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2018年9月26日【社会インフラ】

日産西川社長、燃費・排出ガス検査データ改ざんで報告書提出

中島みなみ

 

日産自動車・グローバル本社

 

 2018年9月26日午前、日産自動車は国土交通省を訪れ、安全に関する品質検査で不適切な取扱いがあったことについて、調査と再発防止の対策について報告を行った。

 

 完成検査はメーカーが事前に指名した検査員が行うことが法令で定められているが、同社は昨年9月、資格のない作業員が測定を実施していたことや、検査の独立性を保つために検査エリアを定めなければならないところを、商品に関する品質検査エリアなど届け出ないまま実施していたことなどが明らかになり、再発防止策を定めた。一点はその継続する報告で、この対応で不適切事案は解消されたかにみえた。

 

 今回の報告の焦点は、今年7月9日に明らかになった件で、工場出荷前の新車に対して保安基準に適合し、公道を走ることが可能であることをメーカー自らが保証する完成検査に関する不適切事案。昨年の同じ検査エリアを舞台とするもので、完成検査の中でも燃費・排出ガスの抜き取り検査で、データ数値の根拠ない書き換えを実施するなどの行為が発見された。日産は再発防止を進める中で自社で発見したものであることを強調するが、検査に対する信頼性が疑われる事態に陥っていた。

 

 

 報告をおこなった西川廣人社長は、約1時間にわたって奥田哲也自動車局長のもとで説明を行い、その後にこう語った。

「自動車局長に方向した。昨年の事案以来、全社をあげて再発防止に取り組む中で、こういう事案が発見されたこと自体、たいへん遺憾だし、由々しき問題だと思う。お客様からの信頼、関係者からの信頼を損ねる行為。ここは昨年来進めていることに加えて、今回出てきた事案の対策をさらに徹底することに尽きる。重大な問題と認識して社内で取り組む」

 

 昨年、報告書を提出した時点では不適切事案の責任をとって報酬の自主返納を明らかにしたが、今回は言及を避けた。

「コンプライアンスの仕事は、体制の強化は、会社としては終わりがない。私の指示で完成検査に加えて、工場運営、その他の業務を含めて、関連する法令、法規の確認、順守状況の確認で、コンプライアンスの一斉点検を行っている。この仕事を徹底して、できるだけ将来に禍根のない体制を作っていくことが私の使命だと思っている。まずは対策に集中したい」

 

 同社は報告書に関する説明を、同日15時から本社で行うが、西川氏は出席しない予定だ。

 

なお今の事案に関する調査結果。また日産自動車として発表した認識、並びに再発防止策の概要は下記の通り。(以下、同社発表概要を記載)

 

・ 完成検査における不適切な抜取り検査の調査結果
1) 燃費・排出ガス抜取検査の概要
本年7月9日に発表した通り、九州工場を除く、日産の全車両製造工場において、国内向け型式指定自動車の燃費及び排ガス検査を行う際に、測定値の書き換え及び測定条件の書き換え・逸脱といった不適切な検査が行われていました。(具体的な事例に関しては添付別紙参照方)
検証が完了していなかったGT-Rについても8月末までにN数を増加させて追加測定を実施した結果、諸元値の担保を確認するに至りました。これにより全ての車種において燃費及び排ガスの諸元値について担保できていることを確認致しました。
7月9日に発表した不適切な燃費・排ガス抜取検査が行われた台数は、1,171台でしたが、詳細調査の結果、1,205台となりました。(データ重複、無効データの追加、計算ミスなどによる)

 

2) 精密車両測定検査の概要
燃費・排出ガス抜取検査以外の自動車の構造、装置及び性能に関する一連の抜取検査である精密車両測定検査において、測定値の書き換え、試験条件の書き換え・逸脱及び一部検査項目の不実施の証言がヒアリング調査によって確認されました。 これを受けて、当社において事実確認を行い、一部不適切な検査が行われていた車両の品質確認結果については、何れも保安基準又は検査規格に適合していることを確認しました。

 

