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2024年2月26日【テクノロジー】

FIAT、「パンダ」の新解釈コンセプトで世界へ挑む

坂上 賢治

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ステランティス傘下で、フィアット(プランド)の成長を担うオリヴィエ・フランソワCEO 兼 ステランティスグローバルCMOは2月25日( イタリア・ジェノヴァ発 )、未来を見据えたブランド戦略のファーストステップを明らかにした。( 坂上 賢治 )

 

新たな展開の先陣を切るクルマづくりは、かつての「パンダ」を現代的に解釈して派生させたコンセプトモデル達で、その実モデルの発表は、早くも今年7月。その後は3年間に亘って毎年、新しいモデルを投入していく計画だという。

 

また自社ブランドの強みを活かすべく、特定の地域を選んで進出することを止め、新たなコンセプトモデル達は、欧州・米国・アジアを問わず、世界的な自動車市場全域へ再挑戦していくグローバルカーになると説明した。

 

従って、それらの車体へ搭載予定とされるパワーユニットは、新型モデルのユーザーが世界中のどこに住んでいても、その走りとテイストを心ゆくまで愉しんで貰えるよう、電動モーター、ハイブリッド、ICEのいずれのジャンルに於いても、未来のゼロエミッション化を視野に多様な動力源を提供していくとした。

このような新しいコンセプトモデルは、世界中のストリートを征服できるよう、ブランド価値をフルラインで構築する考え方で設計され、今後の市場投入計画を着実に消化していく。

 

それゆえフィアットは、ステランティスグループから国際プラットフォームの技術提供を受けた上で、そのプラットフォーム上にイタリアならではの美しさと、シンプルさを包み込んだレシピを盛り込み、次世代モビリティへと仕立て上げると畳み掛けている。ちなみに、そのスタイリングの妙は、以下の5モデルを介して端的に表現された。

 

 

まずCity Carコンセプトは、現在のパンダよりも大柄な「メガパンダ」のようであるが、そのスタイリングの源流となったのは、屋上にテストトラックがあるトリノのリンゴットビルだ。

 

今回、デザイナーは、新たなデザイン言語を造り出すため、構造的な軽さ、スペースの最適化、明るさなど、リンゴットビルが示す幾つかの機能からインスピレーションを得たとしている。

 

併せて、再生プラスチックや竹織物など、持続可能な素材使用にも重点を置いた。電源ケーブルもその方針沿って「自動巻き取りケーブル」として不要な部品の要素を、そぎ落としてプラグの抜き差しを単純化かつ容易にした。

 

 

2番目に続いたピックアップコンセプトは、フィァット自身が市場優位性のあるブラジル市場で最も売れているスタイリングのひとつになるだろうという。しかし同時にフィアットは、今後、このタイプのスタイリングがヨーロッパを含む世界レベルで成功する可能性を見いだしているともいう。

 

そんなフィアットの新ピックアップコンセプトは、確かな機能性の中に楽しみを取り入れている。この車両は、ピックアップのコンセプトとLCV( Light Commercial Vehicle )らしさが示す機能性、SUVの快適性を、世界の都市環境に適したサイズで融合させた。

 

つまりアウトドア活動は、単なる趣味ではないとの解釈だ。このピックアップは、クルマを持つユーザーのライフスタイル感や生き方を最大限に主張するために設計された。

 

 

3番目のファストバックコンセプトは当初、中東で人気を博したタイプで、そうした流れは、ラテンアメリカ、アフリカ、更には欧州でも一定の地位を確立するを考えているという。

 

勿論、このコンセプトモデルも、共通して同じモジュール式プラットフォーム上で作られており、それでも他のモデルとは異なるスポーティな雰囲気を醸し出せる点が大きな特徴といえる。またこうしたダイナミックなシルエットは、空力特性も高められるから既存のSUVスタイリングよりも消費電力が抑えられる。

 

 

一方、4番目のSUVコンセプトは、「ギガパンダ」を思わせる広々としたファミリー 向けSUVとなる。室内へのアクセスがし易く、家族の移動ニーズに重点を置いたもの。このSUVコンセプトは、安全性、多用途性、堅牢性の面で究極のファミリーニーズを満たすモデルとなる。

 

 

最後に提案されたCamperコンセプトは、パンダにドルチェヴィータスタイルを取り入れ、クルマと自然を再び結びつける究極の何でもできる乗り物として表現したもの。このコンセプトは、80年代のパンダの「機能性」に倣い、信頼できる相棒としての役割を備えた多目的さを強く打ち出したものとなっている。

 

 

これらのスタイリングコンセプトについてフィアットのオリヴィエ・フランソワCEOは、「フィアットは昨年だけで130万台の車を販売し、欧州のみならず、ラテンアメリカ、米国、東アジアなど、世界の様々な地域でマーケットリーダーであり続けているブランドです。

 

そんな私たちは、今やグローバル市場からの厳しい挑戦を受けており、次なるステップでは、我々独自のローカルな立ち位置から市場を開拓していくという戦略づくりを超えて、可能な限り早い段階で、真のグローバルモデルを構築することを目指せねばならないのです。

 

そんな我々の次なる新型車づくりの共通コンセプトは、〝機能性は、楽しさなしには決して存在しない〟ということ。そして〝地域やニーズに応えた新型モデルを単一のグローバルプラットフォームをベースに構築していくこと〟にあります。

 

そんなグローバルモデルであれば、地域を選ぶことなく生産できるため、世界中のお客様へ、より素早くご提供することができます(この共通プラットフォームとは現在、フィアット600、アバルト600、ジープ・アベンジャーなどで起用されているCMPプラットフォームを想定しているものと思われる)。

 

独自のマルチエネルギー プラットフォームにより、次世代フィアットでは、電気、ハイブリッド、ICEを問わない多様なパワートレインを搭載できるようになります。

 

加えて新しいファミリーは、モジュール式のインテリアづくりができて、ユニークな外観も造り易い、シンプルなクルマづくりを目指しており、今後は持続可能で、かつ手頃な価格の車両を生産するための方策づくりに積極的に取り組んでいます。

 

それは今回ご提案したファストバックのコンセプトモデルのように、イタリアの創意工夫に内在する〝モジュール性〟に着目したものも、その一例といえるでしょう。

 

具体的には、スタイリング大きくが異なっていても、インテリアなどで最大80%の共通部品を使用することにより、より効率的な製造が実現され、手頃な価格の維持だけでなく、そこに込められたシンプルさが、我々の伝統に裏打ちされた独自性となって現れてくるからです」と話している。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。