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2024年4月1日【中古車】

オークネットとUTEcon、「リユース流通価格指数」を開発

坂上 賢治

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循環型市場設計のオークネットは4月1日、東京大学エコノミックコンサルティング(UTEcon)と「リユース流通価格指数」を開発。その第1弾として「中古車市場価格指数」を発表した。こうした中古車市場価格に関する指数の可視化は、日本でも先行的な取り組みとなる。

 

この「リユース流通価格指数」開発の背景は、日本国内の(2021年)リユース市場規模が推計約2兆7千億円で、これが2030年には4兆円規模に到達すると予測され、今後も市場は継続して拡大する見込みであること。併せて米国の経済動向を把握するための指標CPI(消費者物価指数)は、二次流通に於いて不動産中古物件や中古車も指標の取り入れられており、これらは経済動向を把握する指標として注目を集めていることなどある。

 

一方で日本国内で提供されてきた「物価指数」は、直線的にモノが流れるリニア・エコノミーを前提に算出されているが、今後サーキュラーエコノミーへ経済視点が拡大していくなかで、リユース市場の蓄積データを活かたBtoB流通の価格トレンド・需要を〝指数として可視化〟することが求められると考え、今回の「リユース流通価格指数」の開発に至った。

 

実際、日本で中古車市場の値動きを把握するための指標として引用される「平均取引価格」では、取引される中古車の質の変化を反映できておらず、物価変動を適確に把握することができないそこで今回オークネットとUTEconは、関連指数の第1弾として「中古車市場価格指数」を発表した。

 

より具体的には440万件を超えるオークネットの会員流通データを元に、UTEconの価格指数構築ノウハウを活用。様々な中古車の属性を統計モデルに組み込むことで、日本市場での中古車価格が実際にどのくらい上下しているのかを客観的に把握可能な「中古車市場価格指数」システムを構築した。

 

併せて今後は、月毎の「中古車市場価格指数」をオークネットが設立した企業内ラボ「オークネット循環型流通ラボ」で定期更新の上で公開していく。

 

 

例えば2008年以降、取引される中古車の走行距離と経過年数が長くなるなど、中古車の品質低下が顕著に見られるが、同指数によると2008年7月を1として「中古車市場価格指数」と「平均取引価格」を比較した場合、品質を統計的に揃えた「中古車市場価格指数」は2013年~2020年頃までは1.1~1.4前後で推移してきたものの2020年を境に高騰。

 

2022年9月には2.2に達している一方で、「平均取引価格」は最大でも1.4倍程度の上昇幅に留まり、取引される中古車の品質を統計的に揃えた「中古車市場価格指数」と大きな差があることが分かる。このように「中古車市場価格指数」の変化を比較することによって、単純に「平均取引価格」を見るだけでは見えてこない、適確な「物価の変動」を把握することが可能となる。

 

図:「中古車市場価格指数」と「平均取引価格」の比較

図:平均走行距離の推移

図:平均経過年数の推移

 

図:全ボディタイプを総合した「中古車市場価格指数」

図:ボディタイプ別「中古車市場価格指数」

図:ボディタイプ別「中古車市場価格指数」前年同月比

 

こうした取り組みについてUTEconでは、「昨今、様々な商品の値上げが相次ぎ、物価の上昇をどのように察知し対策するかということが、多くの人にとって身近な問題になっています。

 

今回取り扱った中古車市場に於いても、価格が大きく動いていることは長らく取り沙汰されてきましたが、〝平均取引価格〟が動く際には取引される中古車の品質も変化することが通常であり、〝同じ品質〟に揃えた形で適切に価格の変化を捉えるために計量経済学的な工夫を加える必要がありました。

 

今回の取り組みでは、オークネットが保有する潤沢なデータを活用することでそのような工夫が可能となり、リユース市場における動向をより的確に映し出す、社会的に大変意義深い取り組みになっていると考えております。このような挑戦的な取り組みにご一緒できたことを大変光栄に思います」と述べた。

 

また更にオークネット循環型流通ラボ理事長の有村祐二氏は、「オークネットは1985年にリアルタイム中古車オークションを開始、中古デジタル機器、中古バイク、ブランド品など、多種多様な領域へと拡張し、リユースを中心とした二次流通の専門ノウハウや流通ネットワークづくりを推進してまいりました。

 

このたび、オークネットが所有する多くのデータとUTEconの計量経済学的なノウハウを組み合わせることで、BtoB市場における価格動向を的確に表す仕組みをご提供することが可能となりました。

 

今回発表した〝中古車市場価格指数〟をはじめ、今後もさまざまな商材のB2Bリユース市場の価格トレンドを表すリユース流通価格指数をUTEconと共同研究し、社会に貢献していきたいと考えております」と話している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。