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2019年10月9日【アフター市場】

DJI、農業用ドローンの新機種2台を発表

山田清志

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世界最大のドローンメーカー、DJIは10月9日、幕張メッセで農業用ドローンの発表会を行い、「P4 MULTISPECTRAL(マルチスペクトラル)」と「AGRAS(アグラス) T16」という2台の新機種を披露した。いずれも農業に変革をもたらすものとして、同社ではその動向に期待を寄せている。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

日本の農業就業人口が8年間に3分の1減少

 

「現在、農業は深刻な人手不足になっている。私は毎年田植えを行っているが、周りの農家が年々減っていることを身をもって感じている。農業を持続的にやっていくには、やはり省力化技術が必要で、ドローンがその一つのツールとして注目されている」とDJIジャパンの呉韜社長は話す。

 

発表会の冒頭に挨拶するDJIジャパンの呉韜社長

発表会の冒頭に挨拶するDJIジャパンの呉韜社長

 

ある統計によると、日本の農業就業人口は2000年の260万人から2018年には175万人と8年間で約3分の1減少し、平均年齢も上がっている。このままでは日本の農業が立ちゆかなくなる懸念も出ているほど。そのため、農林水産省は今年3月に農業用ドローン普及計画を策定し、本格的にドローンの農業への活用に動き出した。

 

DJIジャパンも今年7月、代理店75社と農業ドローン協議会を設立し、ドローンの教育をはじめ、申請サポート、整備、機体管理、保険などを包括したサービスを開始した。すでに日本では同社の農業用ドローンが2000台以上活躍しているという。

 

そんな中、精密農業・土地管理用の「P4 MULTISPECTAL」と農薬散布用の「AGRAS T16」を発表したわけだが、特にP4は世界初の完全統合型マルチスペクトル イメージングドロンだという。

 

収穫量が改善してコストも削減

 

6つの個別センサーからの取得でテータを組み合わせて、それぞれの作物から圃場全域の植生まで健康状態を調べ、さらに雑草や害虫被害、土壌の状態の測定もできる。従来そのような調査は人が現場に行って実施したり、あるいは人工衛星を使ったリモートセンシングで行っていたが、手作業では手間がかかり、人工衛星では高精度なセンシングが困難だった。

 

「P4 MULTISPECTRAL」を手に持つDJIジャパンの呉韜社長。手前の大きなドローン が「AGRAS T16」

「P4 MULTISPECTRAL」を手に持つDJIジャパンの呉韜社長。手前の大きなドローンが「AGRAS T16」

 

その両方を解決したのがP4というわけだが、測定の誤差は数センチレベルだという。しかもDJI GS Proというアプリケーションによって、飛行計画、ミッションの実行、飛行データの管理などもできる。同社関係者も「P4を使えば、農業従事者は収穫量を改善し、コストを削減できる」と太鼓判を押す。価格はDJI Terraライセンス(1年間)とDJI GS Proアプリライセンス(1年間)が付いて約85万円だ。

 

一方、AGRAS T16は2017年3月に発売した「AGRAS MG-1」の後継モデルで、「これまでの販売の中から出てきた要望を聞いて、効率性の向上、安全性の向上、処理能力の向上を図ったモデルになっている」(同社関係者)そうだ。

 

例えば、薬剤のタンクは従来の10Lから16Lへと容量を拡大し、プロペラの推進効率を20%向上させた。また、バッテリーとタンクはカセット式にしてワンタッチで交換できるようにし、散布能力も44%向上と大幅にアップさせた。そのうえ、自立航行で同時に5機まで飛ばせるという。価格ついては今のところ未定だが、200~250万円になりそうだ。

 

いずれのドローンも性能や信頼性の優れた同社の自信作で、農家の強い味方になるのは間違いないだろう。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。