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2022年1月18日【自動車・販売】

FCAジャパンとグループPSAジャパン、合同年頭会見を開催

山田清志

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PCAジャパンとグループPSAジャパンのポンタス・ヘグストロム社長

 

FCAジャパンとグループPSAジャパンは1月18日、合同年頭会見をオンラインで開催した。その中で、両社の社長であるポンタス・ヘグストロム氏は両社が日本国内で展開する7ブランド、「ジープ」「プジョー」「フィアット」「アバルト」「シトロエン」「アルファロメオ」「DSオートモビル」について、2021年をそれぞれ振り返るとともに今後の展開について説明した。また、3月1日付で両社を統合して「ステランティス ジャパン」を設立することを明らかにした。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

2021年販売実績

 

コロナ禍でも7ブランド合計で対前年比10%増

 

「コロナ禍と半導体不足がわれわれのビジネスに引き続き暗い影を落としている。その結果、サプライチェーンへの負荷が高まり、供給不足になったのみならず、原材料も高騰している。そのような状況下にあって、われわれもお客さまにタイムリーに製品を届けることが難しくなっていた。それでも結果的に7ブランドは2021年4万4000台を超える販売台数を達成した。国産・輸入を問わず業界平均を超える伸長率をわれわれは達成できた」とヘグストロム社長は話し、困難を極めた時期に対前年比10%増の販売台数を達成したことに胸を張った。

 

ジープは日本導入後初めて1万4000台を超え、プジョー、フィアット、シトロエン、アルファロメオも2ケタ成長を記録した。その結果、ステランティスのシェアは2019年に14%だったものが2021年には17%超まで伸長した。

 

 

「この成長を支えたのは、新製品のローンチ、ワクワクする限定車の導入、熱意あふれるデーラー皆さまによる拠点やサービスの拡充、ブランドと製品の認知向上のための投資の継続にあった」とヘグストロム社長は説明し、さらなるスケールの拡大と顧客のニーズに応えられるように販売子会社を統合し、「ステランティス ジャパン」を22年3月1日付で設立すると発表した。ただ、「マセラティ」については統合せずに、これまでと同様に独立した事業体として日本でのビジネスを展開していくそうだ。

 

ジープとプジョーは1万台超えの過去最高の販売

 

それではブランドごとに状況を見てみよう。まずジープについては、2021年はジープ生誕80周年という記念の年で、販売のほうも1万4294台と過去最高の台数を記録し、8年連続で前年を上回る結果となった。地デジ対応の日本仕様のナビゲーションを搭載したり、エンジンの小排気量化を進めたことが奏功した。

 

「2022年については矢継ぎ早に新製品を登場させる。『グランドチェロキーL』の販売が目前に迫っているし、その後には『グラディエーター』も控えている。グラディエーターは11月30日の発表後2週間足らずで150台を受注した」とヘグストロム社長は述べ、22年に販売店を新たに10店舗オープンし、最終的には全国100拠点体制を築いていくという。

 

 

プジョーは2014年と比べて販売台数が倍以上の1万2072台となり、20年対比では12.3%も伸びた。「208/2008」や「308/3008」といった新世代デザインのモデルが好調で、特に208/2008の販売台数は5000台を超えて過去最高を更新した。その結果、プジョーブランドとしても、7年連続で販売を伸ばした。

 

「プジョーでは、ガソリン、ディーゼル、PHEV、BEVという選択肢をお客さまに提供する“Power of Choice”を推進している。Power of Choiceによってお客さまはライフスタイルや予算、ニーズや環境性能に応じてお好きなパワートレインを選択できる」とヘグストロム社長は説明し、ボルボやアウディなどのようにBEV一辺倒ではなく、トヨタ自動車のようにフルラインアップ戦略でクルマを販売していく。

 

