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2021年5月14日【企業・経営】

自動車メーカー各社、2021年3月期決算・21年度展望(1)

松下次男

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業績、底入れへ。2021年度、コロナ前の水準並みを目指すが、市場や事業展開により格差も

 

自動車メーカー各社の業績底入れが鮮明になってきた。コロナ禍で痛んでいた世界の自動車市場が「想定より早く回復」、各社の実績値を押し上げた。この先も半導体不足や原材料費高騰のリスク要因、更にカーボンニュートラルに向けた電動化投資負担増が重なるものの、2021年度は平常時レベルの業績を目指す動きが強まりそうだ。

 

各社の2020年度業績は期中に公表していた予測値を軒並み上回る結果となった。昨夏以降、日米欧中などの主要国を中心に「想定より早く回復した」のが要因。  足元では、ルネサスエレクトロニクスの工場火災が重なった半導体の供給不足のリスクが残る。

 

各社共今年度上期迄は影響が避けられないとし、下期に挽回を目指す。  21年度は、世界的に市場の伸びを見込むが、感染症が再拡大するインドや回復が緩やかなASEANなど一部に懸念もある。主力市場の違いが業績へ影響しかねない。 (佃モビリティ総研・松下次男)

 

本田技研工業、事業活動の見直しや金融収益などにより増益

 

ホンダが5月14日発表した2021年3月期連結決算(国際会計基準)は、新型コロナウイルス感染症に伴う需要減や半導体不足の影響などがあったものの増益を達成した。22年3月期は四輪車販売500万台を計画し、実質的な増収増益を目指す。

 

20年度の連結業績は売上収益が13兆1705億円で前期比11・8%減、営業利益が6602億円で同4・2%増、最終利益が6574億円で同44・3%増となった。

 

グループ販売台数は四輪車が454万6千台で同5・1%減、二輪車が1513万2千台で同21・8%減。

 

コロナ禍で販売台数が落ち込んだにも関わらず増収が達成出来た事について竹内弘平専務は、事業活動の見直しによる販売費や一般管理費の抑制、コストダウン効果、それに米国政府の支援策で「金融事業でのクレジット損失引当金の計上差が出たのが大きかった」と一過性の要因を示した。

 

21年度は売上収益15兆2000億円、営業利益6600億円、当期利益5900億円を目指す。営業利益は前期と同水準の予想で、これは原材料費の高騰と米国の支援策が無くなり、金融収益減少を見込んでいるため。

 

倉石誠司副社長は半導体供給不足について「今年度上期は生産調整の影響が残るだろうが、下期に取り戻し、年度では相殺したい」と生産台数に影響が出ないよう進める方針を示した。前期は半導体不足で約10万台減産の影響が出たという。21年度は四輪車、二輪車とも全市場で前年越えを目指す。

 

日産自動車、事業構造改革が進展するも1507億円の営業赤字

 

日産自動車が5月11日発表した2021年3月期連結決算は、事業構造改革が進展するものの1507億円(前期405億円の赤字)の営業損益となった。

 

22年3月期は営業利益ゼロを予想するが、半導体不足と原材料高騰の影響とし、これがなければ中期計画で掲げる「営業利益率2%達成は可能だ」と内田誠社長兼最高経営責任者は決算説明会で述べた。

 

21年3月期連結業績は売上高が7兆8626億円で前期比20・4%減、最終損益が4487億円(前期6712億円の損失)の赤字となった。新型コロナウイルス感染症の影響でグローバル販売台数が405万2千台と同17・8%減となったのが響いた。

 

事業構造改革「ニッサン・ネクスト」の取り組みでは、3500億円以上の固定費を削減し、営業利益損益分岐点台数を年間500万台から同440万台へ引き下げた。

 

また、米国を中心に販売の質を高め、台当たりのインセンティブ(販売奨励金)を1・6ポイント引き下げた。これにより営業損益の赤字幅を第3四半期で見込んだ数値より改善した。

 

21年度の連結業績見通しでは、損益分岐点レベルの440万台のグローバル販売台数を見込み、売上高は9兆1000億円(前期比15・7%増)を予想。当期純損益600億円の赤字を見込む。

 

販売台数は市場の伸びと同水準を予想するものの、半導体不足と日々高騰する材料市況が利益圧迫要因になると分析。半導体不足の影響は約50万台を見込み、「下期に不足分を取り戻せれば、市場を上回る伸びが達成できる」と述べた。

 

内田社長はオンライン決算説明会で「商品の力でしっかりと収益を上げる会社を目指す」と述べ、EVとSUVを融合した「アリア」や「フェアレディZ」などに続き、三菱自動車と共同開発する軽EVも「他社に先駆けて投入する」意向を表明した。

