NEXT MOBILITY

MENU

2022年11月1日【企業・経営】

ソニーG、音楽好調で営業利益を500億円上方修正

山田清志

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ソニーグループの十時裕樹副社長

 

ソニーグループは11月1日、2022年度第2四半期累計(4月~9月期)の連結決算を発表した。それによると、売上高は前年同期比9.4%増の5兆633億円、営業利益は同8.8%増の6510億円、純利益が同13.5%増の4821億円だった。7月~9月期についても増収増益で、売上高が前年同期比16.1%増の2兆7519億円、営業利益が同8.0%増の3440億円、純利益が同23.9%増の2640億円だった。この業績を背景に、2022年度通期業績見通しを上方修正。7月の第1四半期発表時には利益を下方修正していたが、円安が大きなプラス効果となったようだ。

 

2022年度上期業績

 

ゲーム事業は円安効果あるも大幅な減益

 

「当上半期においては、事業環境の大きな変化に対し、各事業が迅速に対処することができた。音楽分野やイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野がこれまで進めてきた投資の成果によって、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の不調を補っていることや、為替が大きく変動するなか、各事業のコスト構造の違いがその影響をバランスさせているなど、多様な事業ポートフォリオがグループ全体の収益を安定させ、レジリエンスを高めていると捉えている」

 

十時裕樹副社長兼CFOは今回の決算をこう総括し、「第2四半期、上期ともに、売上高、影響利益で過去最高を更新した」と評価した。とは言うものの、G&NSの大幅な減益が気になる様子だった。

 

では、セグメント別の7月~9月期の業績と通期の業績見通しを詳しく見てみよう。G&NS分野は売上高が前年同期比12%増の7207億円、営業利益が49%減の421億円だった。円安の影響により増収となったが、バンジー社など買収関連費用の計上や、ソフトウェア開発費の増加で大幅な減益となった。通期の業績見通しは、売上高が前回公表値から100億円増の3兆6300億円(前期比32.4%増)、経常利益が300億円減の2250億円(同34.9%減)に修正した。

 

2022年度第2四半期業績

 

プレイステーション5(PS5)については、第2四半期の生産が650万台を超えたという。「部品供給やロジスティックスの制約が大幅に緩和され、計画を上回るペースで進捗している。米国小売店における9月の実売状況は、10万台の入荷から完売までの平均所要時間が17.5時間と、PS5に対するお客様の需要は引き続き強い」と十時副社長は説明し、「通期販売台数についても、1800万台の計画を必ず達成し、そこから少しでも上積みをしたい」と意欲を見せていた。

 

しかし、PSプラスの加入者数は6月末から4%減の4540万アカウントとなり、想定以上にユーザーのエンゲージメント低下が見られるそうだ。そこで、今後のエンゲージメントの回復に向けて、PS5のハードウェアの普及加速により力を入れていく計画だ。「2023年度には2300万台強の出荷をすれば、PS4の実績を上回ることになる。これが当面の目標だ」と十時副社長。

 

音楽分野はストリーミング売り上げが大幅増

 

音楽分野については、売上高が前年同期比32%増の3593億円、営業利益が56%増の787億円だった。円安の影響やストリーミング売り上げの増加により大幅な増収増益となった。特にストリーミングの売り上げは音楽制作で34%増、音楽出版で78%増と非常に好調だった。通期の業績見通しは、売上高が前回公表値から900億円増の1兆3700億円(前期比22.6%増)、営業利益が350億円増の2650億円(同25.6%増)と大幅な上方修正をした。

 

2022年度第2四半期セグメント別業績

 

「上半期でのスポティファイ週次グローバル楽曲ランキングの上位100曲に、平均して48曲がランクインしており、昨年度通期の実績である平均36曲から大きく上昇した」と十時副社長は話し、ストリーミングが牽引して拡大する音楽市場でのさらなる成長を実現するため、戦略投資を積極的に進めていくそうだ。

 

