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2024年4月17日【MaaS】

自工会、2023年度乗用車市場動向調査資料を公開

坂上 賢治

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一般社団法人日本自動車工業会( JAMA / 会長:片山 正則 )は4月17日、自らが2023年度に実施した乗用車市場動向調査を取りまとめた。この調査は、単身世帯を含む全国の一般世帯に於ける「乗用車の保有実態」、「次世代技術への認識調査」、「クルマに係る世代間の認識」、「今後の購入意向」などを隔年毎に調査し、需要の質的変化の見通しに役立てようとするもの。

 

今年度は、これまで同様に保有状況・使用実態・今後の購入意向等と共に次世代自動車・先進安全技術・次世代技術・高齢層・若年層世代特性把握について時系列での動きを捉えている。加えて今回は、トピックとして車の使用実態・ニーズの変化、購入プロセスの変化、インフレによる乗用車市場への影響について注目したという。

 

その調査概要は以下の通り

 

I.時系列調査結果の主な特徴

 

世帯毎での乗用車市場動向
今調査による乗用車の世帯保有率は77.6%となった。また乗用車の複数保有率は35.7%。地方圏の小都市以下並びに、家族成熟期では、世帯保有率・複数保有率ともに高い状況を維持している。従って2年前と比較した保有台数は、殆どの世帯が変化がなかったとしている。

 

世帯全体から抽出結果では、軽乗用車の保有が4割弱という形態が最も高く、そのなかでも交通環境の違いもあって保有比率の高さは首都圏より地方圏で高い。更に詳細では、ハイブリッド等の次世代エンジンタイプが約2割を占め、この増加傾向が継続しているとした。

 

そうした保有率については、逆に非保有世帯の割合が首都圏中心部、低年収層、独身期、高齢期で高く、非保有の理由は維持費負担が重しとなっているのまが上位を占めた。

 

また、これら非保有世帯の今後の購入意向は今後も低水準が続く見込みであるという。但し、それでも独身期・家族形成期での購入意向、潜在的保有意向は高いと自工会では結論付けている。

 

乗用車ユーザーの特性と、購入・使用状況
乗用車ユーザーの属性並びに内訳については、主運転の女性比率並びに、高齢比率が上昇傾向にあるという。

 

保有乗用車の平均月間維持費、維持費全体への負担感は17年度より上昇傾向にありこれは今後も継続していく見込み。特に「燃料代」への負担割合は、21年度より大幅に増加している。そうした理由からか利用頻度や走行距離は21年度より減少した。

 

購入状況では、同タイプ・同クラスからの買い替えが中心となっている。保有期間は平均7.2年で、10年超が2割強を占める。新車の平均保有期間は7.7年で、中古車に比べると1.5年長い。

 

購入の切っ掛けは、前保有車の経年変化が上位。購入したい車への考え方では「燃費のよい車」「経済性に優れた車」が21年度より増加した。平均購入価格は264万円と17年度より上昇傾向が続いているとした。

 

今後の保有・購入動向については、減車意向が増車意向を上回る傾向が続いている。減車意向は低年収層、高齢層で高く、主に身体的な都合及び、経済面が主要因となっている。

 

また、経済的な要因として「ガソリン・駐車場代」は21年度より大きく増加。
同クラス・同サイズ意向が高い傾向が続いている。ダウンサイズ意向は、21年度より微減であるという。次世代動力源に係る意志・意向では、5割弱の保有車では大きな変動はないものの、大・中型車の保有では電気意向が増加した。

 

II.トピック調査結果の主な特徴

 

次世代自動車への意識
先の設問に続き、次世代自動車の中で購入検討順位1位に挙げた車両タイプは「ハイブリッド車(HV)」が最も高いものの、「電気自動車(EV)」を購入検討順位で1位とした割合は継続的に上昇中という。

 

但し、それらには懸念点があり、それは引き続き「車両価格」「航続距離」「充電時間」だ。EVに係る「補助金制度」の認知は6割強。内容認知は1割強に留まる。EV購入の補助金なついては「申請の分かり難さ」が利用にあたっての懸念点となっているようだと導いた。

 