各事案の概要は以下の通り。
① 試験の不実施
ア. ブレーキ液残量警告灯
追浜工場、日車湘南、日車京都において、生産されている車両を実際に確認し、当時の1人体制ではリザーバータンクからブレーキ液を抜くことが難しいことが判明しました。 抜取検査での検査規格はブレーキ液面がMINのラインよりも下回った際に、警告灯が点灯することを確認するものです。全数検査における球切れ及び装置の抜取検査における残留液量検査では問題は検出されておらず、ブレーキ液残量警告灯の作動及び点灯ともに正常に機能していると考えられます。

 

② 試験の一部不実施
ア. 車外騒音
日車京都において、車両の輸送記録及び検査報告書を照合した結果、輸送記録と一致しないものもあり、一部の車両において、騒音検査が不実施でした。複数の現在生産車で車外騒音測定を基準書に則った方法で実施したところ、何れの車両も定常走行騒音・加速走行騒音ともに全て保安基準を満足していることを確認しました。

 

イ. 最大安定傾斜角度
日車京都で確認を行った結果、抜取検査の対象車両を検査のために確保する計画ができていませんでした。複数の現在生産車で検査規格に定めた方法で最大安定傾斜角度を測定したところ、全て保安基準を満足していることを確認しました。

 

③ 測定値の書換え
ア. トーイン、キャンバ及びキャスタ
日車九州、追浜工場において、トーインの測定値が規格値を超過した場合、サイドスリップの測定値が検査規格を満たしていることを確認した上で、トーインの測定値を検査規格の上限値又は下限値(1.0mm又は-1.0mm)に書き換えた事例が確認されました。
また上記と類似の事例として、日車九州においてキャンバ、日車京都においてキャスタの実測値が検査規格を逸脱した場合に、検査規格を満たすように実測値を書き換える事例が確認されました。

 

当該車両製造工場で、トーインの測定において設計図面に合わせた調整値が加味されていなかったことがわかり、当該調整値をアライメントテスターに反映しました。アラインメントテスターの調整後、複数の現在生産車で検査規格に定めた方法でトーインを測定したところ、測定値が規格値を逸脱しなくなりました。

 

なお、トーインは保安基準に含まれず、ホイールアライメントの周辺で保安基準に定められているのはサイドスリップのみですが、サイドスリップは全数検査をしており、全て検査規格及び保安基準を満足していることを確認しています。また、キャンバやキャスタにおいても同様です。

 

イ. 前照灯の照射方向
日車湘南、日車京都において、前照灯の照射方向が検査規格を逸脱した場合、検査規格に収まるよう前照灯の照射方向を調整した上で再測定し、再測定後の数値を検査結果とする証言がありました。

 

当該車両工場で確認を行ったところ、2016年3月に検査規格が改訂されており、それ以降、検査規格を逸脱した事例はありません。前照灯の照射方向は全数検査にて検査されており、また当該車両工場で複数の現在生産車で検査規格に定めた方法で測ったところ、全て検査規格を満足することを確認しました。

 

ウ. 全幅
追浜工場、日車湘南及び日車京都において、主要諸元の一つである全幅について、検査規格を逸脱した場合に、法令の規制を逸脱していないことを確認の上、測定値を検査規格内の数値に書き換えたという証言がありました。

 

当該車両製造工場で確認を行ったところ、社内基準である検査規格を逸脱した場合においても、法規制値は満足していました (検査規格<法規制値)。複数の現在生産車で検査規格に定めた方法で測定を行った結果、全て検査規格を満足していることを確認しました。

 

エ. 警音器の音量
日車湘南において、警音器の音量について、検査規格を1dB程度逸脱した場合に、保安基準を逸脱していないことを確認の上、測定値を書き換えたとの証言がありました。
当該車両製造工場で確認を行ったところ、社内基準である検査規格を逸脱した場合においても、法規制値は満足していました。 (検査規格<法規制値)。複数の現在生産車で検査規格に定めた方法で測定を行った結果、全て検査規格を満足していることを確認しました。

 

オ. ハンドルの最大回転数
日車京都において、ハンドルの最大回転数につき、検査規格を逸脱した場合に、測定値を検査規格内の数値に置き換えていた事例が確認されました。
なお、ハンドル最大回転数は、タイヤ切れ角測定に影響するものですが、タイヤ切れ角測定については、全数検査にて検査されています。

