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2021年2月16日【事業資源】

ブリヂストン、69年ぶりに最終赤字に転落

山田清志

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ブリヂストン石橋秀一CEO

 

ブリヂストンが2月16日に発表した2020年12月期連結決算は、売上高にあたる売上収益が2兆9945億円(前期比14.6%減)、調整後営業利益が2229億円(同35.0%減)、当期純損益が233億円の赤字(前期は2401億円の黒字)だった。同社が最終赤字に転落するのは1951年12月期以来69年ぶり。併せて発表した中期事業計画では、生産拠点を約4割減らすことが明らかにされた。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

 

2021年12月期は増収増益の予想

 

オンラインで業績を説明した菱沼直樹CFOによると、第3四半期(7~9月)以降はヒト・モノの移動制限緩和、経済活動再開などの動きに伴って、トラック・バス用タイヤの需要は堅調に推移したが、第1~2四半期(1~6月)における新型コロナウイルス感染症の影響によるタイヤ需要の落ち込みをカバーできずに、最終赤字になったとのことだ。

 

地域別の業績について、日本は売上収益が7626億円(前期比17%減)で、調整後営業利益が646億円(同41%減)。米州は売上収益が1兆43079億円(同15%減)、調整後影響利益が1399億円(同24%減)。欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカは売上収益が5643億円(同12%減)、調整後営業損益が176億円の赤字(前期は150億円の黒字)。中国・アジア・大洋州は売上収益が3946億円(同15%減)、調整後営業利益が246億円(同32%減)だった。すべての地域で乗用車とトラック・バス用タイヤの販売数量が前年を大きく下回り、大幅な減収減益となった。

 

 

ただ、第4四半期(10~12月)については、乗用車向けの新車用タイヤが前年同期比101%、トラック・バス向けの補修用タイヤが同108%と前年同期を上回るようになっている。特に乗用車向け新車用タイヤでは北米と欧州が伸びており、トラック・バス向けの補修用タイヤでは欧州以外すべての地域で前年同期より販売本数が増えている。

 

その流れは2021年に入ってからも続いていて、2021年12月期の連結業績見通しも売上収益が3兆100億円(前期比0.5%増)、調整後営業利益が2600億円(同16.6%増)、当期純利益が2610億円と、増収増益を見込む。自動車業界で問題になっている半導体不足については「第1四半期を中心に数十万本の影響は出ると思うが、年間ベースでは影響はない」と石橋秀一CEOは話す。

 

今年度から“攻めと挑戦”のステージへ

 

しかし、ブリヂストンの経営が1980年代後半の時のように岐路に立っているのは間違いない。その時は、日系自動車メーカーが相次いで北米に工場を建設し、ブリヂストンも北米への本格的な進出が求められていた。そこで、家入昭社長(当時)は米ファイアストンを買収して北米での拠点を得た。

 

「当社が日本のローカル企業として終わるか、グローバル企業になれるかの瀬戸際で、何としてもファイアストンを買収してグローバル企業の仲間入りをしたかった」と家入社長は役員応接室で強調していた。

 

そして今、ブリヂストンは“第3の創業”ということで、2020年を初年度としたビジョンを掲げている。それは「2050年にもサステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というもので、その実現のために中長期事業戦略に取り組んでいる。

 

 

2月16日には21年から23年の3年間を実行期間とする新たな中期事業計画も発表された。「これまでは危機管理を中心として守りのフェーズだったが、今年からは稼ぐ力の再構築をベースに戦略的成長投資を本格的に開始する“攻めと挑戦”のステージに入る」と石橋CEOは強調。

 

コア事業(タイヤ事業)、成長事業(ソリューション事業)、探索事業(リサイクル、ソフトロボティクス事業など)からなる事業ポートフォリオで経営を推進し、3年間で7000億円の成長投資を行う。コア事業では、経費の構造改革、事業の再編、生産拠点の再編など進め、リソースの再配分をしてプレミアムビジネス戦略を強化する。

 

成長事業では、タイヤセントリックソリューションやモビリティソリューションなど、ソリューション事業の拡大とグローバル展開を実施。3年間で1000億円以上の増収を目指す。探索事業では、ブリヂストンのコアコンピタンスの活きる事業領域、コア事業・成長事業とのシナジーがある領域に絞って事業を進めていく。その典型がリサイクル、ソフトロボティクスというわけだが、それぞれ事業準備室を設置する。

 

 

プレミアム商品にフォーカスした経営を展開

 

質疑応答では、特に生産拠点の再編についての質問が相次いだ。というのも、世界にある約165の生産拠点を23年までに約4割も減らすからだ。その内訳はタイヤ関連が79、原材料が16、タイヤ以外の多角化事業が70だ。

 

「生産拠点の再編はセンシティブな問題なので、現時点では開示できない。しかるべき適切なタイミングで開示しようと考えている」と、石橋CEOはどの工場を閉鎖するか、どのくらいの人員を削減するかなど詳細については明らかにしなかった。いずれにしても、同社はプレミアム商品を押し出していく戦略を中期事業計画で打ち出しており、汎用品しかつくれない工場は再編の対象と言っていいだろう。

 

「高品質なものをつくることにより集中し、その生産能力を最大化していく方向にフォーカスしていきたい。当然、ある段階では生産拡大の投資も必要だと思っているが、それはプレミアム商品にフォーカスした投資だ。ミシュランとの競争については、タイヤの数量ではなく、質で勝負してナンバーワンを目指す」と石橋CEOは力説。2023年の数値目標を売上収益3兆3000億円(2020年度比10.2%増)、調整後営業利益4500億円(同101.9%増)、当期純利益2900億円(2020年は233億円の赤字)とした。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。