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2023年8月25日【新型車】

ロールス・ロイス、アメジスト ドロップテールを発表

坂上 賢治

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ロールス・ロイス・モーター・カーズは8月24日、ロールス・ロイス アメジスト ドロップテールを発表した。このクルマは、宝石ディーラーが家業の原点だとする常連客からの依頼で制作された。アメジストは、その子息の誕生石からインスピレーションを得たものとしている。

 

製作した車両は、顧客のヴァシュロン・コンスタンタンの時計にインスピレーションを得て仕上げられ、スイス・グシュタードで顧客と家族、友人たちのプライベートイベントで披露。今は貴重な宝石を筆頭に、自動車や現代美術品のコレクションが並ぶ私設美術館に保管されている。

 

 

車両は故郷の文化遺産を称賛したいとする顧客の想いを受けて、自宅近くの砂漠に咲くグローブ アマランサス ワイルドフラワーを反映。宝石に係る事業が繋いだ家族の歴史や、高級時計技術への情熱を投影したものとした。

 

その4つのユニークな表現のうち、その1つがアメジストにインスピレーションとしたエレガントな表現にある。

 

 

例えばデュオトーンの外装塗装仕上げは、花の開花の複数の段階を捉えたもの。本体色は、花に敬意を表してグローブ アマランサスと名付けられた繊細なシルバーを基調とした柔らかな紫の色合いを持たせた。

 

車体上部に使用した深い紫のアメジスト コントラスト ペイントには、赤、青、紫のマイカフレークがブレンドされており、微妙な金属光沢のある独特の藤色を作り出し、光を反射して魅惑的な虹色を思わせるアルミニウムの細かい斑点で表現。

 

 

直射日光の下で、22インチホイールの内側に施されたほのかな藤色のペイントは、鏡面研磨されたアルミニウム表面に微妙なコントラストをもたらす。

 

パンテオングリルでは外側のグリルの周囲とねじれたベーンの部分は、各仕上げを区切る正確な線を引くべく手作業で50時間以上ブラシを掛けて研磨した、この表面処理は高級時計のコレクターとして活動する顧客の子息のアーカイブからインスピレーションを得て提案した。

 

 

アメジストに囲まれたスピリット オブ エクスタシーのフィギュアは、輝きが目立つことを避けるため、宝石をファセットカットではなく水滴状の丸みを帯びた形に成形して研磨するカボション加工で仕上げられた。フロント下部の複雑なエアインテーク形状はデジタル設計をベース、複合材料に印刷された上でステンレス鋼のインゴットを組み込んだ。

 

これらの車体を構成する材料の選択は、クライアントが提供したカラマンダー ライト オープンポア木材のサンプルから始まった。その木材サンプル色は、自動車のレザー処理のインスピレーションとなっている。

 

 

砂丘と名付けた穏やかな色合いのレザー表皮は、内装の色調と完全に一致するよう配慮されたが、同社のウッド素材の専門家は皮革と同色の素材を調達するために100 本以上の丸太を6 か月以上掛けて検討を重ねた。

 

またアウトデッキにも木材を使うべく、空力の技術者は木材調達者と様々な木材を検討。その結果、世界で唯一の木製表面を持つボディシルエットを実現させた。

 

 

取り外し可能なハードトップは、同車に2つの異なる特徴を持たせるよう設計されている。屋根がなければ、ドロップテイルはしなやかなオープントップのロードスターとなり、ルーフを取り付けると精悍なクーペ形状となる。

 

 

そのルーフには、アメジスト ドロップテールの色に合わせて色合いを変えるガラスを開発するよう要求した顧客に応えて、表面の色と透明度がカメレオンのように瞬時に変化するエレクトロクロミックガラスが組み込まれた。

 

これは非アクティブ化した際に完全不透明となって、自動車のアメジストの外装仕上げを反映した微妙な紫の色合いになる。反対にガラスをアクティブかするとインテリアスイートで使用されている砂丘のレザーの色と一致する色合いで半透明になる。

 

 

なお内部の木製部品も外部部品と同じく厳しい耐久基準を満たすよう、150を超えるサンプルに対して、耐光・耐雨テストを筆頭に+80°C から -30°C までの耐温テストなど8,000時間以上の時間を掛けた。

 

その内装の処理では、希少なアメジストの宝石による文字盤の装飾にも拘った。それはスピリット オブ エクスタシーでの宝石の処理と同じく、ファセットカットではなく凸型カボションスタイルで形作られた。

 

 

なお、それぞれの石の透明度は、高級ジュエリーに与えられる基準となっており、それは顧客企業に於ける宝石の専門家によって検査されている。

 

フェイシア(インストルメント・パネルとダッシュボード)には、顧客から依頼を受けたスイスの高級時計メゾン、ヴァシュロン コンスタンタンのタイムピースが飾られた。

 

 

時計メゾンが〝レ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨン〟と名付けた同作品は複雑な手巻きムーブメントを備えており、ジュネーブで手作りしたホルダーにしっかりと収められており、必要に応じて自動車から取り外して個別に保管することもできる。この時計は、時と分が瞬時に戻るバイレトログラード表示とバイアキシャル トゥールビヨンも備えている。

 

このサンバーストギョーシェ模様が施されたホワイトゴールドのベースプレートに取り付けられた時計のデザインに合わせ、計器の文字盤もヴァシュロン・コンスタンタンの形状、素材、色が完璧に調和するように配慮した。

 

 

結果、このクルマは、同社がこれまでに製作したロールス・ロイスと同じく、遊び心を込めつつ、顧客の意向を汲み取った1台に仕上がった。

 

この特別仕様車についてロールス・ロイス・モーター・カーズ最高経営責任者のトルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏は、「ロールス・ロイス アメジスト ドロップテールは、クライアントの意志を受けて芸術的な切り口を反映させたロールス・ロイス コーチビルドの成果のひとつです」と述べている。

 

 

また同社のデザインディレクターを務めるアンダース・ウォーミング氏は、「ロールス・ロイス アメジスト ドロップテールを発表できたことを光栄に思います。

 

これは車両製作委託した顧客の文化遺産、家族の遺産、情熱を称えた傑作車です。このクルマは、顧客の想いをどれほどクリエイティブに反映させたかを示すものとして、当社の歴史に残るものとなります」と話す。

 

 

加えて同社のコーチビルドデザイン責任者のアレックス・イネス氏は、「アメジスト ドロップテールは顧客の芸術性を反映させた習作としての典型であり、その魅力は細部に施した繊細な仕事にあります」と結んでいる。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。