 

カ. ブレーキペダルの踏み代・駐車ブレーキの引き代
追浜工場において、ブレーキペダルの踏み代の検査等複数の検査項目について、検査規格の数値自体に誤りがあったという事例が確認されました。このうち、ブレーキペダルの踏み代の検査については、測定値が検査規格を逸脱した場合は、測定値を検査規格内の数値に書き換えていました。
ブレーキペダルの踏み代は、検査規格に誤りがあったため、正しい数値に修正しました。また、検査結果の記録用紙に印字された検査規格も誤った数値が印字されていたので、併せて修正しました。
複数の現在生産車で検査規格に定めた方法でブレーキペダルの踏み代を測定したところ、全て検査規格を満足することを確認しました。

 

また、駐車ブレーキの引き代については、検査結果の記録用紙に印字された検査規格の欄に、検査規格とは異なる数値が印字されていたので、正しい検査規格に修正しました。 複数の現在生産車で検査規格に定めた方法で駐車ブレーキの引き代を測定したところ、全て社内基準である検査規格を満足することを確認しました。

 

④ 試験条件の書換え・逸脱
ア. 車外騒音
追浜工場、日車九州において、自動車の車外騒音の測定条件については、業務処理基準書において、騒音の測定は、風速が5m/s以下のときに行うとされていますが、風速がこれを超えている場合であっても検査を実施し、測定記録用紙には風速5m/sを超えない数値を記載する事例が確認されました。
また、日車湘南において、乾燥路面での測定が規定されているところ小雨でも測定して測定記録用紙にはくもりと記載したとの証言がありました。
当該車両製造工場の複数の現在生産車で検査規格に定めた車外騒音検査を行ったところ、何れも定常走行騒音・加速走行騒音の全て保安基準を満足することを確認しました。

 

イ. 重量測定
日車京都で確認をしたところ、定常の抜取検査においては、規程どおりガソリンを充填して重量を測定していたが、社内における品質確認用 (抜取検査ではない) の重量測定において、ガソリンを充填せずに測定を行ったとの証言がありました。
複数の現在生産車で検査規格に定めた重量測定を行ったところ、何れも検査規格を満足することを確認しました。

 

・ 問題の背景及び原因
日産の車両製造工場において、不適切な抜取検査が行われた背景及び原因としては、以下の事情が存在するものと考えられます。

 

1) 完成検査員の規範意識の鈍麻
不適切な抜取検査を行った完成検査員は、自らの行為が業務処理基準書等、抜取検査に関する規範に違反することを認識しつつ、測定値の書き換え等の行為に及んでいました。
抜取検査は定めた方式で実施が必要であり、また統計的判断を前提としているのに対して、不適切な抜取検査を行った検査員は、業務の意味・目的に対して十分な理解をしていませんでした。

 

2) 現場管理の不在
第一義的に現場の完成検査員を管理・監督するべき立場にあるはずの工長が、抜取検査の実務を経験したことがなく、そもそも、完成検査員が行う抜取検査の内容を理解していませんでした。工長は、自ら抜取検査の知見を身につけ現場を管理・監督するのではなく、抜取検査の実施を現場の完成検査員に委ねており、工長による現場の管理が遂行できているとは言えない状況でした。
検査結果がNGになった場合、実施すべき検証や設計・メーカーとの調整をかつて行っていた技術員がいなくなり、同業務を検査員本人に委ねられたことから、その業務を回避していました。

 

3) 完成検査員に対する不十分な教育
抜取検査を行う完成検査員は、抜取検査の意義やその背景にある考え方に関して十分な教育を受ける機会がありませんでした。
事例1: Xbar-R管理線は本来変更する前提であることや、希釈空気濃度がマイナスになった場合はゼロとみなすことを知らず、書き換えを行った検査員がいました。
事例2: 検査規格や保安基準は守られているため、トレースエラー等の逸脱を一定程度正当化していました。抜取検査の意義を正確に理解していれば正当化できないことは明らかです。
事例3: 日産が定めた手続に沿って検査を実施しなければ法令に従った完成検査を実施したことにはならないことを理解していませんでした。
教育はOJTに委ねていたが適切に機能していませんでした。工長も十分な知識・経験を有しておらず、検査員は先輩から不適切な方法を伝授されていました。

