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2022年11月7日【テクノロジー】

ジャガー・ランドローバー、米ウルフスピードと戦略締結へ

坂上 賢治

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積極的な技術連携により2039年迄のカーボン・ネット・ゼロを目指す

 

ジャガー・ランドローバージャパンは11月7日、英国本社がワイドバンドギャップ半導体開発の米ウルフスピード(Wolfspeed, Inc.、本社:リサーチトライアングルパーク、CEO:グレッグ・A・ロー)と戦略的パートナーシップを結んだ事を発表した。( 坂上 賢治 )

 

 

このウルフスピードは、 ノースカロライナ州立大学の卒業生が中心となって1987年7月に設立された研究開発企業だ。彼らは、実験室の現場でシリコン結晶を成長させる方法を独自に考案。半導体と照明の両方で商業利用するべくSiC(炭化ケイ素/シリコンカーバイド)製造を目的とした新会社を立ち上げた。

 

こうした経緯のため、ウルフスピードは現在もSiCとGaN(窒化ガリウム)デバイスに特化しており、主に輸送、電源、パワー インバーター、ワイヤレス システムなどの電力分野、無線周波数アプリケーション分野に焦点を当てた材料を開発・製造している。

 

 

今回、英ジャガー・ランドローバー(JLR/Jaguar Land Rover)本社が、米国のニュージャージー州マーワ(10月31日)でウルフスピードと戦略的パートナーシップを締結した理由は、ウルフスピードから次世代電気自動車向けのSiC半導体の供給を受ける事で、BEV搭載のパワートレインの効率性向上と航続距離の飛躍的な伸長を実現するためのもの。

 

元々JLRは、自社が掲げる「REIMAGINE(リーイマジン/新創造)」戦略に基づき、来たる2039年迄に自社のサプライチェーン・製品・サービス・オペレーション全体でカーボン・ネット・ゼロ(温室効果ガス排出量ゼロ)を目指しており、今もなお車両の電動化転換を精力的に推し進めている。

 

まずは2024年に新レンジローバーを、更には新世代ジャガーの発表へ

 

またそもそもウルフスピードとは、予てより共に手を携えFIAフォーミュラE世界選手権に「ジャガーTCSレーシングチーム」として挑戦。開発されたレーシングマシンは既に数度の優勝を手にしてきたという経緯もある。

 

 

こえした成果を踏まえ今提携では、ウルフスピードのSiC技術を車載電動モーターへの電力伝送を担うインバーター装置へ注入。まずは新たなレンジローバーを2024年に送り出し、更にその翌年には新しいジャガーのBEVモデルの発表を繰り出していく予定だ。

 

なお同提携により、JLRはウルフスピードによる「Assurance of Supply ProgramTM(供給保証プログラム)」に参加する事になり、この結果、将来のサプライチェーンの透明性と管理能力をより強固にした格好となる。

 

 

より具体的には、ウルフスピード側がJLR車に係る400Vから800Vに至る電力供給技術を保証。2022年4月にウルフスピードがニューヨーク州マーシーに設けた自社の世界最大の200mm SiC製造拠点(モホークバレー工場)でに於いて、新SiCパワーデバイスが製造される予定となっている。

 

 

ちなみにこうしたテクノロジー企業との技術提携は、2022年2月のNVIDIA(自動運転システムの研究開発)との連携に次ぐ取り組みであり、英JLRでは、こうした連携こそが自社の未来を託す新型モデルを市場へ送り出すための戦略の一環だと述べている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。