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2018年9月28日【オピニオン】

国土交通省、新タクシー運賃の実証実験を10/1より開始

中島みなみ

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タクシー迎車料金、繁忙時間に高く、閑散時間に安く…高い迎車料金なら優先配車

 

 国土交通省は新たなタクシーサービスのためのタクシー料金・運賃の実証実験を、10月1日から始めることを発表した。

国土交通省・ロゴ

今すぐタクシーを使いたいと思う時の利用方法は、偶然走ってきたタクシーを止めて乗り込む「流し」を使う場合と、タクシー会社に連絡して迎えを依頼する「迎車」に分かれる。「変動迎車料金」の実験は、後者の「迎車」迎車」でタクシーを呼ぶ場合、通常より高い迎車料金を支払っても、より早くタクシーを使いたいと思う利用者に便宜を図ることが、どれだけ受容されるかを見る。

 

 現状の迎車料金は通期で固定されている。大和自動車交通と国際自動車の両グループが行う東京都内の変動迎車料金では、繁忙時間には高い迎車料金で、閑散時間にはより安い迎車料金を設定して、利用の大きな変動をより平均化するのが狙い。

 

料金は最低0円~最高910円までの5段階で変動させる。繁忙時間に迎車料金が高く設定され、利用者がこの料金に同意した場合は、実験地域の通常の迎車料金410円を選択する場合より、優先して配車が行われる。 テーマパークのファストパスのようなイメージだ。反対に閑散時間には迎車料金を下げて、その料金に同意した場合のみ低い料金で請求する。実験期間中の変動迎車料金での利用は、実証実験用の配車アプリを使った場合に限られる。実施区域は東京都中央区と港区。

 

 もう1つの参加事業者である日本交通グループは、千代田、中央、港、渋谷、新宿の5区を対象に月曜・水曜の11~17時までは迎車料金0円の実質値下げを表明し。この迎車料金で利用希望者が殺到しているなどの場合、追加料金980円を支払うことで、配車可能なタクシーを探すエリアを広げて優先配車する。利用するアプリは、日本交通が配信するアプリでできる。実施地域は東京23区と武蔵野市、三鷹市。

 

実験参加事業者は、日本交通グループ46社、大和自動車交通グループ4社、国際自動車グループ7社の約1万1500台が参加する。効果検証は11月30日まで続く。

 

 国交省自動車局は、変動迎車料金は迎車料金を変動させることで新たな需要の掘り起こしをすることや、タクシー利用を平準化して車両全体の生産性を上げることを狙っていると説明する。 しかし、大和自動車交通と国際自動車の迎車料金は、過去の車両の稼働率を参考にリアルタイムで迎車料金を変動させるため、アプリを使った現時点での迎車料金はわかるが、時間をずらして利用した場合と比較することできない。日本交通のように迎車料金が0円なら利用しようという掘り起こしはできず、自動車局の狙い通りに実験を実施するためには課題が残る。

 

地方のタクシー、定額タクシー運賃で高齢者らの「地域の足」に

 

 

 国土交通省自動車局が28日に発表した新たなタクシーサービスには、地方を対象とするものもある。それが「定額タクシー運賃」だ。事前届出制の運賃は1回乗り切りと時間貸しか想定されていなかったが、10月1日からの実証実験では、これに定額タクシー運賃を新たに設定する。

 

 このサービスは参加するタクシー会社と実施地域を紹介したほうがイメージしやすいかもしれない。全国7地域7事業者約570台で、十勝中央観光タクシー(北海道・帯広市と周辺)、郡山観光交通(福島県・郡山市)、白河観光交通(同・白河市)、大和自動車交通グループ(東京都・立川市、昭島市、西東京市の一部)、神奈中タクシーHD(厚木市、伊勢原市)、フクモトタクシー(岡山県・真庭市)、第一交通産業グループ(福岡県・北九州市、中間市、遠賀郡)。いずれも公共交通の整備が行き届かない地域で、免許返納した高齢者や保護者が送迎できない家庭の子供の通塾などを、ボリュームディスカウントで運賃を下げることで使いやすくする。

 

利用希望者が、利用区間を定めて申し込む回数券形式と指定地域内を乗降自由、何回でも利用できる定期券形式があり、実験期間に乗り放題の定期券方式をとるのは郡山観光交通だけだ。実験では利用者が、高齢者、高齢者と子供、透析患者など事業者によって制限がある。回数券形式の場合、販売単位が5回~20回とさまざまだ。

 

定額タクシー運賃の設定は自動車局によると「通常運賃の10%を上限に割り引く」。つまり販売単位が5回の場合は、通常運賃×5から約10%割り引いた額が定額タクシー運賃となる。定期券方式の乗り放題は「平日毎日1回利用したことを仮定して40回分の通常運賃から割引を行う」とする。

石井啓一国交相は同日の会見で「各地域の多様なニーズに応じて、地域の足の確保を狙いとする」と話した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。