映画分野は売上高が前年同期比29%増の3375億円、営業利益が13%減の276億円だった。円安影響により大幅な増収となったものの、新作の動画配信サービスへのライセンスに伴う収入が減ったことなどにより40億円の減益となった。通期の業績見通しは、為替の好影響により、売上高が前回公表値から700億円増の1兆4500億円(前期比17.0%増)、営業利益が150億円増の1150億円(同47.1%減)に上方修正した。

 

「アニメ配信事業のクランチロールでは、ファニメーションとのサービス統合が順調に進捗し、足元では有料回数が1000万人近くまで増加するなど、当初の想定を上回るペースで事業が拡大している。クランチロールのマーチャンダイジング事業をさらに強化し、アニメファンコミュニティとの、より多面的で深いエンゲージメントを確立していく」と十時副社長は話す。

 

2022年度業績見通し

 

エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野については、売上高が前年同期比16%増の6770億円、営業利益が7%増の778億円だった。為替の好影響やデジタルカメラの増収の影響などで増収増益を達成した。通期の業績見通しは、売上高が前回公表値から600億円増の2兆5100億円(前期比7.3%増)、営業利益は変更なしの1800億円(同15.4%減)を見込む。

 

「第1四半期での上海ロックダウンなどによるサプライチェーンの混乱からいち早く脱し、安定した供給を回復することで、デジタルカメラを中心に、売り上げ、利益を回復することができた。しかし、テレビについては、パネルの供給過剰に伴う価格下落圧力の高まりや、欧州を中心とした需要の低迷など、事業環境の悪化が顕在化している」と十時副社長は説明する。

 

2023年度にかけても、グローバルな景気減速を受け、環境はさらに厳しくなると想定し、生産から販売までの一貫したオペレーション強化と、徹底した費用コントロールにより、リスクの最小化を進めていく計画だ。また。生産の自動化や製販オペレーションのDX化、調達や物流におけるI&SSやG&NSとの連携強化を図り、事業環境に適応した損益分岐点の適正化など事業構造の強靱化も加速していくという。

 

2022年度セグメント別業績見通し

 

I&SSは四半期で過去最高の売上高

 

I&SS分野については、売上高が前年同期比43%増の3984億円、営業利益が49%増の740億円だった。モバイル機器向けイメージセンサーが増収になったうえ、円安効果も加わり、大幅な増収増益を果たした。通期業績見通しについては、売上高が前回公表値から変更なしの1兆4400億円(前期比33.7%増)、営業利益が200億円上方修正の2200億円(同41.3%増)を見込む。

 

「中国を中心としたスマートフォン市場の減速は、当四半期でも改善が見られなかったが、その影響はおおむね想定した範囲に収まっている。一方で、ハイエンド・スマートフォンカメラのセンサー大判化、高画質・高性能化も想定通り進捗して、当分野の四半期業績としては過去最高の売上高を記録した」と十時副社長は満足な様子を見せる。

 

ただ、イメージセンサーは、さらなる景気減速により最終製品市場が低迷するリスクも考慮する必要があると考え、保守的な収益見通しとしたそうだ。在庫については、来年度に向けた需要見通しを注意深く精査しながら、現有生産キャパシティの活用と今後の設備投資のタイミングを最適化する、戦略在庫の運用を継続していくとのことだ。

 

金融分野はビジネス収入が前年同期比17%増の3045億円、営業利益が27%増の546億円だった。また通期見通しは、ビジネス収入が前回公表値から1300億円減の1兆3100億円(前期比14.5%減)、営業利益が2200億円(同46.5%増)と据え置いた。

 

こうした各セグメントの状況を踏まえ、2022年度通期の業績見通しを7月の公表値から修正した。売上高が1000億円増の11兆6000億円(前期比16.9%増)、営業利益が500億円増の1兆1600億円(同3.5%減)、当期純利益が400億円増の8400億円(同4.8%減)と、それぞれ上方修正した。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。