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2022年8月22日【自動車・販売】

エンジン認証不正問題、小型の「日野デュトロ」にも広がる

松下次男

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生産停止が国内工場の約6割(グローバルで約4割)に及ぶ

 

日野自動車は8月22日、オンラインで記者会見を開き、エンジン認証不正問題が小型トラックでも追加、判明したと公表した。国土交通省の立ち入り検査で判ったもので、小木曾聡社長はこれにより車両の生産、出荷停止が国内工場の「約6割相当」に拡大する見通しを示した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

新たに追加のエンジン認証の不正が判明したのは小型エンジン「N04C(HC―SCR)/2019年」モデル。これを受けて、日野は同エンジンを搭載する小型トラック「日野デュトロ(トヨタ・ダイナ向け含む)」の出荷を同日付から停止した。

 

不正は、排ガス認証申請に際し、劣化耐久試験で各測定点の測定を2回以上行う必要があるところを1回のみの回数不足測定点があったことや劣化補正値の算出でそれらの測定データを使う必要があるところを、各測定点で1回の測定データで算出していたというもの。

 

判明は、8月2日の特別調査委員会の調査報告が公表されたのを踏まえて、翌8月3日から国交省が立ち入り検査を実施して判った。

 

これを受けて小木曾社長は「追加で不正が判明したことは深刻で弁解の余地がない。再びこのような多大な迷惑をかけたことを大変申し訳ない」と陳謝した。

 

国交省の立ち入り検査で判明した不正対象車種は64万台へ拡大

 

今回、追加でエンジン認証問題の不正が判明したことについて日野は各測定値点で2回以上行うことの認識、理解が欠けていたことや確認不足が掲げ、不正を行っているとの認識はなかったとした。

 

ただし、メーカーとして「知らなかった、で許されるものではない」と反省する。8月2日の特別調査委員会の調査報告に含まれなかったことについては、日野からの「提案がなかった」ことから漏れたと述べた。

 

技術検証からは、今回の小型エンジンに関する排出ガスの規制値超過の可能性は認められなかったとしている。

 

新たに出荷停止となった車両は、日野デュトロの2019年5月発売以降の国内市場向けモデルが対象。主として、「積載量2トンクラス」が対象とし、トヨタ製GDエンジンを搭載する積載量1・5トンクラスは対象外とした。対象小型トラックの累計登録台数は約7万7千台。

 

今回のエンジン認証申請の追加不正により、日野自動車の出荷停止は国内工場の生産分で8月2日時点の約3割から約6割へと影響が拡大することを明らかにした。

 

主な工場でいえば、大中型トラックを生産する古河工場(茨城県古河市)で約75%の停止、小型トラックを生産する羽村工場(東京都羽村市)で半減の生産停止という。

 

過去の小型トラックへも不正が広がる可能性も燻る

 

エンジン認証不正の対象台数も3月4日公表の12万台、8月2日公表の57万台から、今回の追加不正で64万台に広がった。

 

グローバルでみても出荷停止は16万台のうちの約4割に及ぶとし、業績へのさらなる影響は避けられないだろう。

 

追加の不正が判明したエンジン認証試験の現状については、昨年末から新たな態勢で取り組んでいることから「法規通りの検査が行われている」ことを確認済みとした。

 

しかし、特別超委員会の調査報告で指摘された「風土改革」などの体質改善に引き続き取り組んでいく必要性を小木曾社長は強調した。

また、今回追加判明した小型トラックの認証不正は2019年モデルについてであり、検査員の理解不足から「それ以前のモデルについて同様の可能性がある」として、独自に再調査する考えを示した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。