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2023年7月19日【オピニオン】

ステランティス、2030年迄の半導体調達契約を締結

坂上 賢治

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半導体の安全供給は「Dare Forward 2030」の戦略達成に役立つ

 

欧・米に跨がる自動車市場大手のステランティスは7月18日(蘭アムステルダム時)、中期的視野で自社製造のEV並びにICE車に搭載する半導体を確保するべく、複数の半導体メーカーから来たる2030年迄の期間に於いて約100億ユーロ(15兆600億円)相当分の半導体を確保するための契約を締結した。

 

上記期間に於ける半導体製品を確保した理由は、現行車両のみならず、それ以降に売り出すBEVプラットフォームに於いて、半導体自体が性能・安全・顧客向け機能実装に於いて要となるため。

 

自動車業界の半導体需要が加速する中、ステランティスは重要なマイクロチップの長期供給を管理し確保するべく上記戦略を標榜。この戦略は部門横断的なチームによって運用され、長期計画〝ステランティス・デア・フォワード2030(Dare Forward2030)〟に定められた目標を達成する事に重点を置いて定められた。

 

ちなみにデア・フォワード2030とは、2030年迄に炭素排出量を21年比で半減させ、38年迄の実質ゼロ化を実現させるというもの。

 

この達成に向け、30年迄に75車種以上のEVを投入し、世界のEV販売台数を年500万台規模に。欧州ではBEV(乗用車)の販売比率を100%に。米国(乗用車、軽商用車)では50%に。

 

蓄電池の生産能力は、従来計画から140GWh引き上げて約400GWhに。具体的にはギガファクトリー5カ所とこれを補足する外部調達契約により計画達成させ、売上高(目標値3000億ユーロ)と営業利益率を2倍(目標値2桁の維持)を目指す。

 

調達契約はチップメーカーとの契約、部品購入、未来の可視性の組み合わ

 

なお半導体調達の指針に戻ると、そこでは以下の施策が内包される。

 

  • 半導体コンテンツの完全な透明性を提供するための半導体データベースの実装。体系的なリスク評価により、レガシー部品を回避し、積極的に削除する。
  • チップメーカー&シリコンファウンドリと目標値を達成させるために長期的なチップの需要を予測する。
  • 将来の半導体チップの不足に備え、自社グループへ割り当てを管理できるようにするべく供給の長期契約を維持。遂行上に必要不可欠な要素や部品・素材を押さえておく。
  • スモール(航続距離500km)、ミディアム(航続距離700km)、ラージ(航続距離800km)、フレーム(航続距離800km)と定めたSTLAプラットフォームを可能にするべくInfineon、NXP Semiconductors、onsemi、Qualcomm などと戦略的半導体プロバイダーとの連携を開始。更にaiMotive及び SiliconAutoと協力し、将来的には独自の差別化半導体を開発する予定。

 

こうした施策要素についてステランティスのマキシム・ピカット最高購買・サプライチェーン責任者は、「効果的な半導体戦略には、半導体と半導体産業に対する深い理解が必要です。というのは私たちの車には、何百という多様な半導体が搭載されているからです。

 

そこで我々は、たったひとつのチップが欠けたゆえに生産ラインが停止するリスクを軽減させるため、包括的なエコシステムを構築します。

 

同時に車両の主要な機能は、単一のデバイスの革新性を推し進めてパフォーマンスの維持に努めます。またEVの航続距離を拡張するSICパワーデバイス(SiC MOSFET)に係る顧客の体験価値と安全性確保に務めます。

 

それゆえ既に2030年迄に100億ユーロを超える半導体の直接契約を締結済みです。なおこの供給契約には、多様かつ重要なマイクロチップが含まれています」と話している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。