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2024年3月26日【事業資源】

アウディAG、2023会計年度で製品ポートフォリオを拡大

坂上 賢治

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アウディジャパンは3月25日、独・アウディ グループ(アウディAG)の2023年度の業績発表(3月19日:独・インゴルシュタット/ネッカーズルム)の概要を明らかにした。

 

それによるとアウディAGは、厳しい経済状況のもと堅調な業績を残したという。売上高は前年比13.1%増の699億ユーロ、営業利益は63億ユーロ、営業利益率は9.0%を記録した。ネットキャッシュフローは、前年と同水準の47億ユーロだ。

 

アウディは同期の多くのニューモデルを導入したにも関わらず、今後数年間でも製品ポートフォリオを大幅に強化・拡大する予定という。

 

なかでも新しいプレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)を採用した、初めての電気自動車となるAudi Q6 e-tronのワールドプレミアは、今後発売される一連の製品の先駆けとなったとしている。更に2024年から2025年に掛けて、20以上のニューモデルの導入が計画されているとした。

 

 

AUDI AGのゲルノート デルナー(Gernot Döllner)取締役会会長は、「私たちは経済的、技術的、戦略的に将来に向けた立ち位置を整え、ニューモデルを次々と市場に投入していきます。

 

財務実績、優れた製品、柔軟で素早い決断力を備えた企業構造など、主要な活動分野に焦点を当てた確固たる戦略に基づいています。このようにして、私たちは厳しい経済環境の中で、変革を加速させています」と述べた。

 

現在のアウディ グループを構成するアウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティの各ブランドは、プログレッシブな成果を積み上げ、2023年度は191万8,912台(2022年:163万8,638台)の車両と5万8,224台(2022年:6万1,562台)のモーターサイクルを販売した。つまり今期は高い需要と供給の改善により、前年比17.4%の増加となる189万5,240台の車両を販売した。

 

またアウディは、欧州、中国、北米といったコアマーケットで大きな成長を遂げたとしている。併せて長期的な競争力を確保するべく、地域戦略も見直続けており、これには、特に中国市場に特化した専用モデルの導入も含まれている。

 

同国では2024年末から、アウディと第一汽車(FAW)の合弁会社Audi FAW NEV Company Ltd.が、中国市場向けに専用設計された電気自動車を長春で生産する予定となっている。

 

EVについては2023年の販売規模を大幅に伸ばし、前年比51%の大幅増となる17万8,429台を販売した。これらの数字は、完全なネットワーク機能を備えたプレミアム eモビリティのリーディングプロバイダーになるとする同社戦略が軌道に乗っていることを記しているとした。

 

これを踏まえて2024年のアウディは、eモビリティ領域で新たなステップを踏み出す。それは新たなプラットフォーム環境であり、アウディがポルシェと共に開発したPPEは今後登場する、先進的なテクノロジーを搭載した電気自動車の技術的基盤となっていく。

 

このPPEは、ミッドサイズ及びラグジュアリーセグメントまでの幅広いモデルに対応できる拡張性を備えさせている。その最初のモデルが、Audi Q6 e-tronとなる。

 

 

これはアウディが初めてPPEを採用した市販モデルであり、新世代のアウディを代表するAudi Q6 e-tronは、効率、一充電航続距離、充電速度、デザインに於いても新たなベンチマークを打ち立てることになる。

 

操作コンセプトを一新したE³1.2電子アーキテクチャーは、アップデート&アップグレードが自在だ。これによりアウディは完全なコネクテッドカーへの道のりで、その一歩を踏み出す。またAudi Q6 e-tronは、インゴルシュタットで生産される初めての電気自動車でもある。

 

同時にアウディは、ソフトウェアデファインドビークル(SDV:Software Defined Vehicle)へのパラダイムシフトを進め、ソフトウェアベースのソリューションとバーチャルカスタマーエクスペリエンスに注力する。

 

アウディは、フォルクスワーゲン グループのソフトウェア部門であるCARIAD及びフォルクスワーゲン ブランドと協力して、この移行を推進するSDV Hubの運用も開始する。そのためにジョイントコンピテンスセンターでは、専門家たちが次世代電気自動車のハードウェア、ソフトウェア、電子アーキテクチャーの開発に取り組んでいる。

 

なお事業上の収益でもアウディ グループは好調に推移、2023年の売上高は698億6,500万ユーロ(2022年:617億5,300万ユーロ)に達した。更にその詳細をつぶさに見ていくと、堅調な販売実績、高い需要、より安定した供給によって、売上高は前年より13.1%増加した。

 

この成長には、電気自動車のAudi Q4 e-tronに加え、Audi Q3、Audi Q5、Audi Q7シリーズがマーケット拡大に大きく貢献した。EUタクソノミーに準拠した売上高の割合も16.3%(2022年:13.5%)に上昇した。

 

こうした営業利益は、原材料のヘッジ取引によるマイナスの影響を受けているみものの、それでも62億8,000万ユーロ(2022年:75億5,000万ユーロ)に達した。

 

