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2019年12月16日【オピニオン】

WECバーレーン8時間決勝、トヨタ勢が1・2位独占

坂上 賢治

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 FIA世界耐久選手権(WEC)の第4戦・バーレーン8時間(開催地:バーレーン・サヒール、バーレーン・インターナショナル・サーキット、1周5.412km、開催期間:12月11~14日)が開催された。(坂上 賢治)

 

 最終日14日の決勝レースでは、シリーズ最高峰のLMP1クラスに出走するトヨタ・ガズー・レーシング(TOYOTA GAZOO Racing)7号車のTS050ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)がトップでチェッカーフラッグを潜る。

 

2位には同じくトヨタの8号車、TS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組)が続き、結果2019/2020年シーズン第4戦目で開幕戦シルバーストン以来、今季2度目の総合優勝を飾った。

 

 

 ちなみにこの決勝レースに先立ち、前日の12月13日に実施された公式予選では、今季から最高峰のLMP1クラスに導入された〝サクセス・ハンディキャップ制度〟により、燃料使用量などが大きく制限されて苦しんでいるトヨタ勢を尻目に、同じLMP1クラスをノンハイブリッドのパワーユニット搭載車を駆って挑戦するレベリオン・レーシングの1号車レベリオンR13・ギブソン(ブルーノ・セナ/グスタボ・メネゼス/ノルマン・ナト組)が、またしても今季2度目のポールポジションに立つ。

 

続く2番手にも、LMP1クラスに於いてノンハイブリッド車でトヨタに対抗するチームLNTの5号車、ジネッタG60-LT-P1・AER(チャーリー・ロバートソン/ベン・ハンリー/ジョーダン・キング)が食い込む活躍を見せた。

 

 

対してLMP1クラスに「TS050ハイブリッド」で出走するトヨタ勢の2台は、ランキング首位で第4戦を迎えた8号車が1周あたり最大2.72秒のハンディキャップ調整を課せられ、7号車には1周あたり2.51秒のハンディキャップ調整を強いられる中で善戦を見せたのの、決勝グリッドでは、セカンドラインに過ぎない3・4番手に留まっている。

 

 明けて14日の決勝レースは波乱の展開となった。というのはスタート直後にホールショットを得るべく、果敢な走りを見せたポールポジションスタートのレベリオンR13・ギブソンと、これに追いすがるチームLNTの5号車、ジネッタG60-LT-P1・AERが接触。

 

 

3番手を走るトヨタの8号車は、このトップ争いに巻き込まれて車両フロント部にダメージを被ってしまったからだ。

対してこの8号車に続き、第1コーナーに突入したトヨタの7号車は、同混乱から間一髪で逃れてトップに浮上。序盤からトヨタの7号車と8号車は、互いに明暗を分ける展開となった。

 

 この影響によって、ブエミがステアリング握るトヨタの8号車は、初回のピットインでフロントカウル交換のために作業時間を浪費し4番手にポジションダウン。一方の7号車は、快調にラップタイムを刻んでいく。

 

 

8号車はようやくの43周目に、ジネッタの6号車とバトルに競り勝ち3番手に浮上する。

 

その後、スタートを切って2時間30分過ぎの時点で2番手を走り続けていた1号車のレベリオンにマシントラブルが発生。これに伴うピット作業によってトヨタの8号車が浮上し、これでようやくトヨタ勢がワン・ツー体制に入った。

 

 この後、1周あたりのラップタイムでトヨタ勢に迫るノンハイブリッド陣営のジネッタがマシントラブルによって脱落。

 

 

対するトヨタの2台は、リスクを避けた淡々とした走りを積み重ね、ロペスがステアリングを握るトヨタ7号車が257周でLMP1クラス優勝並びに総合優勝を獲得。これに1ラップ遅れでLMP1クラス2位のトヨタ8号車が続いた。

 

 

さらにLMP1クラスの3位には、ジネッタ6号車を攻略したレベリオンの1号車(254ラップ)が続き、終盤にギアボックストラブルに見舞われたジネッタ6号車(195ラップ)と、ジネッタ6号車の僚友であるジネッタ5号車はリタイヤ(143ラップ)に終わった。

 

 

この結果、来年2020年6月に行われる最終戦ル・マン24時間レースに至るWECシリーズ(LMP1クラス)の折り返しとなるバーレーンを、トヨタ勢は勝利で飾ることに成功した。

 

 なお下位のLMP2クラスでは、ユナイテッド・オートスポーツ22号車のオレカ07・ギブソン(フィル・ハンソン/フィリペ・アルバカーキ/ポール・ディ・レスタ組)がポール・トゥ・ウインで嬉しいWEC初優勝。2位は、イオタ38号車のオレカ07・ギブソン、3位にはジャッキー・チェン・DCレーシングが入った。

