NEXT MOBILITY

MENU

2017年12月4日【自動車生産】

JFEスチール、自動車車体組み立て用の高機能スポット溶接技術を開発

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

JFEスチールが、自動車車体組み立て用の高機能スポット溶接技術として「J-MAC(※)スポット溶接」、「パルススポット溶接」、「シングルサイドスポット溶接」、「インテリジェントスポット溶接」を新たに開発。これら新開発の技術により、超ハイテンの溶接品質向上、および車体構造設計の自由度向上を可能とする鋼板の溶接技術で、車体軽量化の実現に大きく貢献するとしている。

JFEスチール・ロゴ

スポット溶接は、重ね合せた鋼板を二つの電極で挟み込んで大電流を流し、鋼板を溶かすことで点溶接する溶接方法。他の溶接方法と比較し、施工コストが低く、かつ施工性にも優れていることから、自動車製造において最も多く利用されており、車1台当たり、3000~6000点ものスポット溶接部がある。しかし、近年では超ハイテンの車体適用拡大に伴い、スポット溶接の施工管理が難しくなるという課題や、車体構造設計への制約が生じてきた。

 

そこで同社は、超ハイテンの溶接品質向上、および車体構造設計の自由度向上を可能とする高機能スポット溶接技術の開発に取り組み、新たに以下を開発した。

 

1.「J-MACスポット溶接」

 

自動車車体に適用される鋼板の高強度、および薄肉化により、溶接部の安定確保がますます重要となっており、加えて、車体剛性向上を目的としたスポット溶接部間隔の近接化も要望されている。特に、溶接部と溶接部の間をスポット溶接する際は、電流が他の溶接部に分散し、発熱量が低下してしまうという課題があった。

 

「J-MACスポット溶接」は、分散してしまう電流をあらかじめ推定し、その分を加味した電流を流すことによって、溶接時の発熱量の最適化を可能にする技術。軟鋼から超ハイテンまで、すべての鋼板に適用することができ、スポット溶接部の安定化を可能にする。

 

2.「パルススポット溶接」

 

自動車車体の衝突安全性向上のため、スポット溶接部には強度が求められる。しかし、超ハイテンのスポット溶接部は脆くなりやすく、強度が十分に確保できない場合がある。そのため従来は、スポット溶接部を焼鈍するテンパー通電法が検討されてきたが、溶接時間が長くなるなどの課題があった。

 

「パルススポット溶接」は、通常溶接の後に極短時間で高い電流を流す技術で、これにより、テンパー通電法の約1/2の極めて短い時間で、溶接部の強度を向上させることができる。

 

3.「シングルサイドスポット溶接」

 

自動車の乗り心地向上のため、車体には高剛性化も求められており、車体部材の閉断面構造化(図)が有効な方法とされている。しかし、閉断面部材をスポット溶接する場合、溶接位置を両側から加圧するため、部材の一部に穴を開ける必要があり、そのため部材の剛性は低下し、また設計の自由度も制限されていた。

 

「シングルサイドスポット溶接」は、一つの電極を片側から押し当てて溶接する技術。これは、溶接の初期に低電流を高加圧で流し、通電域を確保した後に通常溶接を行うもので、部材に穴を開けることなく、安定したスポット溶接を可能にした。

 

【図】車体部材の閉断面構造化

【図】車体部材の閉断面構造化

 

4.「インテリジェントスポット溶接」

 

自動車車体の組み立て工程では、二枚の鋼板を重ねる溶接だけではなく、例えば1ミリ未満の薄板と2ミリ程度の超ハイテン厚板二枚を重ねるなど、板厚および種類の異なる三枚の鋼板を溶接する場合が多くある。しかし、組み合わせによっては薄板と厚板との間で、安定した溶接ができないという課題が生じていた。

 

「インテリジェントスポット溶接」は、三枚重ねスポット溶接技術で、溶接の初期に高電流を低加圧で流し、薄板と厚板との間に発熱を促進した後、通常溶接を行うもの。従来の方法では溶接が難しい鋼板の組み合わせでも、溶接部の強度向上を可能にした。

 

 

同社は、これらのスポット溶接技術を、自動車用鋼板とともに提供することで、鉄を最大限に活用した次世代自動車開発、および顧客の満足度向上に取り組んでいくとしている。

 

(※)J-MAC:JFE Multistage Adaptive Controlの略

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。