EVに係る設備については調査を踏まえると、自宅の充電器設置は殆どなく、非設置である理由は「設置費用」と「設置スペース」となっている。従って充電器設置希望場所としては「ガソリンスタンド」「コンビニエンスストア」「大型商業施設」「高速道路のSA・PA」となっている。

 

次世代技術に対する意識
運転を続ける上での不安を解消するための運転支援技術の装着意向が高く、特に高齢になるほど高くなる傾向という。

 

自動運転車の関心度と「レベル3( 条件付運転自動化 )以上」を望む割合の増加は引き続き継続傾向。搭載機能に係る技術面の不安は依然としてあるものの、安全性が高まることには期待を寄せていることが分かるとした。

 

次世代技術の理由については有料でも使いたいとしており、次世代技術に係る利用意向の高いサービス・機能は、「盗難防止/盗難時追跡サービス」「ナビ地図データの自動更新」「エアバック作動時の緊急通報サービス」となっている。

 

高齢層に係る利用状況等の分析

また高齢運転者を対象とした買い替え中止予定や、自主返納制度利用意向は減少しているとしており、逆に捉えると運転中止年齢は高齢化しているといえる。そもそも高齢者ドライバーの多くは、身体的衰えを「先進安全技術」でカバーし、運転を継続したいと考えているとした。

 

若年層(非保有者)に係る意識・動向分析

若年層の車両非保有者の車への関心度、購入意向は共に21年度より減少した。車の持ち方では、公共交通機関で十分という意見が半数程度を占める。

 

自分専用車の保有傾向は2割弱。また、若年層の車非保有者のうち、SDGs・CN関心層は車への関心・購入意向が高く、自動車サービスや自動運転車への受容性が高い点が若年層車保有者と類似しているとした。

 

車の使用実態・ニーズの変化についての調査では、自家用車の利用が2年前と比べ、約4割が増加したと回答。特に地方圏小都市で増加したという。一方、首都圏中心部では「所有している自転車」の利用が増加。2年前と比べ収入、暮らし向きのゆとり、遠出の外出は2割超が減少している。今後1年も同傾向が見込まれる。

 

なかでも車両の非保有者でも特に高齢期では収入、長距離の移動の減少見込みが高い。一方で独身期や家族形成期では遠出の外出での自家用車利用で増加の兆しが見られるとしている。移動手段以外(移動目的では無い車両の使い方)の今後の車の利用ニーズでは「災害時の避難場所・充電」が高く、居住性を高める装備や電源・Wi-Fiが求められているとしている。

 

車両購入、車両登録時に於ける購入プロセスの変化

購入時、登録車ユーザーの内訳では、軽自動車ユーザーに比べ店舗訪問率が高い。購入時の情報源は「販売店・ディーラー」「メーカー公式サイト」が多く、重視度も高い。対してインターネット販売の利用意向は、全体で2割程度はある。また若い層や車両価格が高い層ではそうした手段を利用とたい意向が高い。

 

インフレによる乗用車市場への影響

最後にインフレによる乗用車市場への影響として、「車関連出費」を減らした人が1割程度いる。なお「車の購入中止」「保有期間の長期化」の理由としての大きな要因は、景気の悪化、燃料価格高騰が増加がある。

 

車両価格高騰は購入者の約8割が認知しており、当初予算を増加して対応しているとした。但し10万円以上予算を上回った場合、4割の人はオプション・グレードや支払方法に影響したとしている。

 

2023年度乗用車市場動向調査の概要( 調査設計 )
調査地域 :全国
調査対象 :単身世帯を含む一般世帯
対象回答者
 - 自動車保有世帯では直近購入車の主運転者
 - 非保有世帯では運転免許保有者または家計の中心者
標本抽出方法 :層化二段抽出法
調査方法:訪問面接、留置併用・WEB回答併用
調査実施時期 :2023年8月17日~10月6日
※トピック「若年層分析」「消費行動」にあたって、WEB調査を追加実施した。

 

更により詳細な動向調査資料は、以上URLリンクからダウンロードできる( 但し、DLの際は、資料サイズの大きさに充分留意されたい )。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。