 

 

トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラムの一環としてLMP2クラスにハイクラス・レーシングから参戦している山下健太所属の33号車オレカ07・ギブソンは、レース序盤でクラス2位を走るまで順位を上げたものの、最終的にはクラス8位でバーレーン8時間レースを終えている。

 

 LM-GTE Proクラスは、ポルシェ勢がアクシデントに見舞われる中でストンマーティン・レーシングの95号車アストンマーティン・バンテージAMR(ニッキー・ティーム/マルコ・ソーレンセン組)が今季2勝目を飾る。

 

 

 LM-GTE Amクラスは、チーム・プロジェクト1から出走の57号車ポルシェ911 RSR(ベン・キーティング/ラリー・テン・ボーデ/イェルーン・ブリークモレン組)がクラス優勝を果たしている。

 

後半戦となる次戦第5戦は、2年ぶりの開催となる米国サーキット・オブ・ジ・アメリカズで6時間レースとして2月23日に開催。そして続く第6戦は、史上初の米国連戦で、3月20日にセブリングで1000マイルレースが行われる。

 

以下はトヨタチームのレース後コメントとなる。

 

村田久武 TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表:
バーレーンで優勝することは大変難しいと思っていたので、今日の1-2勝利は素直に嬉しいです。我々チームは全ての分野で出来る限りの準備をし、TS050 HYBRIDの性能を最大限に引き出すことができました。また今日のレースは最初から接戦で、それが最後まで続くと思っていましたが、ライバル達がトラブルに見舞われてしまったのは少し残念でした。2019年は、2回目のル・マン優勝と世界チャンピオンを獲得した大変良い年で、今日の勝利がそれに花を添えてくれました。TOYOTA GAZOO Racingを支えて頂いているファンの皆様、WECの関係者の方々にこの場を借りて感謝致します。続く2020年がさらに良いものとなりますように、チーム一丸となって努力を続けます。

 

小林可夢偉(7号車):
勝利で今年最後のレースを締めくくることができて最高です。素晴らしい仕事をしてくれたチームに感謝します。強力なライバルとの厳しいレースになることは分かっていましたが、我々はミス無く、素早いピットストップにも助けられて着実にレースを戦いました。マイクとホセも素晴らしい走りでした。まだシーズンは長いですが、今日の結果は本当に嬉しいですし、この勢いを維持していきたいです。

 

マイク・コンウェイ(7号車):
1-2フィニッシュというのは最高の結果です。レースを通して可能な限りプッシュを続けましたが、この結果はレースウィーク序盤には予想もできないものでした。素晴らしい仕事をしてくれたチーム、チームメイトの全員のおかげです。今週バーレーンで走り始めたときは苦戦しましたが、チームがTS050 HYBRIDを見事に仕上げてくれました。この最高の勝利により、ドライバーズランキング首位に立てて嬉しいです。

 

ホセ・マリア・ロペス(7号車):
本当に嬉しい勝利です。この週末、8号車のクルーを含めたチームの全員が素晴らしい仕事をしてくれました。サクセス・ハンディキャップで非常に困難な状況にもかかわらず、1-2フィニッシュを飾ることができたのはチームのおかげです。マイクと可夢偉もいつものように素晴らしかったです。今年最後のレースで勝てたので、今年の素晴らしい結果を祝ってクリスマスと新年を迎えられるのは最高です。

 

中嶋一貴(8号車):
今日はスタートから我々8号車には運がありませんでした。あのアクシデントで大きく順位を落としたため、その時点で2位が我々の目標となりました。その後は着実にレースを戦い、チームとして1-2フィニッシュを果たせたのは良かったです。我々8号車にとっては最高の結果ではありませんが、チームとして最高の結果を得ることが出来ました。

 

セバスチャン・ブエミ(8号車):
我々にとってはタフなレースでした。スタート直後、目前で発生したジネッタとレベリオンのアクシデントを避けるためコースアウト、戦列に復帰しようとした時に他車と接触してしまいました。その影響もあり、7号車に挑むことはできませんでした。しかし、チームとしては目標だった1-2フィニッシュを果たすことができたので満足していますし、次戦のオースティンが楽しみです。

 

ブレンドン・ハートレー(8号車):
思い通りのレースになりませんでした。セブのスタートは不運でした。前車のアクシデントに巻き込まれてどうすることもできず、その後はダメージを負った車両でレースを戦わざるを得ませんでした。7号車を抜くのが難しいことは分かっていましたが、彼らにプレッシャーを与え続けました。7号車はミス無く、ピットも迅速で素晴らしいレースをし、最終的にTOYOTA GAZOO Racingが1-2フィニッシュを果たせたことは素晴らしい結果です。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。