 

4) 完成検査員の人員不足
抜取検査を行う完成検査員の人員数は、担う業務の内容に鑑みれば、必ずしも十分なものとはいえませんでした。
抜取検査において、NGが発生しないことを前提とした所要の算出、仮にNGが出れば検査員に想定外の負荷がかかる状況となっていました。
一部車両製造工場を除き、新規配属者を教育する人員を確保しておらず、余裕を持った人材育成ができていませんでした。

 

5)不十分な設備
一部工場で燃費・排ガス検査に使用する設備に不具合があり、試験条件等を整えるのが容易ではありませんでした。
各車両製造工場内に検査に必要な試験設備が無く、各車両製造工場間で共有をしていたことから試験条件が容易に整えられない状況が生じていました。

 

6)車両製造工場管理の在り方
生産性向上など目標を達成するために、NG発生を前提としない配置・技術員不在・育成の為の人員・適切な知識や経験を有する管理層の不在など、車両製造工場が健全に維持・発展するための不可欠な要素が揃っている状況ではありませんでした。

 

7)車両製造工場のマネージメント層の在り方
工場において将来を見越した人材育成が必ずしもできていませんでした。車両製造工場のマネージメント層が、実効性のある現場管理の為の人材育成・配置を怠っていました。また、検査員の後継育成が不十分で固定化が進み不正が発生しやすい職場を作り出す結果となりました。
車両製造工場のマネージメント層が抜取検査の現場と十分なコミュニケーションが取れておらず、不適切な検査行為の実態を把握できていないことが要因となりました。完検問題の調査報告にて管理者層と現場との間に多くの壁があると指摘しましたが、抜取検査の検査員と現場の係長及び工長といった監督者との間にも壁がありました。
工長及び係長による監督が実効的でなく、コミュニケーションが不十分で現場のリスクが把握できていませんでした。また、再検査等が必要な状況を想定してない人員配置も現場を正確に理解・把握できていませんでした。

 

8) 日産のコンプライアンス体制の不十分さ
日産において以下の取組がなされておらず、コンプライアンス体制構築が不十分でした。
マネージメント層においてコンプライアンス遵守に向けた強い姿勢の明示及び、従業員が業務意義・目的を正確に把握して業務に取り組めるような普段の教育訓練が不十分でした。
現場管理者層が現場の問題を正確に把握し、マネージメント層と共有する仕組みが不十分でした。
業務に内在するリスクを正確に把握し、リスクに応じた管理体制の構築ができていませんでした。

 

9) 不合理な検査規格
一部の不合理な検査規格が、書き換え等の不適切検査を引き起こす一因となりました。(例:トーイン調整等)。
抜取検査担当技術員の減少により、設計部門などに対して、検査規格時策定時や量産開始後の検査規格の妥当性についてフィードバックが優先されませんでした。

 

10) 完成検査軽視の風潮
車両製造工場において、計画通りの生産出荷が優先され、完成検査が軽視されていました。
再検査による出荷の遅延、及び原因究明による製造工程への負担を懸念する風潮がありました。

 

・ 再発防止策について
当社は、2017年9月に発覚した不適切な完成検査の実施を受け、53件の再発防止策を策定し、新たに見つかった課題については、逐次追加しながら、現在58件の再発防止策に取り組んでいますが、その多くは、テスターラインでの全数検査工程を主眼においた対策となっていたこともあり、完成検査の他の工程における不適切行為の防止に十分機能したとは言えませんでした。
一方、コンプライアンスの徹底及び現場実態の把握における改善はまだまだ道半ばであり、現場実態の把握や現場が声をあげられるようにするために、阻害要因の排除及び後押しする仕組み作りを行う必要があると考えており、これらを踏まえ、抜取検査固有の対策を策定するとともに、昨年来取り組んできた再発防止策の見直しを行います。

 

<抜取検査における不適切行為を受けた再発防止策>

 

① 緊急措置
抜取検査工程に監督・管理者の立ち会いをつける
抜取検査工程における完成検査員の配置換え及び増員
排出ガス測定装置のプログラムのデータの書き換えができないように修正
排出ガス測定に係る不明瞭な基準の改訂

