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2020年10月19日【エネルギー】

三菱ふそう、小型車シェア改善をサービス拡充でテコ入れ

松下次男

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 三菱ふそうトラック・バス(ハートムット・シック社長・CEO、本社・神奈川県川崎市)は10月19日、小型トラック「キャンター」をモデルチェンジし、11月から販売開始すると発表した。新型キャンターは10年ぶりにキャブデザインを一新したほか、車両左側の危険を警告する安全装置を国内の小型トラックに初めて搭載した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

 本社で開いた新型車発表会でシック社長・CEOは新型キャンターについて「数多くの新機能を搭載し、安全性の高い小型トラックに仕上がった」と強調。コロナ禍やアフターコロナに向けて、重要度が増している物量業界の「効率化、サービス向上に貢献できる」と述べた。

 

 新型キャンターは「デザインを一新」し、「安全装置」「便利機能」「デジタルサービス」を搭載したのが特徴。それも多くの機能を標準装備した。
 販売目標は「シェア23%」を目指す。コロナ禍で国内の今年1~9月の小型トレック市場は前年より約2割落ち込んだが、足元では戻りつつあるという。ふそうの国内の小型トラックのシェアも昨年末から大きく改善しつつある。

 

 

 新機能搭載で車両価格は約20万円程度アップしたが、特別保証部品を最長8年まで延長するなど、効率化、サービスの充実で補える範囲との見方を示した。
 小型トラックに国内で初採用した車両左側の危険を警告する安全装置は「アクティブ・サイドガード・アシスト(ASA)」。
ドライバーの死角になりやすい車両左側の歩行者や車両をレーダーで感知し、左操舵または左折ウインカーの操作に入ると警報音とランプで警告して左折時の巻き込み事故やレーンチェンジ時の危険を抑制する。

 

 一新したキャブデザインは「モダン&ソリッド」を基本テーマに、「新時代のトラックにふさわしいフロントフェイス」へと衣替え。
また、ふそうブランドとしてデザインの統一性をもたせ、バスのエアロクイーン/エアロエースやローザに採用した新デザインアイデンティティの「ふそうブラックベルト」を新型キャンターに継承。さらに新型LEDヘッドライトの採用など技術面でも進化させた。

 

 

便利機能として新型キャンターにはキーをポケットの中に入れたまま、ドアノブにあるスイッチを押すだけでドアの施錠・解錠ができるとともに、車両付近からのリモコン操作が可能な「イージーアクセスシステム」を全車に標準搭載した。

 

街中の配送業務などで乗り降りを繰り返すことが多い小型トラックのニーズに対応させたもので、エンジン始動時にはステアリングコラムにあるスイッチを押して回すだけで作動する。これにより乗り降りや始動・停止を繰り返す小型トラックの作業効率を低減する。

 

 デジタルサービスであるテレマティクス機能も搭載した。大型・中型および小型電気トラックに導入している「トラックコネクト」を新たにキャンターに採用し、運行効率化や安全強化のニーズに対応させる。

 

 トラックコネクトは稼働中の車両データを用いて車両を遠隔管理するもので、車両の位置情報や燃費、遠隔診断を通じて故障の検知などが確認できる機能を備える。
 問題発生時には、24時間稼働のサポートセンターでモニタリングし、サービス提供の段取りや予防メンテナンスなどをサポートする。

 

 今回の小型キャンターへの搭載で、ふそうの全車種が「トラックコネクト」に対応する。また、トラックコネクトは最初の1年間、無償で提供する。
 パワートレインはフィアット(現FCAの1部門)と共同開発した3リットル・インタークーラーターボエンジンをブラッシュアップ。これに6速トランスミッションを組み合わせ、全車が平成27年度重量車燃費基準をクリア―する。

 

 

 シック社長はパワートレインの中長期戦略について、「ダイムラーの一員としてEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などの電動化を主体に推進する。ボルボとのジョイントベンチャーも寄与してくるだろう」と述べた。
 先進安全装備では、ABSに加え、衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)、車両安定性制御装置(ESP)、車線逸脱警報装置(LDWS)などを搭載。
 AEBSはフロントバンパーに搭載したミリ波レーダーで前方の走行車両や停止車両、歩行者を検知し、衝突の危険性を察知するとドライバーに警告を発するほか、衝突の危険が高まると自動的にブレーキが作動する。

 

 ESPは車両姿勢をセンサーで感知し、カーブでの横滑り、横転などの危険が生じた場合に、エンジン出力や4輪のブレーキを最適に制御して危険回避をサポートする。
 LDWSは、高速道路などで車線を逸脱した場合、白線認識カメラが検知し、ドライバーにブザーとメータークラスタ内Ivis(マルチ情報システム)の表示で、ドライバーに安全走行を促す。

 

 車両形式は全長4840ミリメートル、全幅1890ミリメートル、全高2770ミリメートル。ホイールベースは2500ミリメートルだ。
 国内への投入に続き、順次、グローバル展開を進めるが、仕様はそれぞれの地域対応となる。トランスミッションも海外ではマニュアルトランスミッションの比率が高い。
 車両価格(東京地区、消費税含む)は517万4400円。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。