 

スズキ、減収、営業利益減益となるが前回予想値を上回る

 

スズキが5月13日発表した202 1年3月期連結決算は、販売回復に加え、経費削減を推進したものの、コロナ禍の落ち込みをカバー出来ず2期連続の減収となった。

 

次期業績予想は主力市場のインドで変異種を含む新型コロナウイルス感染症が再拡大している影響から現時点での算出は困難として公表を見送った。

 

20年度の連結業績は売上高が3兆 1782億円で前期比8・9%減となった。主力のインドで販売が上振れした事や円安などにより、鈴木俊宏社長が売上高「3兆円は達成したい」と表明していた前回公表予想値を上回った。

 

営業利益は1944億円で同9・6%減と3期連続の減益。前回予想値からは344億円上回った。最終利益は投資有価証券売却益を計上した事などにより1464億円と同9・1%増となり、3期振りの増益となった。

 

販売台数は四輪車が257万1千台で前期比9・8%減、二輪車が153万5千台で同10・2%減となった。主力のインドでロックダウンが行われた影響で第1四半期、販売台数が大きく落ち込んだが、昨年7月から徐々に回復し、以降インド、日本とも前期を上回る水準で推移した。インドは前期比7・8%減まで回復、日本でも同3・7%減の水準だ。

 

足元の状況については、回復基調としながらも、「半導体不足や原材料価格の高騰などにより先行きは不透明」としたほか、インドでの変異種含む感染症再拡大に懸念を示した。

 

三菱自動車、赤字決算ながら固定費削減が進展

 

三菱自動車工業が5月11日発表した2021年3月期連結決算は、主力市場の回復の遅れに伴う販売減が響き、営業損益が953億円(前期128億円)の赤字となった。

 

一方で、20%以上の固定費削減計画を1年で達成させるなど構造改革が進捗。これにより販売回復と合わせ、22年3月期は営業利益300億円と黒字転換を目指す。

 

20年度の連結業績は売上高が1兆4555億円で前期比35・9%減、最終損益が3123億円(前期258億円の損失)の赤字となった。

 

新型コロナウイルス感染症の影響で主力のASEAN(東南アジア諸国連合)の販売台数が前期比35%減でグローバル販売台数が80万1千台と同29%減となったのが響いた。

 

一方で、構造改革や販売価格の適正化、固定費削減は着実に進捗。2年間で目標にしていた固定費削減計画を1年で達成。在庫台数も21年3月時点で31万台と1年前の49万台と比べ大幅に削減した。これにより第3四半期に公表していた営業赤字1000億円を圧縮した。

 

22年3月期業績見通しは、売上高2兆600億円、当期純利益100億円を見込む。グローバル販売台数は95万7千台と前期比19%増を計画。特に主力のASEANで同47%増を計画する他、日本でも29%増を予想。

 

加藤隆雄社長兼最高経営責任者は今期の黒字転換必達に向け、一段と構造改革を進展させる事を決算説明会で表明した。

 

日野自動車、2021年3月期で10年振りの赤字計上、2万台の在庫調整と原価改善推進

 

日野自動車の2021年3月期の連結決算はコロナ禍による影響に加えて、北米でのエンジン認証を巡る昨年12月以来の車両生産停止の影響を受け、売上高で前期比17・5%減の1兆4984億円と減収となった。また営業利益も同77・5%減の123億円と大きく縮小、当期利益では10年振りの75億円の赤字を計上した。

 

同決算に対応したグルーバル販売は前期比20・9%減の14万2606台に留まった。日本は10・7%減の5万9676台で健闘したが、海外は26・9%減の8万2930台と落ち込み、中でもインドネシアで55・2%減の1万2496台、米国で同49・2%減の7152台と不振を極めた。

 

これに対して22年3月の業績予想では、カミンズ社製エンジンの供給を受け10月から北米2拠点での生産再開を織り込み、増収増益を見込んだ。

 

新・会計基準での売上高は1兆3300億円としたが、旧基準では1兆5500億円で前期比3・4%増、営業利益で470億円と前記比3・8倍を回復させ、当期利益も110億円の黒字化を目指していく。

 

グローバル販売台数も前期比5・2%増の15万台を計画する。  4月27日のWeb決算説明会には、6月退任予定の下義生社長兼CEOが出席、北米生産再開に目処を付けた事を報告、ステークホルダーに陳謝する一方、17年発表の「日野環境チャレンジ2050」を補足して、「日野環境マイルストーン2030」を発表、13年比でCO2削減目標をライフサイクルで25%減、新車段階で40%減、工場で40%減を実現することを明らかにした。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。