NEXT MOBILITY

MENU

2024年4月10日【新型車】

アウディAG、S3を大幅にアップデートして発売

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

最高出力333PS、最大トルク420Nmで、更にパワフルが増した

 

アウディAGは4月9日(独インゴルシュタット発)、S3のエクステリア&インテリアデザインをリファインした上でエンジン出力も向上させ、ステアリング特性やサスペンション設定も見直すなどにより大幅なアップグレードを施した上で発表・発売する。まずは新型Audi S3 Sportback及びSedanを、2024年第2四半期には発売する予定という。

 

新型Audi S3は、製品のアップグレード施策の一環で搭載した2.0TFSIの出力を23PS、トルクを20Nm向上させた。その結果、最高出力333PS、最大トルク420Nmと、これまで以上にパワフルになった。そのパフォーマンスは、0~100km/h加速で4.7秒、最大トルクは2,100から5,500rpmの幅広い回転域で発生。最高速度は電子リミッターにより250km/hに制限されている。

 

トランスミッションも、よりスポーティな設定とした。7速Sトロニックのチューニングを変更したことで発進トルクがアップ。これまでより素早いスタートを切ることが可能になった。

 

これは、クラッチ構造のクラッチパックをより強く押し付けることによって実現したもので、トランスミッションをDに設定すると、フルロード時(アクセル全開時)の変速時間が半減し、パーシャルロード時のエンジン回転数が上昇するため、優れたスロットルレスポンスを発揮できるようになったという。

 

一定速度での走行およびパーシャルロード域(アクセルを踏み込んで徐々に負荷がかかっていく領域)の低中加速時に於いても、プリロード(ブースト圧が事前に充填)されたターボチャージャーが一定の回転数を維持する。また、オーバーランモード時にスロットルバルブが開くことによって、パフォーマンスを向上させることができている。

 

 

トルクスプリッターとダイナミックプラスモードで操舵が俊敏に

 

併せてAudi RS 3に続き、Audi S3にも駆動トルクを配分するスプリッターが搭載されたことで敏捷性と安定性が向上した。これは左右のリヤホイールの間で駆動トルクを完全に可変配分するもので、このトルクスプリッターは各ドライブシャフトに組み付けられた複数のディスククラッチを電子制御することにより、運転状況と選択されたドライブセレクトモードに応じて、コーナー内側と外側のリヤホイール間でのトルク配分を最適化する。

 

ドライブセレクトには、快適性重視からダイナミックな設定まで、幅広い走行フィーリングを示す6つの異なるモードを設定。またアップデートにより従来のドライブモード(オート、コンフォート、ダイナミック、インディビジュアル、エフィシェンシー)に加えて、新しいダイナミックプラスモードも加わっている。

 

この新しいモードを選択すると、トルクスプリッターがリヤアクスルおよびコーナー外側のホイールに可能な限り多くの駆動トルクを配分するため、コーナリング時のステア特性を強くサポートする。

 

またこのドライブセレクトをスポーツモードにした場合、エレクトロニックスタビリゼーションコントロール(ESC)が自動的にアクティブになる。その結果、ESCシステムが適度に介入することにより、摩擦係数が異なる路面で、よりエモーショナルなドライビングエクスペリエンスが得られる。

 

更にエンジンとトランスミッションをダイナミックプラスモード専用に設定変更することもできる。このモードを選択すると、先のダイナミックモードと比較して、2.0 TFSIのアイドリング回転数が200rpm増加して1,300rpmとなり、初期駆動時のパフォーマンスが更に向上する仕組みだ。

 

ハンドリング性が向上したことで限界走行時の挙動も改善した

 

サスペンションでは、より硬めの特性を備えたウィッシュボーンと、よりネガティブキャンバーを可能にする新しいピボットベアリングにより、ステアリングレスポンスの俊敏さと、ラテラルコントロール(横方向の制御)面のフレキシブル性が向上した。

 

これにより、コーナリング時のグリップとダイナミクスが強化され、アップデートされた車体に最適化されたプログレッシブステアリングも相まって、Audi S3はより正確にコーナーを曲がることができる。操舵角によって変化するステアリングレシオは、中間ポジションでよりダイレクトな設定となっているためハンドリング精度も増している。

 

 

Audi S3シリーズには、Sスポーツサスペンションも標準装備される。これによりAudi A3と比較すると車高が15mm低くなる。トルクスプリッターと各アウディドライブセレクトモード専用に調整されたアダプティブダンパーも備えているため、オプションのSスポーツサスペンションを選択した場合、車高が15mm低くなる設定だ。

 

新世代のESCも採用された。コーナリング中のコーナー内側のホイールに、わずかにブレーキをかけるホイールセレクティブトルクコントロールも進化を遂げ、トラクションが向上すると共に、減速時の挙動も改善されている。

 

併せてAudi S3専用のサスペンションコントロールシステムの設定により、コーナー進入時のダイナミズムとドライビング特性も向上。ハンドリング性が向上したことで限界走行時の挙動も改善した。

 

新たに採用されたブレーキシステムにより制動力も高まる

 

