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2020年1月15日【トピックス】

マツダ、新世代エンジン「スカイアクティブ-X」を投入へ

松下次男

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 マツダが新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)-X」の本格投入を開始した。第2世代スカイアクティブ技術搭載の商品群にシリーズ化し、ガソリン、ディーゼルそれぞれのエンジンの良さを併せ持つ環境に優しい第3のエンジンとしてアピールする。実際に試乗してみると「スムーズな加速性能。応答性の良さ。内燃機関とは思えないほどの静粛性を実感し、従来のエンジと歴然とした違い」が分かった。(佃モビリティ総研・松下 次男)

 

 

電動化でサポートするマイルドハイブリッド「M Hybrid」と組み合わせて実現

 

 マツダはスカアクティブ-X(排気量2リットル)搭載車の「マツダ3」を2019年12月5日から、同搭載車第2弾のSUV「CX-30」を2020年1月16日から発売した。第2世代スカイアクティブ技術搭載車の第1、第2弾の車両であり、発売当初からスカイアクティブ‐Xをメインのパワートレインの一つとしてラインナップしていた。それが車両投入から半年前後を経てようやく市販化が実現した。

 

 スカイアクティブ-Xは、ガソリンエンジンにおける圧縮着火を世界で初めて実用化。ガソリンエンジンが持つ「出力」「暖房性」「排気浄化性」、ディーゼルエンジンが持つ「燃費」「トルク」「レスポンス」それぞれの特性を兼ね備える。市販化は電動化でサポートするマイルドハイブリッド「M Hybrid」と組み合わせて実現した。

 

 

 マツダはスカアクティブ-X開発の狙いについて、長期的なCO2(二酸化炭素)削減目標の達成には電動化技術の追加が不可欠としながらも、ウェル・ツー・ホイール(油性から車軸まで)の観点から「内燃機関の搭載がしばらく続く」(中井英二執行役員パワートレイン開発本部長)と判断。これを踏まえ、内燃機関改善の重要性を訴え、追求する。

 

「内燃機関の革新」プラス「xEV(電動化)技術の追加」が将来においても大多数を占めると考えており、2030年までにマツダはすべてのパワートレインを電動化する計画だが、パワーユニットの95%は「内燃機関+電動化技術」が占めると予測。残りの5%がバッテリーEVの比率になるとみている。

 

使う燃料が少ない「リーン」にディーゼルエンジン技術の「圧縮着火」を応用させた

 

 これに合わせて、マツダは内燃機関の理想の燃焼追求に向けたロードマップを作成。ファーストステップとして高圧縮比を実現したガソリンエンジン「スカイアクティブ‐G」を実現。続く、セカンドステージとしてこの燃焼技術を発展させ、使う燃料が少ない「リーン」にディーゼルエンジン技術の「圧縮着火」を応用、開発したのが「スカイアクティブ‐X」だ。

 

 それが「火花点火制御圧縮着火(SPCCI)」方式であり、混合気が多数点で圧縮着火し、圧縮着火による高い効率燃焼により、走りと環境性能を両立させることに成功、実現したものだ。スカイアクティブ‐Gに比べて、燃費改善効果で10~20%向上し、ダイレクトで伸びの良い走りを可能にした。

 

 

 実際に、横浜で試乗の機会を得て、スカイアクティブ‐Xと同‐Gそれぞれのエンジンを搭載したマツダ3を乗り比べてみたところ、その違いが歴然と分かった。スカイアクティブ‐Gエンジン搭載車両でも加速に問題はないが、スカアクティブ-X搭載車はさらに「スムーズな走り」を実現し、加速走行では「思って通りの感触、走り」を体感した。

 

しかも、内燃機関搭載車と思えないほど「車内は静かで、低い声でも十分に会話できる空間」だった。SUVのCX-30での試乗でも、描いた通りにコーナリングを駆け抜け、加速もスムーズ。また、マイルドハイブリッドにより、アイドリングストップ時からの再始動も「静かに、快適に」立ち上がった。

 

 

燃費規制強化が進む欧州では、マツダ3の受注のうちスカイアクティブ‐X搭載車が約6割

 

マツダによると、スカアクティブ-Xを購入したユーザーからは「静かなディーゼルという感じ」「滑らか」「断然、気持が良い」などの好評価を得ているという。燃費規制強化が進む欧州では、マツダ3の受注のうちスカイアクティブ‐X搭載車が約6割を占める。

 

今後、第2世代スカイアクティブ技術としてマツダはスカアクティブ-X搭載車を他車種へも広げていく考えだが、課題となるのが部品点数拡大に伴う価格アップ分を、環境や運転性能など良さでどう訴求するか。

 

スカイアクティブ-Xは高燃圧噴射システム、クールドEGRシステム、三元触媒にガソリンパティキュレートフィルター、さらにマイルドハイブリッドなど数点の追加部品が必要で、スカイアクティブ-G搭載車に比べて約70万円割高となる。販売店では、特設コーナーを設けなど、スカアクティブ-Xの効果をユーザーに積極的に働きかけていく方針だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。