NEXT MOBILITY

MENU

2023年2月13日【経済・社会】

ルノーと日産、インドで新型車含む投資で雇用創出へ

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

6億USドル(530億インドルピー)を投資しEV2車種を含む6車種の新車を生産

 

ルノーと日産自動車は2月13日、インドで車両生産と研究開発の事業を強化。より具体的には電気自動車(EV)の投入とカーボンニュートラルな生産体制へ移行するための新たな長期ビジョンを発表した。

 

両社はチェンナイを拠点として、国内外の顧客向けに2車種の新型EVを含む6車種の新型車を共同開発し、ルノー・日産の拠点を国際的な輸出ハブへと高めていく。

 

この新規プロジェクトのために両社は、約6億USドル(約530億インドルピー)の初期投資を計画。更にチェンナイのルノー日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア社(RNTBCI)では、最大で2,000人の新規雇用を創出する。

 

同時にルノー日産オートモーティブインディア社(RNAIPL)の工場は、再生可能エネルギーの発電量を大幅に増やす事で、カーボンニュートラル化していく。

 

インド市場の電動化を推進し、環境への影響を最小限に抑えていく

 

先週のルノー・日産・三菱アライアンスの新たな価値創造プロジェクトの発表に引き続き同日、インドのチェンナイでタミル・ナドゥ州のM.K.スターリン州首相と政府関係者が参加する公式式典に於いて、日産の取締役兼代表執行役COO、アライアンス・ボードメンバーのアシュワニ グプタが、ルノー・日産のインド事業の将来について概要を説明した。

 

日産のAMIEO(アフリカ・中東・インド・ヨーロッパ・オセアニア)マネジメントコミッティ議長であるギョーム カルティエ氏は「ルノーと日産はインド市場への取り組みを強化します。具体的にはインド市場の電動化を推進し、環境への影響を最小限に抑えていきます。

 

インドは初のアライアンス工場が竣工した地であり、新型車や新しい研究開発の取り組み、新しい輸出市場を通じて、共同事業を次のレベルへと引き上げ、アライアンスの新しい章の中心的な役割を果たしていきます。

 

インドにおける日産のラインアップに、初めてグローバルに高品質なSUVとEVが加わる事で、従業員、お客さま、地域社会により大きな価値をもたらします」と語った。

 

世界にまたがる研究開発に於いても、インドは重要な役割を担う

 

またルノー・グループのインターナショナル・デベロップメント・パートナーシップ担当SVPでアライアンス共同購買組織(APO)のマネージング・ダイレクターを兼ねるフランソワ プロボ氏は、「インドはルノー・グループにとって重要な市場です。

 

過去14年間、私たちはチームやディーラーとともにルノー・ブランドを発展させ、年間10万台を販売するまでになりました。

 

また世界にまたがる研究開発に於いても、インドは重要な役割を担っています。今回の日産とのプロジェクトは、2月6日に発表した新しいアライアンスの構想のうち、内容を具体化した最初の取り組みです」と、述べた。

 

インドが自動車や自動車部品の生産、自動車設計で重要拠点であり続けるために

 

加えてタミル・ナドゥ州政府商工次官のSクリシュナン氏は「ルノーと日産は、15年以上前からタミル・ナドゥ州に生産・設計拠点を有しています。

 

これは、タミル・ナドゥ州政府とアライアンスにとって、非常に重要な関係です。同州では約15,000人を直接雇用しており、タミル・ナドゥ州がインドの自動車の中心地、自動車や自動車部品の生産、自動車設計の重要な拠点であり続けるための柱の一つとなっています。

 

アライアンスがタミル・ナドゥ州に於いて近代化を進め、新たな投資を行うという提案をした事に非常に興奮しています。これはまさに『インド製、タミル・ナドゥ製の商品を世界へ』を実現するものです」と述べた。

 

新しいセグメントへ新型車を投入
上記を踏まえ両社3車種ずつで合計6車種となる新型車は、チェンナイで設計・生産される予定。アライアンス共通のプラットフォームを採用しながら、各ブランドの個性を明確にした特徴的なデザインを採用する。

 

それら新型車には、4車種の新型CセグメントSUVが含まれる。またルノーと日産にとってインドにおける初のEVとなる2車種のAセグメントEVは、10年以上前に「日産リーフ」とルノー「ゾエ」が切り拓いたグローバル量産型EVの専門知識を活かして開発される。

チェンナイにおけるルノー・日産の国際ハブ
新型車はインドの顧客へ届けるだけではなく、インドからの輸出も大幅に増加させる事を意味する。そしてチェンナイのRNAIPL工場の稼働率を80パーセントまで高め、今後何年にも亘って数千人の雇用を確保する。

 

また、この増産を補完するため、RNTBCIでは研究開発及び関連業務の拡大が見込まれており、インドと海外の新規プロジェクトのために、チェンナイ近郊の拠点で、最大2,000名の新規雇用を創出する構えだ。

カーボンニュートラルなクルマづくりへのロードマップ
エネルギーに係る取り組みでは、両社のアライアンス上に於いてエネルギーや資源を削減する主要拠点の一つであるRNAIPL工場については、より詳細なカーボンニュートラルへ向けたロードマップを発表した。

 

これは現在進行中の再生可能エネルギー使用量100パーセントへ移行させるプログラムで、2045年までに達成する予定。同時に工場でのエネルギー消費量も現在より50パーセント削減する予定としている。

 

実際、チェンナイ工場では、すでに電力の50パーセント以上を太陽光、バイオマス、風力などの再生可能エネルギーで賄っている。太陽光発電は現在の6倍以上の規模となり、発電量は2.2MWから14MWへと拡大されている。

 

パートナーシップの再構築
ルノーと日産は、インド市場に対する新たなコミットメントとして、両社の共同事業に於ける株式保有比率を見直した。

 

この新しい枠組みに係る合意により、RNAIPLは日産51パーセント:ルノー49パーセントの出資比率となり、RNTBCIの出資比率は、ルノー51パーセント:日産49パーセントとなる。

 

この結果、長期的なパートナーシップが強化され、各社がより責任と自律性を持って事業運営が可能となる。

最後に日産のギョーム カルティエ氏は「ルノーと日産は本日、インドへのコミットメントを新たにしました。

 

タミル・ナドゥ州政府の強力なパートナーシップとサポートに感謝します。私はここチェンナイで、チームの皆さんと素晴らしい発表を共有できたことをとても誇りに思います。

 

彼らのパフォーマンスと競争力が、長期的な投資を行う自信を与えてくれたのです」と結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。