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2019年8月5日【トピックス】

スズキ、2020年3月期第1四半期決算会見

間宮 潔

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2020年3月期第1四半期決算は減収減益、通期業績は期初予想を据え置くも下方修正含み

 

 スズキが8月5日発表した2020年3月期第1四半期(2019年4~6月)連結決算は、売上高で前年同期比8.1%減の9075億円、営業利益で同46.2%減の627億円、当期純利益で同52.8%減の405億円と減収減益となった。

 

減収は日本での完成検査体制再構築による減産に加え、インドやパキスタン、インドネシアにおける四輪車販売減によるもので、減益要因は販売減に加えて為替の影響、諸経費の増加による。

 

 同四半期におけるスズキ四輪車販売が前年同期比14.4%減の73万8千台にとどまったことが業績に反映した。二輪車販売は、インド、フィリピンなどで増加した結果、同6.6%増の45万4千台となった。

 

事業別業績では、主力の四輪事業が売上高8171億円(前年同期比9.3%減)、営業利益546億円(同50.1%減)と減収減益となった。これに対して二輪事業は売上高656億円(同2%増)、営業利益23億円(同7.5%増)となり、マリンその他事業も売上高248億円(同9.9%増)、営業利益58億円(同16.5%増)と共に増収増益となった。

 

 

 8月5日、東京・芝大門のくるまプラザで開いた決算説明会で、長尾正彦取締役常務役員(経営企画室長)は、「現段階では期初予想を据え置きとする」としたが、「見通しは厳しく、今後の動向を踏まえ、新たな予想をどこかの時点で公表させてもらう」とし、インド市場の回復が読めないことなどを指摘、期初の増収増益予想を下方修正含みで見直すことを示唆した。

 

またこの間の四半期ごとの業績を振り返り、「前期第2四半期から減益基調になって、以降、営業利益は600億円前後で今期まで続いている。去年のファーストクォーターは、好調要因が重なって、やや出来すぎの感があり、蓋を開けたら第2四半期で減益となり、今日まで続いている」との認識を明らかにした。

 

2019年度第1四半期の営業利益は22億円の原価低減活動でプラスにするも、諸経費増で205億円、売上・構成変化などで195億円、為替差損で69億円、減価償却費増で64億円、研究開発費増で27億円――の減益要因が重なった。

 

 地域別売上高でみると、日本の第1四半期売上高は前年同期比6.5%減の5091億円、欧州が同3%増の1657億円、アジアが同13.2%減の4312億円、その他地域で同6.1%増の465億円となった。ちなみにインド子会社のマルチ・スズキ・インディア社の第1四半期業績(インド版IFRS会計処理、円換算)は、売上高で2979億円、前年同期に比べ598億円の減少となった。

 

営業利益は現地で開示していないが、参考数値として180億円を示し、前期比251億円の減少とした。その他地域ではフィリピンが前年同期比32.2%増の6千台としたほか、パキスタン、インドネシアなどで軒並み減少した。ただパキスタンには6月から新型アルトを投入、初めて排気量660㏄、車幅1490㎜の日本規格で現地生産を始めた。

 

 これまで現地のパックススズキモーターでは軽自動車ベースに排気量800~1000㏄のエンジンを搭載してきた経緯があり、今後の市場動向を見極めた上で日本規格の軽自動車をグローバル展開する意向を示した。

 

インドは、選挙前後から買い控えが起き、新政権が発足するも、まだ安定せず、需要が回復していない指摘。「明るい材料を探しているが、足もとは厳しい。

 

しかしインドは潜在需要が大きく、だからこそ先行して投資している。二輪車から四輪車、中古車から新車への乗り換えなど、桁違いの市場があり、6月から移動ショールームを展開している」と農村部への普及、テコ入れ策を展開。一方、職業訓練校「マルチ・スズキJIM」も日本式ものづくり学校として認定され、人材確保にも乗り出している。

 

またインドにおける高級販売チャンネル「NEXA」を現在、300店舗体制と広げているが、「エントリーカーからの乗り換え需要を狙った受け皿」としてキメ細かな販売戦略を相次いで打ち出す。

 

来年4月から新車に適用される新排ガス規制(BS6)に対応して、「年内にも環境対応車の投入を準備する。まだ販売は6%台だが、お手頃なマイルド・ハイブリッド車の普及に取り組みたい」とした。

 

 ちなみに国内の四輪車生産は完成車検査体制の再構築に取り組んでいるため、減産体制をとっている。6月には製造部門から独立した検査本部が組織され、検査員の増員、検査設備の見直し作業が進められている。「検査に漏れがないか、洗い出し作業を進めている。

 

これを集大成させたうえで、正常化させる」と増産には慎重な姿勢を貫く。主力のアルトは1979年5月の発売から40周年を迎え、節目を迎えるので、記念車などを投入するほか、高齢者の事故多発を受け、サポカーS該当車の拡充、衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)認定車普及に努めるほか、ペダル踏み間違い防止の後付け装置の開発を急ぎ、供給体制を整えるとした。(佃モビリティ総研・間宮潔)

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。