2022年については、308のフルラインアップを進めていき、2021年9月に日本で公開した新型「308/308 SW」の導入を改めて強調した。また、販売ネットワークを拡大するとともに新CI店舗の拡充していく計画だ。

 

フィアットは商用車でキャンピングカー市場に殴り込み

 

フィアットについても、2021年の販売は好調で、前年比18.7%の6995台と過去最高となった。2016年以降、4年連続で前年割れをしたが、ようやく下降線に終止符を打ち、コロナ禍のなか大きく持ち直したと言っていいだろう。特に「500(チンクエチェント)」ファミリーが2008年の発売以来、4858台と過去最高の販売を記録し、大きく寄与した。

 

2022年はヘグストロム社長によると、新型BEVの「500e」、そしてそのコンバーチブルである「500eカブリオ」を導入するとのことで、「新たなフィアットのアイコンとなるEVが導入される日が待ち遠しい」を述べていた。

 

 

また、ヘグストロム社長は欧州で最も売れているという商用車「デュカート」を日本に導入することを明らかにした。しかし、運送会社などに商用車として売るというより、成長を続けるキャンピングカー市場に殴り込みをかけるためのようだ。「キャンピングカーのベース車両としてデュカードはうってつけ」(ヘグストロム社長)とのことで、2月10日に幕張メッセで開幕する「日本キャンピングカーショー2022」にデュカードを展示する予定だ。

 

アバルトについては、残念ながら2021年は販売台数が対前年比17.8%減の2491台という結果だった。これは「124 スパイダー」の販売終了による影響が大きく、「595」ファミリーは依然として強い人気だそうで、引き続き限定車の導入を行っていくそうだ。ちなみに「695 Anno del Toro」については限定20台に対して639件、「595 Monster Energy Yamaha」については、限定60台に対し544件の応募があった。

 

 

シトロエンはBEV、アルファロメオはPHEVを投入

 

シトロエンについては、2021年は1989年の日本市場参入以来、年間販売台数が5894台(対前年比17.2%)と最高の年となった。特に1月から7月まで7カ月連続で月間販売台数の過去最高を更新したそうだ。その牽引役となったのが全く新しいタイプのレジャービークル「ベルランゴ」で、このところのアウトドアブームで人気を博し、2715台とシトロエン全体の46%を占めた。2022年は日本でブランド初のBEV「E-C4」を投入するほか、フラッグシップモデルである「C5 X」がデビューする。

 

アルファロメオは2021年の販売台数が2341台と対前年比39.8%の大幅増だった。ヘグストロム社長によると、新装備を採用したヴェローチェ・グレードの「ジュリア」「ステルヴィオ」が販売を牽引し、アルファロメオの販売はコロナ前のレベルにまで回復したという。

 

 

「なんていっても昨年のスマッシュヒットはジュリアGTAとGTAmだ。その反響はすさまじく、わずか2週間の受注期間中に日本が世界でトップの84台の予約注文が入った」とヘグストロム社長は喜んでいた。

 

2022年はアルファロメオとして初の小型SUV「トナーレ」が投入される予定で、しかも初のプラグインハイブリッド(PHEV)ということで注目されており、ヘグストロム社長も「そこからアルファロメオの電動化が始まる」と鼻息も荒かった。

 

DSオートモビルは、2018年に日本で「DS 7 クロスバック」を発売して以来、地道に販売を伸ばしてきたが、2022年は対前年比2.1%と微減の889台だった。ただ、フレンチブラントとして最も高い電動化比率を誇り、クロスバックE-TENSE 4×4がPHEV比率16%、クロスバック E-TENSEがBEV比率21%となっている。2022年については、DSオートモビルにとって大事な1年になるそうで、フラッグシップサルーン「DS 9」の投入やCセグメントSUV「DS 4」の投入があるそうだ。

 

いずれにしても、2022年はステランティス ジャパンとして生まれ変わる重要な年で、どのような形でスケールメリットを生かし、相乗効果を出せるか注目される。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。