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2019年3月25日【トピックス】

中国BYD、日本市場向けに小型電気バス「J6」を来春投入へ

間宮 潔

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 5年間で1000台の販売目標

 

 電気自動車(EV)世界最大手である中国の比亜迪(BYD)社の日本法人、「ビーワイディージャパン」(劉学亮社長、横浜市神奈川区)は3月25日、東京・赤坂でEV事業における日本戦略に関する記者会見を開き、来春、1充電で200㎞を走破できる小型電気バス「J6」を日本市場向けに投入、都市型2タイプ、郊外型1タイプの3モデルを提案すると発表した。J6の販売は2024年までの5年間で1000台を予定している。

 

 記者会見に臨んだ日本法人の花田晋作副社長は現在、中国を始め海外に導入している小型電気バス(K6)をベースに「日本仕様にリメイクする」とし、アルミボデーのK6をさらに軽量設計するほか、技術進歩の著しいモーターやバッテリーの最新技術を織り込み、現行150㎞の走行距離を3割アップさせた日本戦略モデルJ6を投入することを明らかにした。

 

日本でのEV普及の先駆けを訴える花田副社長

 

また同氏は「本日より先行予約受け付けを開始する」とも述べ、希望小売価格を税抜き1950万円の低価格に設定したこと、また新モデルが「国交省が定める地域交通グリーン化事業の定義に入る。完全な電気バスなので交通事業者さまが申請すれば補助金を受けることが可能と考えている。現在、3分の1の補助が受けられるので、差し引けば凡そ1200万~1300万円になる」とし、充電設備も補助制度が適用になると指摘した。

 

 BYDの電気バス販売累計は、世界で5万台を超え、その1日の走行距離は1000万kmに達する。お膝元の中国・深圳市では2011年のユニバシアード開催を機に、大型電気バス200台が導入され、2017年度には路線バス約1万7000台のすべてが電気バスに代替えされ、その9割がBYD社製になっている。深圳市での1日当たりの電気バス走行距離は350万㎞になり、CO2排出削減に寄与している。

 

ディーゼル仕様のバスは、乗用車の33台分のCO2排出になるが、日本でのEV化は遅れており、路線バス6万台のうち、電気バスは約40台で0・1%未満にとどまる。このうち21台はBYD社製電気バスで占める。2015年に京都で初めてBYD社製大型電気バス5台が導入されたのを皮切りに、17年には沖縄・那覇で10台を納入、昨年は京都で2台の追加があり、福島・会津若松で中型電気バス3台を納めた。

 

 BYDの使命は「電動化社会を広げる」ことにあり、日本でも積極的にEV化を推進する考えで、今回のJ6の2000万円を切る価格設定は「限界的な数値」とし、「補助金がなくても、普及に向き合っていける」とした。超高齢化社会に入る日本では、急速に交通弱者が増えると予想し、幹線道路を大型や中型電気バスでカバーし、生活道路を小回りの利く小型バスが交通弱者の足となって走る。大都市だけでなく、郊外や地方都市でも必要な車両とする。

 

J6のイメージ図

 「J6」は、全長6990㎜×車幅2060㎜×車高3100㎜の小型バスのサイズ。バッテリー容量は105k Whで既存のK6と同じだが、バッテリーを車体後部に配置し、ノンステップで床をフラットにした。充電時間は3時間。都市型Ⅰタイプは31人乗員で前部に扉1枚。都市型Ⅱタイプは後部にも扉があり、乗員29人のり。郊外型タイプは1枚扉だが、ゆとりのある25人乗りだ。

 

コミュニティバスとして路線バスに利用されるだけでなく、病院、老人ホームなどの自家用ユースにも今後販売が期待されている。BYDでは、今後、J6をベースに2020年以降自動化に対応していくほか、災害対応ということで21年に車両から家に、また車両同士で電力供給するシステムを搭載、さらに22年に車両から電力会社に電力を供給する仕組みも開発する。

 

 なおBYDでは日本生産を「地元の要望があれば、柔軟に対応する」との考えを示したが、「現在、要望はないし、深圳には十分な生産能力がある」と答えた。また中国では電気バス普及に向けた補助金が止まるとの報道に触れ、「補助金が止まっても、われわれはある程度、設備償却を完了しおり、一定価格で販売していくことが可能だ。われわれは事業の継続性も含め、心配している状況にない」とコメントした。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。