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2023年8月21日【イベント】

ロータス、米イベント「ザ・クエイル」でタイプ66を発表

坂上 賢治

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ロータス・カーズ(Lotus Cars Ltd.)は8月20日(米国カリフォルニア州カーメル)、クウェイルロッジ&ゴルフクラブに於いて、エキゾチックなトラックカー「Type66(タイプ66)」を発表した。( 坂上 賢治 )

 

発表の地は、モントレー・カー・ウィークの一環で行われるモータースポーツファンの集い〝The Quail, A Motorsport Gathering(ザ・クエイル モータースポーツ・ギャザリング/通称 The Quail)〟が舞台。

 

 

サンタ・ルシア山脈に囲まれたゴルフコースの緑豊かな環境下で、ガーデンキッチンが設けられた芝生の上で、希にしか見られないスペシャル&ヴィンテージスポーツカーが並み居るなか、その姿を明らかにした。更にペブルビーチのコンクール・デレガンスでも披露されている。

 

そうした場面でタイプ66を発表したのは、ロータス創設者コーリン・チャップマンの息子クライブ・チャップマン氏だ。

 

このタイプ66は、クライブ・チャップマン氏の引き出しなかで秘蔵されていた図面を元に、現在のロータス・カーズがファン達に向けて〝失われたロータス〟を再発見して欲しいという想いで復活させたワールドプレミアカーとなる。

 

 

なおこのタイプ66は、ロータスの75 周年記念の年に複数台の車両生産は行われるが、その数は僅か10台のみ。1台あたりの価格は100万ポンドを超える(約1億8500万円と、ざっくり2億円に迫るプライス)予定だ。

 

しかしその性能は、最新鋭の設計・製造プロセスを経て生み出されることから、現代のGT3レースカーを凌駕するパフォーマンスを発揮するという。

 

そのタイプ66の生い立ちは、コーリン・チャップマンが、Can-Amシリーズ(Canadian-American Challenge Cup/通称カンナム)の商業的チャンスに注目した1970年から80年代に掛けてのこと。カンナムとは、かつてカナダとアメリカで行われていたスポーツレーシングカーによるプロフェッショナルドライバーズ選手権の年間シリーズ(1987年でシリーズ戦い終了)である。

 

 

当初(第一期)の参加車両は、FIA規定による2座席ロードスター型のレーシングカーをSCCA(Sport Car Club of America)独自の解釈したレギュレーションで行われた。

 

また更に後期の第二期からはフォーミュラ5000に、フェンダー一体のボディカウルを被せたフォーミュラ・リブレが許容されるなど、その自由さが魅力のカテゴリーで、賞金総額世界一の触れ込みもあって多くのトップドライバーも参画した。

 

このレースカテゴリーに着目したロータスは、車両設計者のジェフ・フェリス氏に、ロータス独自の設計思想を投入した場合、どのようなマシンが出来上がるかを模索。これが当時の〝タイプ66プロジェクト〟始動の号砲となった。

 

 

当時のチャップマンが、カンナムに注目した理由のひとつは、フォーミュラ1に力を注ぐ当該チームが、このシリーズのレギュレーションの自由さに着目したことが大きかった。

 

しかし主力レースであるF1に注力するなか、プロジェクトは図面上やスケールモデルの範疇を超えることなく静かにフェードアウトする。そこから53年後の今日、当時のビジョンが復活し、21世紀のレーシングモデルとして再登場した。

 

但しその製造数は限られており、先の通り僅か10台のみ。この数字は1970年代以降に参戦したであろうカンナムのシリーズ戦に準規した数字だとしている。

 

車両自体は、70年代初期にロータスがレーシングシーンに出走した車体の赤・白・金の色を反映したカラーリングで、当初は栄華を極めたロータス・タイプ72・F1カーと並んでタイプ66を飾ることも考えられたという。

 

 

車両の出展にあたりロータス アドバンスト パフォーマンスでエグゼクティブ・ディレクターを務めるサイモン・レーン氏は、「タイプ66は過去と現在を完璧に融合させています。ステアリングを握るドライバーを50年以上前のレーシングシーンにタイムスリップさせるだけでなく、21世紀のクルマに相応しいパフォーマンスと安全性が保証されています。

 

 

これは本当にユニークなプロジェクトであり、ロータスの75周年記念の年にロータスから世界中のファンと少数の熱狂的なファンへ向けた贈り物です。

 

また車体のグラフィック表現こそ70年代当時そのものですが、タイプ66のエンジニアリング的基盤は、今日の高度なレーシングシーンに於いても世界最高峰を目指したものになっています。

 

なおこのタイプ66の復興プロジェクトで重要な役割を果たしたのは、チーム・ロータス・クラシックのマネージング ディレクターであり、コーリン・チャップマンの息子であるクライブ・チャップマン氏です。

 

クライブは、長年保有していた図面があったからこそ、ロータスのデザインチームはこの車に命を吹き込むことができました」と語った。

 

 

そのクライブ・チャップマン氏は、「この車は、同じ時代に開発され、最も成功したF1シャーシであるロータス タイプ72と多くの革新的な特徴を共有しています。

 

