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2020年7月20日【エネルギー】

自工会、トラック隊列走行の早期実現で大型4社が技術協調へ

坂上 賢治

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日本自動車工業会・JAMA・ロゴ

 

 一般社団法人日本自動車工業会(会長:豊田 章男、以下自工会)は7月20日、 トラックの隊列走行の完全実現に向けて同工業会・会員である大型4社が積極協力。定速走行・車間距離制御装置(ACC:Adaptive Cruise Control)や車線維持支援装置(LKA:Lane Keep Assist)、さらに協調型車間距離維持支援システム(CACC:Cooperative Adaptive Cruise Control)に係る研究開発も組み合わせることで隊列走行の実用・商業化を急ぐと発表した。 (坂上 賢治)

 

上記のなかで「ACC」は前走車と自車の間隔を車両搭載機器で計測・算出し、双方間の距離を一定に保つ機能だ。また「LKA」とは車線内での自動走行を維持できるよう白線を検知し、ステアリングを調整する機能を指す。

上記映像は新東名高速道路 2018年12月4日~14日に於ける後続車有人システムの公道実証実験の様子(経済産業省)

 

さらに「CACC」は先のACCを進化させたもので、自車が通信により前走車の制御情報を受信し、加減速を自動で行って車間距離を一定 に保つ機能のことだ。この3つの機能が前走車や追走車と互いに協調・連携できれば、安全なトラックの隊列走行が実現のものとなり、長距離移動時の運転者の疲労軽減が飛躍的に向上する。 

 

 

 そのためにも予てより大型車メーカー4社(いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックス)で構成される自工会の大型車特別委員会(委員長:下 義生)は、「(1)物流の効率化」や、近年大きな社会課題となっている「(2)事業用自動車のドライバー不足への対応」、「(3)ドライバーの働き方改革」などに向け、2021年を目標に、この3つの技術が支えるトラックの隊列走行実現を進めてきた。

 

しかし異なるメーカー車両と隊列を組んで安全運行を行うには、前走車にあわせて後続車が違和感なく加速・制動できることが必要となる。実際に大型4社は2017年度より、政府が音頭を取る〝高速道路に於けるトラック隊列走行の実証事業〟等に積極的に参画。隊列走行を行う物流事業者との意見交換を通じて、隊列走行への理解を深める努力を重ねてきたのだが、先の政府目標を踏まえると、その進展をさらに加速させる必要があった。

 

 

 そこで遂に大型4社は「2021年までに実用的な後続車有人隊列走行システムの商業化を目指す」という政府目標に対して、ACCとLKA、さらにCACC技術も高めて、それらによる後続車有人システムの本格商業運用を視野に、装備・商品開発のスピードを加速化させる動きに出る。

 

今後、大型4社は社会や物流事業者からの意見も同時収集、政府との議論継続、それに伴うインフラ支援や制度整備の要請なども踏まえつつ、未来に向けてますます複雑化・深刻化する〝輸送〟上の社会課題解決を一気に改革していく構えのようだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。