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2019年10月8日【アフター市場】

ブラックベリー、自動車インフォテイメント体験の管理を支援

松下次男

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 カナダのソフトウェア企業、ブラックベリー(BlackBerry、本社・オンタリオ州)は10月8日、車載音響ソフトウェアのブラックベリーQNX音響管理プラットフォーム(AMP)をはじめとした車載向けソフトウェア戦略に関する記者説明会を東京都内で開いた。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

QNX音響管理プラットフォームの最新バージョンを都内で公開

 

自動車向け総合音響ソリューションでは最新バージョン「AMP3・0」を9月からグローバルで提供開始。ブラックベリー・テクノロジー・ソリューションズ(BTS)のケイヴァン・カリミ・シニアバイスプレジデント兼共同代表は同ソフトウェアについて「単一のソリューションで車室内の音響が総体的に管理でき、大幅なコスト削減や開発工程短縮に役立つ」と述べるとともに、実用化が進むコネクテッドカーでのボイス交信などの音響管理にも効果が期待できるとの見解を示した。

 

 

 最新の自動車には、複数の音響・音声信号処理システムが搭載されており、一部マイクやスピーカーが共有するケースも。このようなシステムでは予期せぬかたちで相互干渉することもあり、結果として不快なフィードバックやエコーが発生する。AMP3・0はこうした車室内の音響を管理し、サブシステムがシームレスに協調動作を行うように一元管理するアプローチにより、これらの問題を解決する。

 

BTSのケイヴァン・カリミ・シニアバイスプレジデント兼共同代表が会見

 

カリミ・シニアバイスプレジデント兼共同代表はこえまでの音響関連装置について「別々のシステムで構成されていた。それが一元管理できるため、大幅なコストダウンになる。また、車内の音質環境が非常にクリアーだ。自動車メーカーは音響関連システムの開発工程、期間が非常に短縮できる」と強調。システムの提案先としてはトータルで車両を設計、開発する自動車メーカーになるだろうとした。すでに独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラルモーターズ(GM)などの車両に同ソフトが搭載され、実用化が進んでいる。

 

 ブラックベリーはこうしたAMP3・0をはじめとした車載ソリューションなどの技術展示や取り組み事例を紹介する年次イベントを同日、都内のホテルで開催。AMP3・0を搭載したトヨタ「アルファード」や総合コクピットソリューションを搭載したコンセプトカーを会場に持ち込み、自動車メーカーやティア1メーカーへ採用を働きかけていた。

 

 ブラックベリーはもともと携帯電話事業やスマートフォン向けソフトウェアを提供する通信機器メーカーとして事業を展開していた。だが、こうした事業が縮小する一方で、2010年に組み込み向けソフトウェアのQNX社を買収、車載向けソリューション分野に進出した。近年は、車載向けソフトウェアプラットフォームQNXをベースにした安全やセキュリティ事業が急速に拡大。さらに自動運転やコネクテッドカー向けソリューション提供にも力を入れている。

 

 

車内のノイズカットやコネクテッドにおけるクリアーなボイス交信の提供に期待

 

 AMP3・0はこれらをベースに開発。マイクとスピーカー向けの自動チューニング・診断・サウンドデザインに対応した高度なツールセットであり、複数のアプリケーションプロセッサコアに柔軟に対応。さらに音声認識、通話、ハイレゾの音楽再生、車内の音声強調、アクティブノイズコントロール、車両内部の音声および車外の歩行者への警告音声に対応したサウンドデザイン/クリエーション、スピーカーのクロスオーバー、車内音質補正に利用されるオーディオ信号処理などの機能を持つ。

 

 AMP3・0ソフトウェアは車載音響機能を組み合わせた統合的なパッケージとなっており、高音質のハンズフリー通話やマルチゾーンの音声認識体験を実現するほか、高品質の車内通信ソリューション、自動車の内外部騒音を低減しサウンドプロファイルを強化、調整する機能などで構成されている。会場のコンセプトカーでも車内外の騒音が瞬時にシャットダウンされ、静かな車室が再現されていた。

 

 カリミし・シニアバイスプレジデント兼共同代表は、同ソフトウェアを単体で提供するほか、デンソーとも共同開発するブラックベリーQNX統合コクピットソリューション上でも機能するソフトウェアとして提案する考えを示唆した。さらに車内の統合的な音響体験を設計、管理することは、今後の自動運転技術やコネクテッドカーの進化にも不可欠とし、AMPソフトウェアの普及、拡大に自信を見せていた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。