイツ国内の交差点で起きている交通事故の最大41%が側方レーダーを使った衝突被害軽減ブレーキと発信防止機能により、防止もしくは被害を軽減できるとして拡充する。

 

また、前方および後方レーダーを使った二輪車向け安全運転支援システム「アドバンスト・ライダー・アシスタンス・システム(ARAS)」を開発。川崎重工業のモデルにも採用される予定で、2021年からシステムの量産を開始する予定という。
電動化では、パワトレインやブレーキシステム、ステアリングなどを搭載した電気自動車(EV)向けローリングシャーシの提案を2019年から開始した。これを活用することでEVメーカーは様々なバリエーションや設計をプロトタイプに迅速に実装することが可能になるとしている。

 

 

 ネットワーク化では、日本でコネクテッド・モビリティ・ソリューション事業部を設立し、インターネットを介して新しいソフトウェア・ファームウェアを配布・アップデートする仕組みを車両にも適用するOTA(オーバー・ザー・エアー)の提供などを始めた。

 

 なおボッシュとダイムラーはメルセデス・ベンツ博物館の駐車場に設置した自動バレーパーキングにおいて自動運転レベル4の認証を取得した。日本でも駐車スペースの空き状況が検知できるPLS(パーキング・ロット・センサー)の提案を2020年2月から開始した。
新型コロナ感染症がこうしたモビリティの進化に及ぼす影響についてはメーダ―社長は「パーソナライズや自動運転、電動化、ネットワーク化は重要度が高まり、加速するだろう。半面で、シェアリングは減速する可能性がある」との見解を示した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。