ちなみにAudi S3は18インチ(225/40)タイヤを標準装着。加えて2種類の19インチ(235/35)タイヤもオプションで設定される。これらにはドライコンディション時のハンドリングを最適化し、ブレーキング時の挙動を向上させるパフォーマンスタイヤも含まれている。

 

今回のモデルでは新たに、タイヤ銘柄にファルケン製スポーツタイヤがラインナップに加わった。このタイヤは、特にドライコンディションで高いグリップ力と安定性が与えられており、あらゆる速度域でハンドリング特性がより精緻になった。

 

その他の足まわり機能ではブレーキの強化により絶対性能自体も高まっている。アップグレードされたAudi S3には、フロントアクスルに大径のベンチレーテッドブレーキディスクを装備。これは視覚的なハイライトにもなっている。

 

例えば18インチのスチールブレーキの直径は357mm、厚さは34mmで、以前よりも4mm厚くなった。フロントブレーキの2ピストンキャリパーも新たに採用され、大きなパッドと広いディスクの摩擦面積により、熱や負荷に対するポテンシャルが増し制動力が大きく向上した。

 

 

エクステリアデザインもAudi S3ではアップグレードされ、よりスポーティで引き締まった外観を備えている。六角形のフレームレス シングルフレームは、よりフラットでワイドな形状で、特にAudi S3では、ディストリクトグリーン、アスカリブルー、プログレッシブレッドを含む、新しいメタリックカラーによって表現力の豊かさが増している。

 

選択可能なランニングライトシグネチャーで表現力も豊かに

 

このようなエクステリア面の改良についてアウディAGのデザイン責任者を務めるセザール ムンターダ氏(Cesar Muntada)は、「Audi S3では、ライティングのカスタマイズがより高度になり、いつでも好きな時に表情を変えることができます。

 

そんなライトシグネチャーは、このモデルの自信に溢れたスタイルと俊敏な走りを様々な方法で解釈したものです。これは、それぞれのライトシグネチャー毎に個別にデザインされたカミングホーム/リービングホームのシナリオにも当てはまります。テールランプも新しいリヤライトデザインを採用して、カミングホーム/リービングホーム機能の演出が大きく一新されています。

印象的なエクステリアデザインの刷新に合わせてインテリアの印象も、これまで以上にシャープになりました。インテリアでは、シフターのデザイン、エアベントから、ファブリックの装飾インレイ、新しいインテリアライトに至るまで数多くの新しい搭載機能を確認して頂けるでしょう。これらすべての要素は、細部に至るまで高い精度で仕上げられており、このモデルらしい精緻さを強調しています。

 

S3に標準装備されるアンビエントライトパッケージプラスは、シフターの手前、ドア、足元の収納コンパートメントに、照明によるアクセントを追加しています。今回のアップグレードにより、センターコンソールとカップホルダーにもコンツァーライトも装備されました。

 

 

インテリアでは多様なオプション装備の選択肢が用意される

 

更に注目すべき新しいデザインエレメントの1つは、300回のレーザーカット加工が施されたフロントドアのファブリックパネルです。このフロントドアパネルは、パネル内に設けられた光源によって5色に照らされます。

 

なおこのライトは、車両のロック時とロック解除時にも点灯します。そんな照明付きファブリックパネルは乗員に対してS3のユニークさ印象付けることでしょう。

 

人工皮革のアームレストと2ゾーンコンフォートのエアコンディショナーも標準搭載しました。フラットボトムの3本スポークのレザーステアリングホイールには、マルチファンクションボタンと、クロームメッキが施された新しいステアリングホイールパドルが装備されます。

 

一体型のヘッドレストと立体的なサイドボルスターを備えたスポーツシートは、コーナリング時に横方向のサポートを強化。Dinamica(ダイナミカ)マイクロファイバー、アルミニウムやカーボンファイバーに加えて、新しいテクニカルテクスチャードファブリックも、装飾オプションとして選ぶことができます。

 

 

ユーザーは車両購入後でも、快適機能をオンラインで追加できる

 

その他、S3には数多くのコネクテッドサービス、オンデマンド機能、アプリストアが提供する高度なコネクテッド機能も備えています。その操作を行える10.1インチのタッチディスプレイに加えて、アウディバーチャルコックピット、ワイヤレス充電機能を備えたスマートフォントレイのすべてが標準装備です。

 

センターコンソールに2つのUSB C充電ポートを設置したのに加え、標準でリヤシートにも同様の2つのポートが設置されています。オプション機能にも多くの選択肢があり、MMIナビゲーションプラス、アウディコネクトのフルサービスなどがディスプレイを介してアクセスすることができます。

 

このようなアプリ群は、ユーザーのスマートフォンを経由することなく、車両のインフォテインメントシステムに直接インストールでき、ユーザーは、ボイスコマンドを介してアプリを操作することができます。

 

 

オンデマンド機能を介して高い柔軟性も達成されています。ユーザーは車両購入後でも、マイ・アウディアプリを介して、最大5つのインフォテインメントおよび快適機能をオンラインで追加することができようになっています」と結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。