NEXT MOBILITY

MENU

2023年7月3日【新型車】

アストンマーティン、プレミアムEVの開発に着手

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

ルシッドと長期的な戦略的供給契約で業界トップ技術へのアクセスが可能に

 

アストンマーティン・ジャパンは7月3日、英アストンマーティン社が米EVテクノロジー企業のルシッド・グループ(Lucid Group)と新たな供給契約を締結した(契約を結んだのは英国ゲイドン時間の6月26日)ことを発表した。

 

この合意案はロンドン証券取引所で発表さ。ルシッドのパワートレインおよびバッテリー・テクノロジーは、アストンマーティンの全く新しいバッテリー式電気自動車(BEV)プラットフォームとして、中心的な役割を果たすことになるという。

 

なお、これにより英アストンマーティン社は、世界で最もスリリングで、お客様から熱望されるパフォーマンスEVを作るという野望に向け新たな一歩を踏み出したと謳っている。またこれにより、アストンマーティンのハイパフォーマンス電動化戦略と、その長期的な成長が推進されることになるとしている。

 

この際に固められたアストンマーティンの電動化プログラムは、英国のウルトラ・ラグジュアリー・ブランドによる広範囲な「Racing. Green.」サステナビリティ戦略の柱となるもの。今後5年間で先進テクノロジーに20億ポンド以上の投資が行われる予定だ。ちなみにこの投資については、内燃エンジンからBEVテクロジーへの以降に従い段階的に行われるとした。

 

この両社が関わるプロジェクトについてアストンマーティン取締役会会長のローレンス・ストロール氏は、「ルシッドとの供給契約は、アストンマーティンの将来のEVを中心とした成長に大きな変化をもたらすものです。

 

私たちの戦略と要求に基づいて、アストンマーティンはルシッドを選択しました。これにより、将来のBEV製品向けに業界最高のパフォーマンスと、もっとも革新的なテクノロジーを利用できるようになります。

 

私たちは、ルシッドが世界最高レベルのテクノロジーを開発するために行った多額の投資を活用できるようになるだけでなく、アストンマーティンのウルトラ・ラグジュアリー・ハイパフォーマンス戦略に従い、アストンマーティン最高技術責任者のロベルト・フェデリと彼のチームが既に行っている開発作業を通じて、ドライブ体験をさらに強化し、差別化していきます。

 

加えてメルセデスベンツとアストンマーティンは、現在、電動化戦略を実現するための開発と投資をサポートするべくワールドクラスのサプライヤー2社と協力できる体制を整えました。

 

未来のモデルは新開発のモジュラーBEVプラットフォームをベースに構築

 

更に最近発表された吉利汽車との長期的なパートナーシップにより、アストンマーティンは同社の幅広いテクノロジーやコンポーネントに加え、中国の主要な戦略市場に関する深い専門知識にアクセスする機会も得られます。これにより、本日の発表は、私たちの野望の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

 

そもそもアストンマーティンは、インテリジェントで適合性の高い車両プラットフォームの開発に於いて卓越した実績を誇っています。

 

アストンマーティンが開発する新しいプラットフォームは、ハイパーカーからスポーツカー、GT、SUVに至るまで、将来の電動モデル全体の基盤となり、その最初のモデルは、2025年の発売を目指しています。

 

その前に、アストンマーティンは初のプラグインハイブリッド・ミッドシップエンジン・スーパーカー、Valhalla(ヴァルハラ)を2024年に発売し、2026年までにすべてのアストンマーティンの新しいモデルラインナップに電動パワートレインの選択肢を設定する予定です。

 

長期的な目標は、2030年までに主要な製品ラインナップを完全に電動化することです。また本日発表されたように、メルセデスベンツAGは、アストンマーティンに対し、内燃エンジン、ハイブリッド、電気自動車向けに現在および将来の世代のパワートレインおよび電気/電子アーキテクチャーを含む、幅広い世界最高レベルのテクノロジーを引き続きアストンマーティンに提供します」と語った。

 

一方、アストンマーティン最高技術責任者(CTO)のロベルト・フェデリ氏は、「ルシッドとの合意案は、アストンマーティンの電動化戦略の重要な柱となるもので、アストンマーティンに業界をリードするパワートレインおよびバッテリー・システム・テクノロジーがもたらされます。

 

私たちが社内で開発しているテクノロジーと組み合わせることで、ハイパーカーからスポーツカー、SUVに至るまで、将来のすべてのアストンマーティン製品に適したオーダーメイドのBEVプラットフォームを作ることができるようになります。

 