 

② 抜取検査体制
抜取検査体制の見直し
抜取検査の監督・管理者及び技術員の育成

 

③ 抜取検査のオペレーションの修正
作業観察の徹底
抜取検査の業務手順の再確認・整備

 

④ 抜取検査の検査装置・設備の整備
排出ガス測定において試験条件を逸脱したデータを自動的に無効化
排出ガスの測定結果、試験条件、及び走行データを保存・管理
排出ガス測定装置の最適化及び試験環境の整備
抜取検査における計測の自動化検討

 

⑤ 抜取検査における完成検査員の人員管理
抜取検査における完成検査員の育成計画策定
抜取検査の人員管理に係る基準書の改訂
抜取検査の完成検査員を増員

 

⑥ モニタリング・監査
抜取検査におけるモニタリング計画策定及び基準書の改訂
抜取検査工程の監査強化

 

⑦ 抜取検査における完成検査員の任命・教育
抜取検査の技能習熟を定義(ILU基準)
任命教育における法令・社内規定に関する追加教育の検討及び教育内容の見直し

 

⑧ 関連法令・社内規定等の社内教育
完成検査の理解を正すための教育
CSマインド教育

 

⑨ コンプライアンスの徹底
工場内緊急職場点検の実施
工場内ルールの総点検
生産部門を対象としたコンプライアンスマインド教育の実施
現場におけるコンプライアンス意識の向上

 

⑩ 現場実態の把握
現場からの問題提起をフォローする仕組み
現場の問題を議論する場の強化
品質保証部 部課長による現場把握

 

⑪ 工場管理の在り方
コンプライアンス・安全・環境等に関するコスト・投資管理の仕組みの見直し

 

⑫ 対策の実施及びフォロー体制について
CCOを対策実施総責任者とし、関連役員が担当・統括する実施体制 を構築
経営会議への月次報告
内部統制委員会での定例報告事項化
国土交通省への進捗報告

 

まとめ
今回の不適切な抜取り検査における原因・背景を調査した結果、「会社として、役員から管理職、工場の監督者層に至るまで、完成検査の基準・規程に反することの重大性の認識が極めて薄かった」という点において、昨年の問題と根が同じであると認識しています。 特に、根幹となる完成検査制度の重要性を全社的に徹底していく必要があること、現場と管理者層(本件においては監督者)との距離を縮めること、管理者層による現場の十分な実態把握等、問題の本質は変わらないと受け止めています。

 

当社は、健全な改善意欲・目標達成意欲を奨励することはあっても、組織疲労・疲弊を招くようなマネージメントは持続可能性を伴わないものであり、全く目指すところでは無いと考えています。 ただし、当社は、製造会社として、不断の原価低減努力は不可欠であり、原価低減努力と本件を直接的に結び付けるべきではありません。一方で第三者報告書が指摘するように、コスト重視が現場管理の不在、抜取検査現場における人員体制が十分でなかったこと等の要因の背景であるとするならば、優先順位が正しく判断されていなかったと言え、当時から現場実態の把握が不十分であったといわざるを得ません。 この度の不適切な抜取検査の背景にその様な実態の理解・把握不足による歪みが生じたのであれば、経営層が主体となって実態の理解・把握に努め、改めて従業員のベクトルを合わせていくことが必要であると認識しております。

 

なお、昨年の完成検査問題を受け、今年4月に設立された日本生産事業本部は、「日本のものづくり改革」と称して、コンプライアンス問題への対策の実施、推進に留まらず、職場環境の改善、老朽設備の刷新による信頼性向上等、日本のものづくりの現場の活性化やそこで働く従業員のモチベーション向上を推進することで、質の高い安全・安心な車を安定的にお客さまにお届けする活動に取り組んでいます。人的リソースへの投資等も含めた必要な投資や本件の対策の実施についても、この活動の中で推進してまいります。

 

更に当社は、ものづくりに直接関わる部署に限らず、法規・法令遵守に関する仕組み・体制・プロセスの総点検を全社的な活動として徹底的に行ってまいります。 法令遵守の徹底を重要な経営課題として捉え、今後もこれらの活動を通じて問題が発見された場合には、責任を持って適切な処置を講じ、あらゆる業務における法令遵守、コンプライアンンス意識の醸成・徹底を図ってまいる決意です。

