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2022年11月21日【自動車・販売】

野村総研、車オーナーを対象にデジタル販売調査を実施

坂上 賢治

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商談はオンラインと対面のハイブリッドになり、価格設定は透明性が重視される

 

野村総合研究所( 本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本 臣吾、以下「NRI」 )は11月21日、日本・アメリカ・ドイツ・中国の4か国の自動車保有者に自動車販売の商談および価格交渉に関わるインターネットアンケート調査を実施した。

 

調査概要は、日本・アメリカ・ドイツ・中国の4か国の自動車保有者・男女合計4,128人が対象。調査期間は先の7月26日から8月17日に掛けて行われた。

 

調査時資の理由は、インターネットでEV(電気自動車)を購入出来るようになるなど消費者が販売店を訪れて対面で価格交渉を行う従来の自動車販売の在り方と異なる販売手法が登場している事にある。

 

そこで同調査では、商談・価格交渉の新しい在り方に対する消費者の受け入れ意向を調査する目的で以下の6つのテーマで実施された。

 

 

商談

<インターネット商談>

インターネット商談の利用意向は中国では8割を超えた。一方で4か国共に6割超が対面商談も必要と回答している。

 

インターネットを使った音声・ビデオ商談の利用意向は、中国で最も高く、回答した人の81.7%が「利用したい」ないしは「どちらかというと利用したい」と答えた。

 

その他の国での利用意向は、アメリカ47.4%、ドイツ23.3%となっており、日本は17.4%に留まった。対してインターネット商談があれば「店舗での対面のやりとりが不要」と回答した人は、どの国でも4割未満となっている。

 

インターネット商談を「利用したい」割合が最も高い中国でも、64.1%が「店舗での対面のやりとりも必要」と答えており、インターネット商談は対面商談に完全に置き換わるものではなく、両方が補完しあう手段として現時点では考えられているようだ。

 

 

<対面商談>

対面商談を求める理由は4か国共に「実車の確認」がトップ。VR(バーチャル・リアリティー)試乗への期待は中国を筆頭に、日本、ドイツ、アメリカが続いた。

 

商談で店舗での対面のやり取りが必要だと思う理由については、いずれの国でも「購入する車を実際に見たい・試乗したい」を挙げた回答者が最も多く、日本で72.0%、アメリカで70.0%、中国で53.5%、ドイツでは73.3%に達した。

 

 

実車確認の代替としてVRを活用した試乗疑似体験の利用意向については、いずれの国でも「役に立つが、決める前に実車にも試乗したい」という回答者の割合が最も多く、日本で45.2%、米国で35.1%、中国で61.4%、ドイツで39.0%となった。

 

なおアメリカ・ドイツでは、VR試乗は購入検討の「役に立たない」と回答した人がそれぞれ、30.8%、34.9%に上るなど、この2か国では評価が二分された。

 

回答者の大多数が一律価格にネガティブな反応、8割以上が価格交渉に不満

 

価格交渉

<一律価格>

近年、特にEVの車種を対象として、販売店での値引きをしない売り方(一律価格)が登場している。それでも回答した4ヵ国の8割超が「店舗での価格交渉が可能なブランド」に、より魅力を感じていると回答した(日:85.1%、米:87.8%、中:87.3%、独:85.8%)。

 

 

<価格の透明性>

この価格交渉に関する不満について尋ねたところ、いずれの国でも「交渉に時間がかかる、疲れる」と回答した人の割合が最も多く(日:35.7%、米:37.8%、中:32.6%、独:28.9%)、更に日本・アメリカ・ドイツでは、「販売店によって価格の違いがある」、「見積根拠が不明瞭、説明が不十分」が続いた。

 

中国では、「見積根拠が不明瞭、説明が不十分(25.4%)」と「販売店によって価格の違いがある(24.1%)」が同程度で、他の国よりも価格設定の透明性に対する不満が高い事が判った。

 

 

価格の変化の根拠として納得できる理由は、いずれの国でも、「原材料や部品の不足・値上がり」と回答した人の割合が最も多く(日:48.5%、米:40.5%、中:36.8%、独:29.4%)、次に「決算前などのセール特別価格」となった。

 

また納期を早める代わりに追加支払いを求める提案についての受け入れ意向を尋ねたところ、追加支払いに応じるという人は、中国で8割以上(83.4%)、アメリカ・ドイツでは5割以上(58.2%・51.2%)、日本では4割弱(38.7%)に上った。

 

 

<商談のハイブリッド化>

商談はオンライン/対面のハイブリッドになり、価格は交渉ではなく条件で決定される方向へ
本調査の結果を踏まえ、NRIは自動車販売の在り方が以下のように変化していくと考えた。

 

インターネット商談は店舗での商談を完全には代替しないが、実車確認を部分的に代替するVR技術による試乗体験が普及し、商談はオンライン・対面のハイブリッド方式となっていく。

 

消費者は一律価格に否定的であり、価格交渉に負担を感じると共に、見積根拠の不透明性への不満を持っている。

 

このため価格は販売店での属人的な交渉ではなく、原材料価格や需要動向などの条件により決定されていくようになる。

 

希望納期に応じて提示価格が変わる、いわゆる「ダイナミックプライシング」も、アメリカ・中国・ドイツでは受け入れ意向が高い。また価格設定の条件としては、メーカー事由だけでなく、セール特別価格などの販売店事由も候補に含まれる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。