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2020年6月24日【エレクトロニクス器機】

独ダイムラー、エヌビディアと次世代の自動運転車開発へ

坂上 賢治

 

 先の6月19日(欧州時間)、BMWとの自動運転車開発を一旦保留すると発表したダイムラーAGは4日後の6月23日、米エヌビディアと車載コンピュータの研究とAIクラウドの構築で協業すると発表した。(坂上 賢治)

 

 

同日、ダイムラーAG取締役会会長兼メルセデス・ベンツ・カーズのオラ・ケレニウス(Ola Kallenius)統括と、エヌビディア(NVIDIA)創業者のジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOは、米国(太平洋標準時の10時30分)と独国(欧州中央時の19時30分)をオンラインで結ぶオンライン記者発表を実施。

 

両社の協業を通して来る2024年から、エヌビディア製・最新SoC(System on Chip/ワンチップ上に応用目的の機能も集積した集積回路)「Drive AGX Orin(ドライブ・AGX・オーリン/以下、オーリン)」を搭載した次世代のメルセデス・ベンツがリアル環境で走り出すことになると宣言した。

 

 

そんな次世代車で実現する機能のひとつは、ここのところ永年期待を集め続けている完全自動運転機能であり、さらにその他の搭載機能についてもオンラインアップデートで機能向上が果たせるようになるという。

 

 エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは「数多のイノベーションを100年を超えて蓄積し続けて来たダイムラー社の歴史と、短期間で飛躍を繰り返してきた当社の革新的なコンピューティング技術。その組み合わせは両社にとって完璧なパートナー関係になると信じています。

 

オラ氏とダイムラー社の技術チームとの広範な議論から、未来の自動車に関するビジョンを我々は互いに共有できていることは明らかです。これから我々は自動車の利用体験で革命を起こします。

 

 

具体的には、今後登場するNVIDIA DRIVE SYSTEM(エヌビディア・ドライブシステム、以下、エヌビディア・ドライブ)を搭載したメルセデス・ベンツには、当社のAI・ソフトウェアエンジニアの専門家チームが付きっ切りで携わり、車両の生涯を通じて継続的に性能・機能の改良・強化を施していきます」と語り掛けた。

 

 一方、ダイムラーAGのオラ・ケレニウ会長は「エヌビディアとの協力関係を拡大できることを心より嬉しく思います。ジェンスンと私は、互いの事業上の目標を理解し合っており、私たちは次世代自動車に搭載すべきコンピューティング・アーキテクチャの可能性を話し合うために多くの時間を費やしてきました。

 

今回、合意に至った新プラットフォーム環境は、未来のメルセデス・ベンツ車にとってベストな選択肢です。 というのはエヌビディアのAIコンピューティングアーキテクチャが自動運転車実現への一番の近道だからです。

 

今後、車両のアップグレードや新機能の搭載はクラウド環境から提供され、その都度、安全性が高められ、年を追う毎にかつて購入した車両の付加価値が向上し続けます。これによりメルセデス・ベンツを所有することに対してユーザーの顧客満足度はさらに高まっていくでしょう」と述べた。

 

 

 そんな新たなメルセデス・ベンツに搭載されるオーリンは、Drive AGX Xavierの後継チップで170億個のトランジスタを搭載。90億個のトランジスタを搭載するXavierの2倍のサイズでありながら電力効率はXavierの3倍、性能では約7倍(INT8データで200TOPS)の実力を持っている。

 

エヌビディアの現行アーキテクチャ「Volta(ボルタ)」から引き継がれたAI性能はさらに磨かれ、同社のA100GPUを8連装したスーパーコンピュータ「DGX A100」に匹敵する性能を持っているという。またオーリンはTOPS(演算性能)のみならず、自動運転車の内部で実行しなければならない複雑で大量のアルゴリズムを処理するために設計されている。

 

 

オーリンには、自動運転レベル5(2000TOPS、800W)から、レベル2+向けオーリン(200TOPS、45W)、ADAS向けのオーリン(10TOPS、5W)までがラインアップされている。そのなかで今回の協業では、最もハイエンドな200TOPS版オーリンを採用。これを使い自動運転プラットフォーム「エヌビディア・ドライブ」ベースで自動運転環境を構築する流れとなる。

 

もとよりエヌビディアの自動運転機能は、車両搭載のハードウエアに組み合わせる形でソフトウェア環境が作られていることから、メルセデス・ベンツの利用体験に革命を巻き起こすことになる。というのはOTA(Over the Air/オーバー・ザ・エア)を介したサブスクリプションサービスの追加購入のみならず、車両の耐久寿命が許す限り〝自動バレーパーキング〟などの自動運転の付帯機能が継続的にアップデートされるようになるからだと結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域の取材活動を経て同社出版局へ。コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に環境&リサイクル紙、車両ケア&整備ビジネス専門誌等の創刊誌編集長を歴任。独立後は一般誌、Web媒体上でジャーナリスト活動を重ね30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。