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2022年4月16日【新型車】

日産アリア、試乗記

松下次男

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日本のEV普及牽引役を目指すアリア、本格販売へ

 

日産自動車が電気自動車(EV)普及の牽引役に位置付けるクロスオーバーSUV「アリア」を本格的に投入する。これに合わせ、プレス向けに実施した試乗会に参加し、その滑らかな走りを体験した。(佃モビリティ総研・松下次男) 

 

 

新型EVのアリアは2020年夏にグローバル発表し、2022年1月から予約注文の限定モデルを発売した。これに続き、5月12日からいよいよ一般販売を開始する。

 

新型アリアの商品バリエーションは、66キロワットアワー・バッテリーを搭載し一充電当たりの航続距離が470キロのベーシックモデルである「B6 2WD(二輪駆動)」と四輪駆動の「B6 e―40RCE」(航続距離250キロ)。

 

それに91キロワットアワー・バッテリーを搭載し一充電当たりの航続距離が640キロと長い「B9 2WD」とその四輪駆動の「B9 e―40RCE」(航続距離580キロ)を合わせた4タイプが用意されている。

 

 

好調な予約注文で、クラブ アリア登録者も2万人超へ

 

このうち、まず販売を開始するのはB6のベーシックモデルだが、当初は3月下旬の発売予定だった。だが、半導体の供給不足から5月以降へと延期せざるを得なくなり、他のグレードは夏以降の販売となる。

 

担当者は先進技術を搭載したアリアは「半導体の塊ともいえる」と述べ、車両供給の遅れを残念がっていた。

 

一方で、オンラインで受け付けた限定販売の「アリアB6 リミテッド」はすでに納入を始めており、5月初旬にかけて予約分を手渡ししたいとしていた。

 

 

このB6 リミテッドの予約は好調で、予約獲得件数は6800件にのぼる。予約状況をみると、高所得世帯や他銘柄車からの予約がそれぞれ4割を超え、また6割が購入を決定済みだ。アリアの最新情報が得られる「クラブ アリア」の登録者も2万人と突破したという。

 

ガソリン車からも違和感なく乗り換えられる滑らかな走り

 

新開発EV専用プラットフォーム搭載車の第1弾となるアリアはMクラスのコンパクトな全長に、Lクラス並みの室内広さを実現したのが特色。

 

 

中嶋光チーフビークルエンジニアはその要因として、バッテリー・フロアの一体化構造や薄型バッテリーを採用、e―パワートレインをコンパクトしたことなどを掲げた。

 

加えて、様々な先進機能も搭載。先進の運転支援技術のプロパイロット2・0や音声で情報交信できるコネクテッドサービスのほか、運転に必要な機能を集約した電動コンソールを備え、スマートフォンのワイヤレス充電も可能だ。

こうしたアリアのプレス向け試乗会に4月14日参加した。実施場所は東京・大田区の羽田空港近隣で、試乗したのは「アリアB6 2WD」。

 

実際に運転してみると、素早い加速と滑らかな走行が印象的だった。開発担当者は、モーター走行の特色である急発進、急加速を抑え、「上質な走りにした」と述べ、ガソリン車などから違和感なく乗り換えできるようにした。EV普及に向け、「馴染みやすい」仕上がりにしたといえよう。

 

ドライブモードも「エコ」「ノーマル」「スポーツ」、それに減速力をオン、オフできるeペダルが用意されており、シーンに合わせた走りが楽しめる。

 

 

広々とした車内に静かな室内空間、先進デバイスが快適区間を実現

 

静かな室内も特色の一つ。もともとEVはエンジンがなく、駆動音は静かだったが、アリアは高遮音ボディで外部からの騒音も遮る。

 

さらに広い室内が実際に乗ってみると実感できる。前席と後部座席の間に、かなりのスペースがあり、大きめの男性が座っても十分、足を伸ばせて、くつろげる広さだ。

 

加えて、アリアにはリーフから搭載されているプロパイロットパーキングに加え、新たにインテリジェントキーで駐車の操作が可能なプロパイロット・リモートパーキングを搭載し、駐車が苦手というユーザーにも強い味方となる。

 

 

また、アリアには音声で話しかければ様々な情報が得られるコネクテッドサービスとしてボイスアシスタントとアマゾンのアレクサが搭載されており、実際のデモで交信が紹介された。

 

日産は今年、アリアに加えて、リーフの改良版、新型軽EVの投入を計画しており、日本のEV普及を牽引する。アリアの車両価格は539万円(B6 2WD)で、今や乗用車で最大のSUV市場でどのような反響を呼ぶか、注目される。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。