例えばフロントドラッグを軽減し、フロントダウンフォースを増加させ、その空気の流れを効果的に導くために役立つサイドマウントラジエーターなども含まれています。また車体後部には、当時のル・マン耐久車を彷彿とさせる特徴的なテールセクションもも垣間見ることができます。

 

これらの機能により、当時のライバルと比較してダウンフォースが大幅に向上していたことは明白で、それにより高速安定性が向上しレーシングトラック上のラップタイムは確実に向上していたことでしょう。その勇姿は私たちが今、目にしているタイプ66の走りと同じく、とても誇らしい気持ちだったことでしょう。

 

だから、もしこのタイプ66が70年代に製造されていたら、当時のロータスF1のレジェンド、エマーソン・フィッティパルディ選手がこのタイプ66を運転していた可能性が高いかもしれません」と述べ、ザ・クエイルのロータス・スタンドの主賓として招かれた類い希なるブラジル人を紹介した。

 

 

タイプ66は、設計、エンジニアリング、製造に係る半世紀以上に亘る技術進歩の恩恵を受け、ロータスのデザインディレクターを務めるラッセル・カー氏が率いるチームの手を経て、クライブ チャップマンから提供された1/4および 1/10スケールの図面をデジタル化。更に最先端のコンピューターソフトウェアを介して再現された。

 

もちろんその車両設計のコンセプトは、コリン・チャップマンが手にした初期のオリジナルスケッチに忠実あり、抗力を極力低減し、リアウイングへの空気の流れを改善するコックピットエンクロージャーを特徴としている。

 

 

従ってフロントウイングは、車の前部からリアウイングの下に空気を送り込み、全速力で車両の総重量を超えるダウンフォースを生成されるよう設計されている。空気が車両の周囲ではなく車両内を通過するこの多孔性の感覚は、今日でもロータス車両デザインの特徴的な要素であり、スポーツカーのエミラ、SUV のエレトレ、ハイパーカーのエヴァイヤに見られる技術である。

 

つまり現代の安全基準に融合させ、オリジナルデザインを保ったまま、そのディテールが繊細に再解釈された。それゆえドア車両には、現代的なコクピットデザイン、シーケンシャルトランスミッション、および失速防止システムなども含まれ、それらの全てがフルカーボンファイバーのボディシェルに収められている。

 

 

そうした技術的解釈について先のロータスのデザインディレクターを務めるラッセル・カー氏は、「このようなユニークなプロジェクト、そしてコーリン・チャップマンが個人的に関わったプロジェクトを、現代に於いて完了できたことを非常に誇りに思っています。

 

実際には正直、過去のリマスターには極端な繊細さが求められます。しかし、それでも、これは過去のノスタルジックに浸っただけの再版や修復ではなく、現代に復活した全く新しいロータスの姿であり、私たちの過去の栄光が、私たちの未来に反映され続けるという裏打ちになったと考えています。

 

例えば今回、投入された空気力学は、ロータスの75年間に亘るDNA の一部であり、それはタイプ66も例外ではありません。

 

このプログラムには1,000時間以上の数値流体力学 (CFD) に係る作業が費やされ、その結果、時速150マイルでは実に800kgを超えるダウンフォースが得られています。

 

これは、元のアンダーボディ設計で対応できる量を遥かに超えており、これがドライバーの安全性と車両のパフォーマンスの両方を向上させ、ラップタイムを短縮させます。その裏打ちとして、ラグナセカ、シルバーストーン、富士、スパなど、世界中のレーストラックで車両がどのように機能するかの確認も行われました。

 

 

現代のエンジニアリングと創意工夫のお陰で、タイプ66は現代のGT3レースカーのダイナミックなパフォーマンスとラップタイムに匹敵するようになりました。ラグーナ・セカなどの一部のサーキットでは、シミュレーターの作業によると実際にはもっと速い可能性があることが示唆されています。

 

そんなタイプ66の心臓部には、当時を代表するV8プッシュロッドエンジンが搭載されています。特注コンポーネントにはアルミニウム鍛造クランク、ロッド、ピストンが含まれており、7,400rpm* で 746 Nm 以上のトルクを生成。そのパワーユニットは、最適なハンドリングを実現するためにミッドマウントされ、8,800rpmで830bhp以上を発生するように調整されました。

 

 

カンナムにインスピレーションを得た象徴的なトランペット型エアインテークがエンジン上部の中心にあり、これらは空気の取り込みを滑らかにして層流を作り出すだけでなく、体積効率も大幅に向上させ、より大きな燃焼とより大きな出力を可能にします。

 

シャーシも当時を代表するもので、押し出しアルミニウムセクション、接着ジョイント、アルミニウムハニカムパネルが組み付けられ、トラック上でドライバーが最大限のパフォーマンスを発揮できるように、タイプ66はEPASSモータースポーツ パワー・ステアリングコラム、リバース付きシーケンシャルレーシングギアボックス、レースユース専用のABSブレーキ システム、失速防止マルチプレート・クラッチ、固定ギアなどの最新の快適性を備えています」と説明を結んだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。