さらに、私たちのパワートレイン開発能力を継続的に強化し、お客様がアストンマーティンに期待しているスリリングなパフォーマンスと強烈なドライビング体験を引き続き提供できるようにします。

 

アストンマーティンは未来のテクノロジーに20億ポンドの投資を計画

 

刺激的でエモーショナルな内燃エンジンで知られるアストンマーティン・ブランドにとって、ハイブリッドおよびフルバッテリー電気パワートレインへの移行は、大きなチャレンジとなります。

 

近未来の電動化アストンマーティン・ファミリーには、ルシッドによる最先端のパワートレイン・テクノロジーと、メルセデスベンツによる高度な電子アーキテクチャーを中心に、クラスをリードするパフォーマンスと非常に洗練された車両ダイナミクスの最適な組み合わせによる、持続可能な次世代テクノロジーが採用されます。

 

その最大の特徴は、優れたバッテリー・システム効率です。これは、パッケージングと質量の点で大きな利点をもたらします。

 

具体的には、エネルギーの放出および回生速度と効率を制御するインバーター・テクノロジー、無段階に調整可能な4輪トルクベクタリングを可能にするツインモーター・テクノロジーなどが挙げられます。

 

各ホイールへの出力配分を正確に制御することで、アストンマーティンによるワールドクラスのダイナミクス・エンジニアにおける新たな扉が開き、従来の走行体験を維持するだけでなく、新たなレベルのスリリングで楽しいドライビング体験を実現します。

 

各ホイールにかかるトルクを正確に測定することで、同じプラットフォームとパワートレイン・ハードウェアを使用しながら、BEVモデルごとに独自の動的仕様を策定し、クラスをリードするドライビング・ダイナミクスを提供するために、それぞれのモデルに最適なソフトウェアを統合する無限の可能性が生まれます。

 

この作業の一翼を担っているのが、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)です。アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラ1チームのコンサルティング部門であるAMPTは、フォーミュラ1で採用されているノウハウと方法論をアストンマーティンのロードカープログラムに適用し、迅速な問題解決スキルとテクノロジー移転により車両開発のペースを加速し、効率性とパフォーマンスを向上させます。

 

極めて洗練された空気力学は、BEVモデルの効率を向上させ、航続距離を延ばす上で、ますます重要な役割を果たします。

 

同様に、アストンマーティンのBEV開発のあらゆる分野における最優先の目標は、インテリジェントなパワートレイン管理により、1回の充電で最大限の走行距離を実現し、長期間にわたる安定したパフォーマンスを提供することです。

 

メルセデスベンツAGとの協力関係は維持し世界最高レベルの技術が提供される

 

電気自動車では、内燃エンジンに燃焼用のエアを供給する必要がないため、さらに空気抵抗の少ないボディワークを採用することが可能になります。電動式の冷却用ベント、ホイールアーチおよびアンダーボディ周囲のエアフロー管理によって、バッテリー電動パワートレインの強大なパワーとトルクを受け止めるために必要なワイドタイヤによる空力への影響を軽減します。

 

アストンマーティンは、BEVモデルラインナップの開発を補完するため、他のパートナー企業と緊密に連携して、パフォーマンスと効率の基準を引き上げています。

 

例えば長年の技術パートナーであるブレンボは、ブレーキを電子的に制御する、新しいブレーキ・バイ・ワイヤー・テクノロジーを開発中です。

 

これにより、車両の航続距離が伸び、ブレーキ・レスポンスが改善され、パッドの摩耗とブレーキダストの発生が抑制されます。アストンマーティンとピレリはまた、ピレリ・サイバー・タイヤ機能を搭載した最新世代のP Zero Rタイヤを公開する準備を整えています。

 

これは、広範囲なデータを収集し、個々のタイヤにかかる負荷を計測可能なゲージにより、実際の走行における航続距離をより正確に計算できるセンサーシステムです。

 

最後にルシッドとの供給契約は、世界をリードする持続可能なウルトラ・ラグジュアリー・ハイパフォーマンス・ブランドを創造するというアストンマーティンの断固たる取り組みを、さらに強調するものです。

 

アストンマーティンは、世界最高レベルの内燃エンジン、プラグイン・ハイブリッド、電気自動車の開発に取り組んでおり、モータースポーツの最高峰クラスであるフォーミュラ1に参戦では、史上もっともエネルギー効率の高い内燃エンジンとともに、優勝を目指しています。

 

アストンマーティンのサステナビリティ戦略は、将来の世代の素晴らしい車の開発に焦点を当てたブランドの取り組みを象徴するものです」と説明した。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。