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2020年8月3日【エネルギー】

スズキ、2021年3月期第1四半期連結決算

松下次男

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スズキ・外観

 

通期業績見通しはインドでの数値算出が困難として前回に続き公表見送り

 

 スズキが8月3日発表した2021年3月期第1四半期(4~6月)連結決算は、期の儲けを示す営業利益が前年同期比97・9%減の13億円と大幅な減益となった。新型コロナウイルス感染症の影響で主力のインドで生産、販売が大きく落ちこんだことなどが響いた。2021年3月期の通期業績見通しはインドでの数値算出が困難として前回に続き公表を見送った。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 第1四半期の売上高は4253億円で前年同期比53・1%減と半減した。主力のインドで四輪車販売が8割強減少するなど、新型コロナの感染拡大により全地域でマイナスとなったのが響いた。
当期純利益は18億円と同95・6%減となった。グローバルの四輪車販売台数は26万3千台で同64・3%減。四輪車の生産台数は23万2千台で同69・3%減となった。

 

インドは4~6月の生産台数は前年同月比86・8減、四輪車販売台数も同82・1%減

 

 地域別にみると、インドでは新型コロナ感染症に伴うロックダウンが3月末から2か月以上に及び、その後も段階的な解除にとどまり、感染者数も7月中旬には100万人を超えた。
さらに感染者は依然、増加しており、収束の目途が立っていないという。こうした中で、販売店では5月初旬から徐々に稼働を開始、生産についてもマネサール工場、グルガオン工場、グジャラート工場をそれぞれ5月12日から25日にかけて段階的に再開した。
しかし、生産、販売への打撃は大きく、4~6月の生産台数は5万4千台と前年同月比86・8減にとどまり、四輪車販売台数も6万6千台と同82・1%減となった。

 

 この結果、マルチ・スズキ・インディア社の第1四半期業績は当期純損益が円換算で38億円の赤字(前年同期219億円の黒字)に転落。売上高も526億円(同2979億円)と大幅減収になった。
なお、マネサール工場は6月29日から、グルガオン工場は7月6日から2勤交替制を再開しており、グジャラート工場も8月中に2勤交替制を再開する予定。また、工場では出勤時の消毒、体温測定やフェイスシールドでの勤務、さらにパーテーション・アクリル板設置などの新型コロナも感染防止対策を施して生産活動に乗り出しているという。

 

日本は4~6月期の四輪車販売台数が36・5%減。ASEANも大幅減で影響は全地域に

 

 日本の4~6月期の四輪車販売台数は10万6千台で同36・5%減となった。内訳は、軽自動車が8万8千台で同35・4%減、登録車が1万8千台で同41・4%減の実績。四輪車生産台数は14万7千台で同35・3%減となった。
インドネシア、タイ、フィリピン、ミャンマー、ベトナムのASEAN(東南アジア諸国連合)5か国の四輪車販売台数は各国で新型コロナ感染拡大防止策が実施されたこともあり、1万9千台と同53・6減の大幅な落ち込みとなった。
ASEAN最大のインドネシアでは9千台と同62・8%減、フィリピンも2千台と同70・1%減の落ち込みとなった。タイは5千台で同29・5%だった。

 

四輪事業の営業利益はゼロ、二輪事業は30億円の赤字、マリン事業他は43億円の黒字

 

 二輪車は新型コロナ感染症の影響を受け、主要市場のアジアでほぼ半減するなど生産、販売とも大きく落ち込んだ。生産台数は18万9千台で同56・0%減となった。販売台数は27万4千台で同39・8%減。うちアジアでは19万9千台と同46・2%の販売台数減となった。
一方で、中国では9万4千台と同8・3%増、北米でも1万9千台と同59%増と二輪車販売を伸ばした。

 

 事業別の業績をみると、四輪事業は営業利益がほぼゼロで、二輪事業は30億円の赤字、マリン事業他で43億円の黒字を達成した。
2020年度の通期業績予想については、インドで新型コロナの感染が依然拡大していることから、現時点で見通しを合理的に算出することが困難とし、前回の2020年3月期決算発表時に続いて未定とした。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。