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2022年11月8日【ソフトウェア】

オンセミCEO、SiC領域の拡充で自動車に注力

松下次男

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オンセミ、ハッサーン・エルコーリー社長兼CEO会見で日本に意欲

 

米半導体大手、オンセミのハッサーン・エルコーリー社長兼CEO(最高経営責任者)は11月8日、オンラインで記者会見を開き、日本市場での事業強化を表明した。特に自動車の電動化に欠かせないパワー半導体のSiC(シリコンカーバイド)の拡充を示し、日本の大手自動車メーカーなどと直接的なエンゲージメントを構築していることを明らかにした。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

記者会見は日本のメディア向けに行ったもの。エルコーリー社長兼CEOはまず冒頭に「オンセミはインテリジェントなパワーソリューションとインテリジェントなセンシングソリューション」を提供する企業との方針を示し、注力分野として自動車とインダストリアルを掲げた。

 

これらの分野は破壊的なテクノロジーを推進し、持続可能なエコシステムを強化する市場として急成長する可能性を秘めており、オンセミのインテグレーションな事業展開と合致するとの見方を示した。

 

自動車でいえばEV(電気自動車)をはじめとした電動化やADAS(先進運転支援システム)、自動運転技術などに向け、オンセミのSiCやイメージセンサーを提供することにより、技術の進化を加速させ「環境対策、交通事故ゼロをサポートしたい」とした。

 

 

既に主要なテクノロジーリーダー企業(大手自動車メーカー等)とLTSAを締結

 

事業活動では、とくにSiCの成長に言及。計画では、今後3年間でLTSA(長期供給契約)を通じ40億ドルのSiCの売り上げを確約しているとし、米ニューハンプシャー州ハドソンの生産施設も拡張済み。

 

日本でも大手自動車メーカーなどの主要なテクノロジーリーダー企業と日本での年間売上の2倍以上となるLTSAを結んだことを明らかにした。

 

全体の事業も着実に進展し、過去5四半期連続で過去最高の業績を達成。S&P500インデックスに採用されているほか、フォーチュン500企業にも選ばれている。日本でも過去6四半期連続で過去最高の売り上げを達成した。

 

 

エルコーリー社長兼CEOはオンセミのSiCの強みとして「基板からデバイスまで、エンド・ツー・エンドで展開できることだ」と話す。これにより自動車の電動化に向け、デバイスからパッケージングまでの提案が可能になったと強調した。

 

2040年の環境問題に係るネットフリー宣言実現に向け推進させていく

 

オンセミは2021年にGTアドバンスト・テクノロジーズを買収し、ウェーハを内製化することで、ワンストップ化を実現。この結果、競合のドイツのインフィニオンなどと比べて、トータルでSiC供給の強みが発揮できるとしたほか、わが国のロームなどよりも先進性を生かしたいとした。

 

SiCはシリコンなどと比べ高価だが、パワー半導体でクルマの電動化を効率化すれば、システム全体のコスト低減に繫がるとも強調した。また、オンセミが掲げる2040年の環境問題に関するネットフリー宣言実現に向けても、推進したいと述べた。

 

 

日本での生産体制では先週、新潟の半導体工場(6インチウェーハ製造)の売却を発表。同工場は1985年に旧三洋電機(現パナソニック)が設立し、2011年にオンセミが買収していたが、マーキュリアインベストメント、産業創生アドバイザリー、福岡キャピタルパートナーズとの間で売却に合意した。

 

これは生産体制の再構築、製造ネットワークの最適化の一環として実施するもので、2022年度第4四半期に取引が完了する予定。

 

一方で、エルコーリー社長兼CEOは会津の工場、デザインセンターに投資し、日本での開発、生産体制を強化していく考えを示した。また、日本市場では電動化やADAS/自動運転などに向け、2倍の市場成長を目指すと表明した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。