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2021年10月30日【新型車】

ロールス・ロイス、ブラック・バッジ・ゴーストを発表

坂上 賢治

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ロールス・ロイス・モーター・カーズ(本社:英ウェスト・サセックス州グッドウッド、CEO:トルステン・ミュラー・エトヴェシュ)は、2016年に常設のビスポーク・モデルとして「ブラック・バッジ」を披露したが今回、英国時間の10月28日、同シリーズを象徴する新型車を発表した。(坂上 賢治)

 

それはミニマリストの心を捉えるポスト・オピュレンス(脱贅沢)をブラックのカラー表現で昇華させたモデルであり、ルールを破り、リスクを冒し、古い因習に挑んで成功を収めるような「反逆心を尊ぶ」顧客に向けたクルマだという。

 

 

ちなみにロールス・ロイスにとって、こうしたブラック・バッジモデルは、過去の製品ラインの中でも大きな成功を収めてきたモデルラインナップであり、現在も世界のロールス・ロイスの全受注比率上で27パーセントを超えるという。そもそもそんな常設ビスポークモデルを代表するクルマと言えば「ファントム」があるが、 その後の2016年に、新たなブラック・バッジ・モデルとして「レイス」と「ゴースト」がデビューした。

 

 

このゴーストは、〝俊敏かつ控えめで余分なデザインを施さないロールス・ロイス〟をという顧客の要望に応えて開発されたクルマで、当時、発表12ヶ月間に於いて世界から3500台以上の受注を獲得。ロールス・ロイス史上、最も早いスピードで売り上げた新型車のひとつとなった。続く2017年には「ドーン」を。さらに2019年には「カリナン」を発表。その一連の動きの中で、着実に進化を果たして登場したのが今発表のブラック・バッジ・ゴーストだ。

 

 

そんなブラック・バッジモデルも、先のゴーストと同じく、ミニマリズムさを徹底的に追求したリダクション(削減・縮小)と、サブスタンス(実質) をテーマに。優れた素材を厳選搭載したミニマリズム感を表現。控えめながらも知性を感じさせるデザインとなっている。

 

車体骨格は、ロールス・ロイスが〝アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー〟と呼ぶオールアルミ製のスペースフレーム構造であり、同フレームは極めて高いボディ剛性を実現しているだけでなく、その持ち前の柔軟性により、四輪駆動システムや四輪操舵システム、タイヤと路面の微細な路面入力を拾い上げて抑え込むプラナー・サスペンション・システムの搭載に応える。

 

 

これにエアダンパーを組み合わせる事でコーナリング時のボディロールを効率的に抑える。搭載エンジンは最高出力600ps(441kW)、最大トルク900Nmのツイン・ターボ付き6.75リッターV12エンジンを搭載。これにZF製8速ギヤボックスを組み合わせた。ちなみに最大トルクはわずか1700rpmという低エンジン回転域から発生する。静止状態から時速100キロに到達タイムは4.7秒。

 

 

ブラック・バッジのボディサイズは全長5546×全幅2148×全高1571mm、ホイールベースは3295mmという数値。エクステリア面では44000色ものカラー・パターンの中から自由にボディカラーを選択し、自分 だけのオリジナルカラーをオーダー出来るのだが、多くの顧客はシグネチャー・カラーのブラックの一択を選択するため、販売車両の多くは45キログラムもの塗料を電着塗装させた上でオーブン内で乾燥。その後、2層のクリア・コートを施しつつ4人の職人の手で磨き上げてハイグロスなピアノカラーを作り出す。

 

この深みのあるブラックは、ハイ・コントラストな手塗りのコーチラインを描くための完璧なキャンバスとしての役割も担っており、ロールス・ロイス・モーター・カーズ・ファ ミリーの鮮やかさを印象づけるものとなっている。

 

 

またその独特のダーク感は、本来は鏡面に磨き上げられる〝スピリット・オブ・エクスタシー〟や〝パンテオングリル〟などのロールス・ロイスの特徴的な部分をも覆い尽くす。但しこれらのパーツは単に黒く塗装が重ねられるのではなく、元々のクロームメッキ工 程に特殊なクローム電解液を導入。ステンレス・スチール製の下地に共析させてダーク仕上げとされる。

 

エクステリアの仕上げには、ブラック・バッジ・ゴーストの専用デザインが施されたビスポーク21インチのコンポジット・ホイールが装着される。そのバレル部分には22層のカーボン・ファイバーを3方向に交差させて配置したものを使用しており、これをリムの外周で折り返すことにより合計44層の カーボン・ファイバー層で強度を高めた。3D鍛造のアルミニウム製ハブは、航空宇宙分野規格のチタン製ファスナーでリムに固定され、ロールス・ロイスの特徴的なフローティング・ハブ・キャップも付属する。

 

 

インテリアでは、スイートと呼ぶに相応しい雰囲気を醸し出すべく、カーボン・ファイバーとメタ リック・ファイバーを使った深みのあるダイヤモンド・パターンの複雑かつ、繊細な生地がロールス・ロイスの職人たちの手によって生み出される。

 

インテリア・パーツのベース部分には、複数のウッド・レイヤーを圧着させ、そこにテクニカル・ファイバーの層のための基盤となるブラックのボリバル・ベニアを使用。ベニアの固定のため100度の温度下で1時間圧着して硬化させる。

 

これにレジン・コーティングされたカーボンとメタ リック・ファイバーと、メタル・コーティングされた糸をダイヤモンド・パターンで織り込んだ生地を手作業で貼り合わせて立体感を演出する。その後、サンド・ブラストと6層のラッカーを使い手作業でサンディングとポリッシュを行なった後、車両に組み込む。

 

なお室内は総じてブラック・バッジ・ゴーストのノワールな雰囲気を高めるため、金属光沢の部品を減らす選択を行い、ダッシュボードや後部座席のエア吹き出し口は経年劣化や反復使用によって部品が変色したり変質したりしないよう金属着色法のひとつである物理蒸着法(PVD)を使って暗色化されている。

 

ダッシュボードの助手席側に配 置された星座のモチーフは、ルームライトが点灯していない時は見えないようになっ ている。また「ゴースト」と同じく、キャ ビンの時計や計器盤の照明に合わせて念入りに調整されている。個別型リヤ・シートのテクニカル・ファイバー製「ウォーター フォール」部分には、ブラック・バッジ・ファミリーのモチーフである無限の可能性を表す数学記号の「レムニスケート(極座標の方程式を表す曲線)」があしらわれる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。