 

こうした取り組みを確実に実施し、お客さまをはじめ、あらゆる関係者の皆様からの信頼回復に努めてまいる所存です。

 

<Web掲載資料>
「完成検査における不適切な取扱いへの対応等についてのご報告」(日産自動車作成版)
< https://www.nissan-global.com/PDF/180926-01_01.pdf   >

 

「調査報告書 (車両製造工場における不適切な抜取検査の実施について)」(西村あさひ法律事務所作成版)
< https://www.nissan-global.com/PDF/180926-01_02.pdf  >

 

「車両製造工場における不適切な完成検査の実施について 再発防止策の実施状況に関する報告書(第2回四半期報告)」 (日産自動車作成版)
< https://www.nissan-global.com/PDF/180926-01_03.pdf  >

 

再発防止策一覧
< https://www.nissan-global.com/PDF/180926-01_04.pdf  >

 

<ヒアリングの結果、判明した燃費・排出ガス検査の状況について>
① 燃費・排出ガス検査における測定値の書き換え
排出ガス検査において、検査規格(諸元値)を逸脱した測定結果が出た場合、その逸脱の程度が著しくなく、またその変動も少なく安定していると判断される場合には、検査規格に収まるように測定値を修正する事例がありました。
サーバー上に保管されている過去の排出ガス検査の結果の傾向と比較して、測定値の方が高い場合、当該測定値を下げ、修正したという事例がありました。
当社の社内基準(X-bar管理図等)の管理線を逸脱し、再検査等のアクションを取らなければならない状況となった場合、管理線の範囲内に収まるように測定値を修正した事例がありました。
希釈空気がマイナスの場合、(本来はゼロとみなすことが規定されているにも関わらず)プラスに書き換え、希釈空気濃度が異常値の場合も書き換えた事例がありました。
排出ガスを測定した結果、希釈排出ガス中のメタン(CH4)の濃度が全炭化水素(THC)の濃度との関係で理論上辻褄が合わない場合、メタン(CH4)の数値を書き換えるという事例がありました。
測定器の不調により、自動演算が最後までなされなかった場合、過去のデータを参照して、適当な測定値を手動で入力する事例がありました。
国土交通省やISO監査において排出ガス検査に関するデータの提出を求められた際、データ中の測定値がXbar-R管理図の管理線を逸脱している場合、当該測定値を修正し、管理線に収まるように変更した上で提出する事例がありました。

 

② 燃費・排出ガス検査における試験条件の書換え及び基準逸脱

試験室内の乾球温度又は湿球温度のいずれかの値を書き換えて、Kファクターの値が基準に収まるようにしていた事例がありました。(Kファクターとは、湿度を原因とする窒素酸化物(NOx)の測定値のブレを補正するために用いられるもの)
JC08モード法においては、試験室内の温度は25℃±5℃、相対湿度は、30パーセントから75パーセントの範囲内であることが求められていますが、温度や相対湿度が当該範囲を逸脱している場合に、温度や相対湿度を書き換えた事例がありました。
分析計の校正に使うガス(CO2)の発注が遅れたため、分析計の校正は当該ガス以外の排出物についてだけ実施したという事例がありました。この場合、当該ガスについて正確な測定ができないおそれがあるため、過去のデータを参照して当該ガスの測定値を書き換えていました。
JC08モード法においては、許容される誤差を逸脱した時間が連続して1.0秒を超えることが1回でもあれば、試験条件を逸脱したものとして、測定結果は有効なものとは扱われないこととなり、許容される誤差を逸脱した時間が連続して1.0秒を超えることがなかったとしても、約20分間の走行時間中、許容される誤差を逸脱した時間の累積が合計2.0秒を超える場合にも、試験条件を逸脱したものとして、測定結果は有効なものとは扱われないこととなります(トレースエラー)。しかし、トレースエラーがJC08モード法において許容される限度を超えて発生した際も、再検査をせず、当該検査結果を正規のものとして扱うという事例がありました。

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松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。