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2018年8月9日【テクノロジー】

東洋製罐と新日鐵住金、業界最軽量約4割減のスチール缶を開発

NEXT MOBILITY編集部

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東洋製罐と新日鐵住金は、共同で業界最軽量となるスチール缶を開発した。

 

このスチール缶採用の製品は、既に今年5月から市場に流通していると云う。

 

共同開発したスチール缶(開発缶)は、185g用TULC(*1)の低陽圧缶(*2)で、缶重量はスチール缶では業界最軽量の16.2g(蓋除く)。

 

低陽圧缶仕様の従来缶に対して6%超、広く使用されているTULCの陰圧缶(*3)に対して約40%の軽量化を実現した。

 

缶の軽量化は製造工程や輸送時のCO2排出量削減につながることから、両社は、今後の開発缶の採用拡大が期待できるとしている。

 

[開発までの経緯]

 

東洋製罐は、安定した缶内圧の確保により缶内圧検査が可能で、缶の薄肉化を図れる低陽圧缶充填システムを開発しており、飲料充填メーカーに低陽圧缶仕様のスチール缶と共に提供している。

 

新日鉄住金は、低陽圧缶仕様の従来缶用に板厚0.185mmの鋼板を供給していたが、開発缶用に新たに板厚0.170mmの鋼板を開発。鋼板はTULC製缶時に更に薄く延ばされる。

 

缶の板厚が薄くなるに伴い、鋼板中の介在物の影響を受けやすく、缶は破断しやすくなるが、新日鉄住金は、介在物を極力低減する技術を高めた極薄鋼板を開発。

 

東洋製罐は、製缶プロセスの工夫で、板厚0.170mmの極薄鋼板でのTULC製缶を実現した。

 

[スチール缶の開発]

 

スチール缶は、以下のような特徴をもっている。

 

①リサイクル率が高く、LCA(ライフサイクルアセスメント)に優れる
②打検(*4)により、缶詰製品の内圧異常などの良否判定が可能
③変形・破損がしにくく、流通特性に優れる
④遮光性・気密性に優れ長期保存が可能

 

両者は、上記に挙げた特徴を生かし、素材メーカーと製缶メーカーの共同の取り組みにより、業界最軽量となるスチール缶を実現。開発缶は現在、ダイドードリンコのコーヒー製品に採用されている。

 

東洋製罐と新日鐵住金は、今後も両社の技術先進性を発揮することを通じて、地球環境に優しく、食品安全性に優れたスチール缶の開発に取り組んでいくとしている。

 

*1)TULC:TULC(Toyo Ultimate Can)は、材料・生産プロセスを根本から見直し、加工時にクーラント(潤滑・冷却剤)不要、廃水処理不要、内面塗装不要な環境保全性を高めた2ピース缶。

*2)低陽圧缶:缶の内圧が外気圧より高い(陽圧)状態のため、缶胴が薄くても強度が保持できる。また缶底がフラットなため、陰圧缶詰用の打検システムが使用出来る。

*3)陰圧缶:缶の内圧が外気圧より低い(陰圧)状態のため、缶の剛性により強度を保持する。

*4)打検:音波を利用した缶詰の非破壊検査方法。缶底を叩いてその音の振動数を解析し、製品の内圧を判別して良否判定する。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。