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2023年11月25日【事業資源】

日産、欧州で次世代クロスオーバー車のEV化計画を加速

坂上 賢治

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日産自動車は、自社の英国内事業について11月24日(英サンダーランド発)、EV生産を大幅強化する追加方策を明らかにした。なお、この発表は2021年に明らかにした長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」に基づくものだ。( 坂上 賢治 )

 

今後は「EV36Zero(EVエコシステムのハブ拠点構想)」に沿って最大30億ポンド(約5,650億円)を、当地のサンダーランド工場へ投資し〝新型EVの開発〟〝車載バッテリー生産〟また、これらに関わる〝インフラ整備〟を拡充。これを足掛かりに欧州へ投入する全モデルのEV化(電動車へ全面転換)を強力に推し進めていく。

 

ちなみに英国日産は、同国タインアンドウィア州サンダーランド市に7,000人の従業員を配する大規模な自動車生産工場を抱えており、その事業規模は、同国サプライヤーに至る関連産業の裾野を含めると30,000人の雇用を支えている。

 

ハイパーアーバン

 

そのサンダーランド工場への投資の中核となる新型EVの開発では、英・欧州地域で主力製品のクロスオーバー車「次世代キャシュカイ」と「次世代ジューク」をEV化させていくこと。これに加えて第3の現地生産車として「次世代リーフ」を追加する。

 

なお以上の3つの次期型モデルは、先のジャパンモビリティショー2023で発表された「ハイパーアーバン」「ハイパーパンク」に加え、2021年に発表済みの「NISSAN CHILL-OUT」にインスピレーションを得たものになるとしている。但し、具体的なモデル名や仕様などの詳細は、現段階では明確にされていない。

 

ハイパーパンク

 

ただ上記、車種別の投資額に係る内訳には、想定数字があって「次世代キャシュカイ」と「次世代ジューク」の研究開発と生産で最大11.2億ポンド(約2,100億円)。

 

これを将来的には最大30億ポンドにまで拡大していく姿勢であることが判っている。なお日産側のこれらの投資に対して、英政府も積極姿勢で応える構えを見せており、関連の研究開発費として1,500万ポンド(約30億円)を助成する見込みだ。

 

また日産側は、先の最大30億ポンドにのぼる独自の投資枠のうち、〝新型EVの開発〟以外の〝車載バッテリー生産〟と〝インフラ整備〟に関して、まずはその足掛かりとして、使用電力の再生可能エネルギー化についての方策を推し進めていくことも判っている。

 

NISSAN CHILL-OUT

 

さて、そもそも日産が生産拠点を置くサンダーランド市は、施政方針もあって太陽光発電のマイクロブリッド・プロジェクト施策に積極的であり、拠点近隣に20MWの太陽光発電所を設けていく予定が既に進められている。

 

今後は、これに日産が自社の風力発電+太陽光発電を組み合わせ、再生可能エネルギー100%化を果たすEV生産拠点の実現を目指すという。

 

このような政策概要について英国のリシ・スナク首相は、「日産の投資は、英国の自動車産業に対する大きな信頼を示すものであり、既に年間710億ポンド(約13兆円)という巨額の経済効果をもたらしています。

 

この投資により、サンダーランドは間違いなく、将来EVの技術革新と生産に於ける英国版シリコンバレーとしての地位を確保することになるでしょう。

 

私たちは、英国を最高のビジネス拠点にすることを、経済計画の中心に据えています。また私たちは、日産のような企業が英国で事業を拡大し、根を張って成長できるよう、そして明るい未来のために正しい長期的な決断を下せるよう、あらゆる面で支援していきます」と述べている。

 

一方、日産の社長兼CEOの内田 誠は、「本日、サンダーランド工場の従業員に向けて、この計画を発表しましたが、このような未来を見据えたエキサイティングなEVは、カーボンニュートラル達成を目指す当社の計画の中核を成すものです。

 

また欧州の主力モデルがEVになることは、日産、産業界、そしてお客さまにとって新たな時代への加速を意味します。

 

我々の〝EV36Zero〟プロジェクトでは、英国最大の自動車工場であるサンダーランド工場を、当社の将来ビジョンの中心に据えています。

 

従って、当社の英国チームは将来のクルマのデザイン、設計、生産を当地で行い、これがひいては、欧州に於ける日産の完全EV化を牽引していくことになります」と語っている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。