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2020年5月26日【トピックス】

いすゞ自動車、2020年3月期連結決算

間宮 潔

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写真左から、南真介取締役常務執行役員・経営業務部門、企画・財務部門統括。片山正則代表取締役社長。中俣直人執行役員・企画・財務部門統括代行、グループCFO

 

いすゞの2021年3月期予想/売上高1兆7000億円、営業利益500億円に

 

 いすゞ自動車は5月26日、2020年3月期連結決算説明会を電話会議方式で開いた。連結売上高は前期比3.2%減の2兆799億円、営業利益は同20.5%減の1406億円、当期純利益は同28.4%減の812億円と「減収減益」とした。(佃モビリティ総研・間宮潔)

 

 過去最高の収益を計上した前期と比べると様変わりの業績となったが、世界的な景気減速から期後半、トラック市場がスローダウン傾向を強める中、いすゞ車は「踏みとどまった」と総括、新型コロナウイルスによる影響は軽微とした。

 

 2020年3月期のピックアップトラックを含めたいすゞ車のグローバル販売台数は前期比7.4%減の60万台。うち国内CV(商用車)販売台数は同2.4%減の8万1千台、海外CV販売台数が同6.6%減の20万8千台とし、タイ事業を中心としたLCV(ピックアップトラック)販売台数は同9.2%減の31万1千台とした。

 

 片山正則社長は「一時落していた国内トラック・シェアを回復させた」、またタイ事業に関しても「昨年7月から新型ピックアップトラックのフルモデルチェンジについて順調に立ち上げることができた」と述べた。
 加えて新興国市場に関し、片山社長は「数年前の勢いを失っているが、中期計画で定めたベーシックな取り組みは計画通り実行できた」と振り返った。

 

 2021年3月期連結決算の業績予想については、売上高を前期比18.3%減の1兆7千億円、営業利益を同64.4%減の500億円に設定、グローバル販売台数を同20.6%減の47万6千台とした。

 

 片山社長は「新型コロナウイルスの影響を完全に見通せないなか、われわれの主要市場で、ある程度見通しを立てることができた」と補足した。
 ただ「第2波、第3波のコロナ渦の話もあり、そうなれば違う世界」と指摘、現時点で経常利益、当期利益の見通しを見送ったほか、今期配当を未定とした。

 

アフター・コロナをにらんだ新中期経営計画の策定に着手

 

 21年3月期は、いすゞ自動車が現在推進している中期3カ年計画の最終年度に当たるが、「その前提条件がコロナの影響で大きく乖離した」。
 このため来年早々にも新中期経営計画を策定するとともに、必要な手立てを今期から展開する。「アフター・コロナの事業環境下で、今後のいすゞが進むべき経営の方向性をぴしゃりと決める」と片山社長は決意を述べた。

 

 今後の生活様式の変化、社会構造の変化をとらえた策定作業となる。片山社長は、「われわれの働き方も含め社会ニーズの変化に応える。社会インフラとしての物流の大切さは正に重要になっている」と指摘した。

 

 新型コロナウイルスによる事業活動の制約は長期化するものとみる一方、今年度中のどこかで需要回復は始まると想定。「関係者と従業員の安全」と「運ぶ」を支える企業としての社会的責任を両立させる。

 

 国内CVの動向は、第1四半期で前期の90%水準で動き、第2四半期で60%まで落ち、第3四半期で80%、第4四半期で90%に回復するシナリオを描いている。
 その結果、いすゞ車の国内販売は前期比16%減の6万8千台を想定、全需の落ち込み(18%減)に対してシェアアップを織り込んだ。

 

 海外CVは第1四半期を最悪期にして、第2四半期から徐々に回復するも、後半期は90%程度の水準にとどまる。地域別の数値は非公表だが、海外CV合計は前期比19.6%減の16万7千台の予測とした。

 

 タイ国内のLCVは、第2四半期まで低迷が続くとみるが、第3四半期以降回復し、第4四半期には前年水準に到達すると予想。とはいえ前期比33.7%減の10万8千台。輸出LCVは海外CVと同様の動きを想定、同10.9%減の13万3千台とした。

 

 昨年12月18日に覚書を締結したボルボ社との商用車分野での協業検討に関して、当初、今年7、8月の契約締結を目指していたが、新型コロナウイルスの影響で作業に遅れていることを明らかにした。

 

 両者は自動運転やEVなど先進技術分野で投資を分担する。大枠で固まっているが、UDトラックスをいすゞの連結子会社化する作業が遅れ気味となっている。
 当初予定では、今年末の子会社化を目標としていたが、コロナの影響がはっきりした時点で時期などを再度明らかにする考えだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。