原材料のヘッジ取引は、前年に8億ユーロのプラスの効果をもたらし、2023年の営業利益で9億ユーロ減少させた。しかしそれでも営業利益率は目標範囲内の9.0%に収まっている。

 

 

そこでアウディは、2023年度の従業員の努力に報いるべく、従業員に利益の一部を分配した。例えばドイツ工場の熟練労働者の場合、2023年のアウディの利益分配額は8,840ユーロを受け取る(2022年:8,510ユーロ)。そうした利益分配は、営業利益などを考慮した労働協約に定められた計算式に基づいて処理される。

 

こうした好調さの背景には、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティの各ブランドの財務実績が貢献している。

 

例えばランボルギーニは、2023年、前年比9.5%という大幅な伸びとなる1万112台(2022年:9,233台)の車両を販売した。売上高は非常に好調だった前年を更に12.1%上回り、26億6,300万ユーロ(2022年:23億7,500万ユーロ)に増加した。営業利益率は27.2%、営業利益は7億2,300万ユーロに達した。

 

ベントレーは、1万3,560台(2022年:1万5,174台)の車両を販売。売上高は29億3,800万ユーロ(2022年:33億8,400万ユーロ)。営業利益率は20.1%に達し、営業利益は5億8,900万ユーロとなった。

 

二輪部門のドゥカティは、5万8,224台のモーターサイクルを販売した。この数値は、記録的な販売台数を達成した2022年の6万1,562台と比較すると、わずかに減少した。それでも売上高は10億6,500万ユーロで、非常に好調だった前年(10億8,900万ユーロ)をわずかに下回った状態であり、営業利益率は10.5%、営業利益は1億1,200万ユーロを記した。

 

そんなアウディ グループの2023年の営業外収益は、14億2,300万ユーロ(2022年:15億2,200万ユーロ)。中国の事業からの営業外収益は、9億1,500万ユーロ(2022年:11億5,300万ユーロ)、税引後利益は62億6,000万ユーロ(2022年:71億1,600万ユーロ)となった。この結果、アウディ グループのネットキャッシュフローは、好調だった前年と同水準の47億4,000万ユーロ(2022年:48億800万ユーロ)となっている。

 

 

こうした成績を前提に2024年度の展望について、AUDI AG最高財務責任者(CFO) ユルゲン リッテルスベルガー氏(Jurgen Rittersberger)は、「堅実な財務結果により、私たちが今後も数年間に亘って変革を推進し続けていく体制が整いました。

 

そのため、私たちはPerformance Program 14を立ち上げました。これは私たちの収益性を確保するための効果的なプログラムです。長期的には、ブランド グループ プログレッシブの営業利益率の目標である14%を達成したいと考えています。

 

アウディのスローガンであるVorsprung durch Technik(技術による先進)は、再びブランドを定義する中心的な役割を果たします。これは、品質とデザインにおけるアウディのリーダーシップを象徴します。

 

しかし一方で2024年は依然として情勢は安定せず、マクロ経済も厳しい状況にあります。従ってアウディはこれからも激しい競争が今後も続くと予想しています。

 

ただそれと同時に今期も柔軟なポートフォリオを活かすことが重要です。当社は需要の変化に対応するため、電気自動車と内燃エンジン搭載モデルの両方を生産し、将来に備えていきます。

 

そうした経営要素を背景に若干の経済成長と部品の安定した供給を前提として、アウディ グループは2024会計年度に630億ユーロから680億ユーロの売上高を予想しています。また営業利益率は、8〜10%の範囲、ネットキャッシュフローは、25億ユーロから35億ユーロの範囲になると予想しています」と結んでいる。

 

 

アウディ グループの主な業績(抜粋)
– ブランド グループ販売台数
 (2023年)1,918,912台 /(2022年)1,638,638台
– アウディブランド販売台数
 (2023年)1,895,240台 /(2022年)1,614,231台
– 売上高(単位=百万ユーロ)
 (2023年)69,865万€ /(2022年)61,753万€
– 営業利益(単位=百万ユーロ)
 (2023年)6,280万€ /(2022年)7,550万€
– 営業利益率(%)
 (2023年)9.0% /(2022年)12.2%
– ネットキャッシュフロー(単位=百万ユーロ)
 (2023年)4,740万€ /(2022年)4,808万€
– 営業外収益(単位=百万ユーロ)
 (2023年)1,423万€ /(2022年)1,522万€
– 税引後利益(単位=百万ユーロ)
 (2023年)6,260つ万€ /(2022年)7,116万€
– EUタクソノミーに準拠した売上高の割合(%)
 (2023年)16.3% /(2022年)13.5%

 

 

アウディ グループ2024年の予測(2024年)
– 売上高(単位:百万ユーロ):63,000万€ – 68,000万€
– 営業利益率(%):8 – 10%
– ネットキャッシュフロー(単位:百万ユーロ):2,500万€ – 3,500万€

※アウディ グループを表すブランド グループ プログレッシブは、アウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティ ブランドから構成されている。また「アウディ グループ」、「ブランド グループ プログレッシブ」、「ブランド グループ」は同義語として使用されている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。