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2022年11月25日【エネルギー】

ZF、新たなBEV向け電動ドライブユニットを発表

坂上 賢治

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独ZF( ZFフリードリヒスハーフェンAG )は11月24日、 独・バーデン=ヴュルテンベルク州フリードリヒスハーフェン のオンライン環境下でeモビリティワークショップを開き、乗用車と小型商用車向けにモーター、インバータ、トランスミッション、ソフトウェアを包括するモジュラー型の新型電動ドライブユニットを披露した(製品群の公式リリースは11月21日)。( 坂上 賢治 )

 

電動ドライブプラットフォーム]:eモーター、パワーエレクトロニクス、トランスミッション、ソフトウェアからなる包括的なシステム。革新的なコンポーネントの組み合わせで、電動パワートレーンの柔軟なプラットフォームを形成。洗練されたインターフェース技術により新設計の電動ドライブの最適なスケーラビリティを実現。

 

開発にあたりZFは、自社が持つトランスミッション、ソフトウェア、モーターなどの設計・製造技術をベースに、パワー半導体のディスクリートパッケージを集積化。加えて同製品には、自らが定義した独自のモジュラーコンセプトも貫かれている事から、今後、電動ドライブユニットの新たなスタンダード製品になるだろうと謳っている。

 

同社が、新しい電動ドライブユニットを逸早く完成させた背景には、冷却方法に係るZF独自の切り口と、モーターユニットに施した全く新しい巻線技術にあるという。

 

例えば冷却面に関しては、運転中に熱を帯びる銅製ロッドの周囲に直接オイルを流せる構造とした事で、比較的コンパクトなサイズでありながらも高い冷却効率が実現出来たとしている。加えて電気モーター自体のピーク出力も85%へと大きく高められた他、レアメタルの使用も大幅に削減出来ている。

 

電動モーター]同社は、新しい冷却コンセプトと新しい巻線技術を採用したeモーターを開発。写真は、新しい編み込み式巻線のステーター。

 

もう一方の巻線技術では、ヘアピン巻線を発展させた〝編み込み式巻線技術〟を用いて巻線部だけでも従来比で約5割のコンパクト化を実現。ものづくり面でも原材料が約1割削減出来た。それにより環境的な見地でもサスティナビリティ性の高いモーターユニットとなったという。

 

 

この新型電動ドライブユニットについて、eドライブ(電動パワートレーン)の開発責任を担うオトマール・シェラー博士は「我々が開発した新型電動ドライブは、従来のパワーモジュールに比べ部品点数の削減させて内部構成の設計を大きく洗練させた事により、この非常にコンパクトな設計が実現しただけでなく、構造的に剛性が非常に高い設計となっているため高い静粛性も両立出来ています。

 

統合型ディファレンシャルギア]eモビリティにおけるプラネタリギアセット:ZFは独自のノウハウを背景に減速ギアを備えたeドライブをより効率的かつ強力なものに仕立てた。

 

なおユニットには、我々独自の同軸減速ギアボックス技術に応用されています。この2つのプラネタリギアは、求められる車軸比を生み出すだけでなく差動機能も内包しているため。一般的なオフセット構成と比較してノイズや振動を損なう事なく重量と設置スペース自体を減らす事も出来ます。

 

またパワーエレクトロニクスは当社独自のディスクリートパッケージテクノロジーによって、高度な部品構成の標準化とフレキシブルな適応力の両立を備えています。具体的には個別に発生する製品要求特性の実現に関してはチップレベルで行われます。

 

高電圧コンバータ]燃料電池を用いた電動ドライブでは高電圧コンバータ(DC-DCコンバータ)が燃料電池の低い出力電圧と高負荷時の強い電圧降下を補うなどで中心的な役割を担う。この結果、効率性という切り口で最高値99.6%を達成した。

 

加えてディスクリート構造を採るインバータは、求められる性能特性に対してパワー半導体スイッチの最適化を高めた事で、他社の複雑なパワーモジュールを使用したケースを大きく凌駕するスケーラビリティを持たせる事が可能となりました。

 

この結果、様々な市場からご要望に、より早く、より的確に応える事が出来るようになりました。ちなみこの新型電動ドライブユニットのご提供自体は2025年以降となる見込みですが、個々の部品の量産はこれよりも早い時期に開始されます。

 

従って今後は部品レベルでの供給体制も敷き、まずはお客様企業に於ける技術革新の推進と最適化を推進に貢献して行きたいと考えています」と話している。

 

 

電動パワートレインシステムのプロダクトラインを統括するマルクス・シュヴァーベ氏は「当社の電動ドライブユニットは、標準仕様であっても、お客様が求める効率、性能、コストという3つの主なご要望を満たす事に心を砕いています。

 

当社のアプリケーションエンジニア部門は、高度なインターフェイスに係る専門知識と深い知見により、お客様が求める様々なご要望に的確にお応えする事が出来ます。それゆえ、あらゆるセグメントの電動車であっても、的確に応えて行く事が出来るのです」と述べている。

 

 

更に同社取締役会のメンバーで電動パワートレーン部門を統括するシュテファン・フォン・シュックマン氏は「当社の電動モビリティ事業に於ける高い受注額そのものが、この事業領域でお客様から大きな関心をお寄せ頂いている事を証明しています。

 

今後も我々は、一連の新型電動ドライブ技術を磨き続け、効率的なモビリティ開発の一端を担うという真摯な姿勢と、未来を見据えた持続可能性の高いソリューションをご提供し続けるというものづくり戦略を貫き通して参ります」と結んでいる。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。