パナソニックがもがいている。7月30日に発表した2020年度第1四半期(4~6月)連結決算は9年ぶりの最終赤字に転落。売上高も新型コロナウイルスの感染拡大で大幅な減収、営業利益はなんとか黒字を確保した状況だった。中期戦略で経営体質強化を目標に掲げるものの、太陽電池事業の構造改革が頓挫するなど、なかなか思うように行っていない。(経済ジャーナリスト・山田清志)
オートモーティブは95億円の営業赤字でもテスラからの強いデマンドが続く
売上高1兆3919億円(前年同期比26.4%)、営業利益37億円(同93.3%減)、当期純損益98億円の赤字。これがパナソニックの2020年度第1四半期の業績だ。オンライン会見の臨んだ取締役常務執行役員の梅田博和CFOは「最終赤字になったことは深刻に受け止めている」と厳しい表情で述べた。
売上高は、事業ポートフォリオ改革による非連結化影響に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響によって、すべてのセグメントで減収となった。「特にオートモーティブ、アプライアンス、コネクティッドソリューションズを中心にコロナ影響があった」と梅田CFO。
例えば、オートモーティブの売上高は前年同期比44%減の2108億円、営業損益は前年同期の100億円の赤字から5億円改善して95億円の赤字だった。売上高は車載機器での商品ポートフォリオの入れ替えを着実に進めたものの、自動車メーカーの生産台数の大幅な減少によって大きく減収。利益はテスラ向け車載電池の北米工場で生産性向上を図ったが、減販損が大きくて赤字から脱却することができなかった。
ただ、テスラ向けの事業については、「最近、イーロン・マスク社長がギガファクトリーをもう一つつくりたいので、パナソニックにも参加してほしいと言われている。また増産投資についても協議を進めている。まだ、決定はしていないが、テスラからはとにかく強いデマンドを受けているという状況が続いている」(梅田CFO)そうだ。
アプライアンスの売上高は同19%減の5547億円、営業利益が49%減の152億円。ルームエアコンを含む空調冷熱ソリューションズ、白物家電などのホームアライアンス、テレビなどのスマートライフネットワーク、そして食品流通とすべての分野で減収だった。
そして、コネクティッドソリューションズの売上高は同27%減の1853億円、営業損益は前年同期の137億円の黒字から160億円の赤字になった。航空機の運航が激減したことによって、アビオニクスを中心に大幅な減収になったのが要因だった。
低収益体質からの脱却には業績を牽引する成長事業が必要
2020年度通期の連結業績見通しは、売上高が6兆5000億円(前期比13.2%減)、営業利益が1500億円(同48.9%減)、当期純利益が1000億円(同55.7%)とした。
「第2四半期以降、コロナ影響は緩やかな改善を見込んでおり、第2四半期は第1四半期と比べて影響額が半減。下期は前年下期と同水準になると見込んでいる。しかし、年間では減収減益になる。航空、住宅関連、自動車向け事業では下期も影響が残ると考えている。経営体質強化策に加えて、削減できるものはさらに削減していく」と梅田CFOは話す。
オートモーティブについては、売上高が1兆2500億円(同16%減)、営業損益が340億円の赤字になるとの見通しだ。そのほかのセグメント別の見通しについては次の通りだ。
アプライアンスは売上高が2兆3700億円(同9%減)、営業利益が前期より7億円減少の550億円。ライフソリューションズは売上高が1兆4800億円(同23%減)、営業利益が同1351億円減少の450億円。コネクティッドソリューションズは売上高が9000億円(同23%減)、営業利益が同790億円減少の130億円。インダストリアルソリューションズは売上高が1兆2000億円(同6%減)、営業利益が同384億円増加の430億円。
また、2020年度の新型コロナウイルスの影響額は、売上高で6500億円、営業利益で1500億円を想定している。
そのほか、懸案となっているソーラー事業について、7月30日に中国のGS-Solar社との協業契約を解消したと発表した。「リリースの中で『今後、GS-Solarに対して、法的手段も辞さない姿勢で毅然とした対応をする』としているように、契約を交わした後に、契約が履行されなかったことには毅然とした対応をしたい」と梅田CFO。その結果、ソーラー事業の赤字脱却は当初計画より遅れて2022年度以降になる見通しだ。
「2020年度はコロナ影響があるが、低収益体質からの脱却に向けた取り組みを強化する」とは梅田CFOの弁だが、その脱却には業績を牽引するような成長事業を早く育成する必要がありそうだ。