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2020年10月27日【アフター市場】

パナソニック、追随型ロボティックモビリティの新製品発表会

山田清志

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 パナソニックは10月27日、ロボティックモビリティの新製品発表会をオンラインで開催し、追随走行機能を持った電動車いす「PiiMo(ピーモ)」を11月から子会社のパナソニック プロダクションエンジニアリング(PPE)を通して発売すると発表した。このピーモはWHILL(ウイル)のパーソナルモビリティをベースに、パナソニック独自の安全技術や制御技術を搭載して製品化した。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

 

20年にわたり蓄積したロボット技術を活用

 

 ピーモは、障害物を検知すると減速、停止する「自動停止機能」、先行機体に追従動作する「自動追従機能」を搭載した新しいモビリティだ。先頭の1台を搭乗者もしくはスタッフが操作し、後続のモビリティが自動追従することで、安全に効率よくグループの移動をサポートする。

 

「パナソニックは2016年に技術10年ビジョンを掲げ、IoT・ロボティック領域とエネルギー領域に関する開発を進めている。その中でロボティックを領域では、ロボット技術を用いてより良い生活の実現に向けて取り組んでいる。これまでに搬送用ロボット『HOSPi
(ホスピー)』開発するなど、人と共存する環境において、安全に目的地まで移動する技術を20年にわたり蓄積してきた」とPPEの柳本努社長は説明する。

 

 

 PPEはマニュファクチュアリングイノベーション本部の子会社として14年4月に設立され、パナソニックグループの生産技術ノウハウを融合したソリューションを提供している。具体的には、計測・検査、成形、精密加工、シミュレーション、ロボティクスなど12の蓄積技術を活用して、成形ソリューション、標準機ソリューション、受託開発設備ソリューション、ソフト・技術サービス・CSソリューション、新規事業インキュベーションの5つの事業を展開している。今回の電動車いすは、新規事業インキュベーションに属する。

 

また15年には、WHILLと超高齢社会において移動困難者の移動をサポートするロボット型電動車いすを共同開発。以来、空港や駅、展示場、商業施設などさまざまな環境で実証実験を重ねてきた。

 

 

敢えて人が介入するように開発

 

「もともとは東京オリンピック・パラリンピック推進本部において、どうやったらスタジアムを満席にできるかという観点から開始したプロジェクト。WHILLとの共同開発やユーザー候補者との協業を通じて、使う人たちに新たな移動体験、移動価値を提供しようと考えた」とPPE新規事業センターの安藤健プロジェクトリーダーは話す。

 

同プロジェクトリーダーによれば、ピーモは完全無人走行を目指したものではなく、あえて人が介入するものを目指し、人とのふれあいを大事にしたそうだ。「1台目のピーモを本体に接続したジョイスティックによって人が操縦することで、現場における顧客へのサービス提供と移動支援業務の省力化の両立を実現でき、高齢化や労働力不足といった課題解決を図ることもできる。それにピーモでは、人が横の寄り添って移動することができる」と安藤プロジェクトリーダーは説明する。

 

 大きさは全幅592mm、全長1046mm、全高870mmで、重量が70kg。最大搭載重量が100kgで、最高速度が4km/h、連続走行距離は約16km。自動停止機能は、センサーによって周辺情報を収集し、障害物などに衝突の恐れがあると判断すれば自動停止する。自動追従機能は、前方に設置されたマーカー(追随用反射板)を後方のピーモが搭載しているレーザーレンジファインダーによって認識し、前方の軌跡を正確に追従することを可能にしている。

 

ピーモそれぞれに知能部を有しており、障害物などが出現した場合には自律的に回避し、Uターンのような曲がり方でもしっかりと追従走行できるという。しかも、ピーモ同士が5GHz帯を利用したWi-Fi接続による無線通信を行っており、ピーモ間で情報共有して、後方での取り残しなどにも対応している。

 

 

「利用現場では、利用者の一人がトイレに行きたいといった要望など、隊列から離れたいシーンが出てくると思う。その際にも、1台だけが独立して移動するといったように、列内での機体順番の変更、機体の追加、機体の分離が容易にできる。また、ワンタッチ操作で1台ずつの手押し操作に変更できる」(安藤プロジェクトリーダー)とのことだ。技術的には10台の追従が可能だが、5台ぐらいの追従を推奨しているそうだ。

 

価格は300~400万円。実証実験は非常に好評だったが、具体的な商談については「新型コロナウイルスの影響によって途絶えている状況だ。今後、新型コロナウイルスの終息に合わせて、いろいろな場面での提案をしていこうと考えている」と柳本社長は話していた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。