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2019年10月7日【オピニオン】

誕生から53年が経ったカローラが抱える苦悩

山田清志

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新型「カローラ」が9月17日に発売されて約2週間、そんな中、トヨタ自動車は報道陣を集めて試乗会を開催した。少しでも新型カローラの走りや質感を感じてもらい、その良さを体験してもらおうということだが、その開発にはさまざまな悩みや苦労があったそうだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

 

高齢化が進むカローラユーザー

 

「発売してからまだ2週間なので、従来通り、カローラからカローラへ乗り換えるお客が多い。ただ、店頭には若い人を含めていろいろな年代のお客が来ている」

 

こう話すのは開発責任者の上田泰史チーフエンジニアだ。1966年に初代が登場してから今回で12代目を数えるカローラは「日本のカローラとして原点に立ち返って開発した」という。

 

カローラは現在、世界15拠点で生産され、150カ国以上で年間約150万台が販売されているグローバルカーとなっている。累計販売台数は4750万台。その大きさや外観、仕様はその国のニーズに合わせてさまざまなタイプが存在する。日本では“大衆車”というイメージだが、東南アジアや南米などでは“高級車”と見られ、特にブラジルではメルセデスベンツと比較される高級車として扱われているそうだ。

 

写真左から、トヨタ自動車・MSシャシー設計部第1シャシー設計室の白井一禎氏、MSデザイン部主幹の高澤達男氏、製品企画ZE主幹の梅村伸一郎氏

写真左から、トヨタ自動車・MSシャシー設計部第1シャシー設計室の白井一禎氏、MSデザイン部主幹の高澤達男氏、製品企画ZE主幹の梅村伸一郎氏

 

そのため、カローラの位置づけがトヨタの中で難しくなってきた。日本市場に合わせればグローバル市場から小さすぎになり、米国市場に合わせれば日本市場では大きすぎる。そしてもう一つ、日本市場では大きな問題を抱えていた。それはユーザーの高齢化だ。

 

先代のカローラは、ユニバーサルデザインを基軸に5ナンバーサイズにし、そのサイズとしては最大の空間と乗り降りしやすいように最大寸法にした。そして、ユーザーの若返りを狙った。ところが、セダン購入者の平均年齢が70代、ワゴンが60代という結果だった。

 

トヨタ自動車・MS製品企画ZE主幹の梅村伸一郎氏

トヨタ自動車・MS製品企画ZE主幹の梅村伸一郎氏

 

思い切って変えないと生き残れない

 

「思い切って変えていかないと、次の50年生き残っていけない。引き継いでいくものは何なのか。変えていくところはどこなのか」――カローラの開発陣は検討を重ねたという。

 

そして出した答えが、初代を出した時のコンセプトだった。良品廉価で、走りに余裕があるスポーティなクルマ。少し先を行く1ランク上のクルマで安心して乗れるクルマだ。「11代目はスポーツの“ス”の字もなかった。しかも魅力が少しずつ落ちていった」と開発陣の1人は振り返る。

 

車体性能などを中心にお話頂いたトヨタ自動車東日本・第3ボデー設計部第6ボデー設計室グループ長の山口連氏、トヨタ自動車東日本・プロジェクトD主担当員の小田直哉氏、トヨタ自動車・MS製品企画ZEチーフエンジニアの上田泰史氏、トヨタ自動車・MS車両性能開発部第1車両性能開発室の三浦弥三郎氏

車体性能などを中心にお話頂いたトヨタ自動車東日本・第3ボデー設計部第6ボデー設計室グループ長の山口連氏、トヨタ自動車東日本・プロジェクトD主担当員の小田直哉氏、トヨタ自動車・MS製品企画ZEチーフエンジニアの上田泰史氏、トヨタ自動車・MS車両性能開発部第1車両性能開発室の三浦弥三郎氏

 

そこで、新型カローラはそれまで採用していた「ヴィッツ」のプラットフォームから一回り大きいグローバルモデルのプラットフォームに変更し、3ナンバー化した。ただ、大きさはグローバルモデルに比べて、セダンは135mm短く、ワゴンは155mm短い。全幅もセダンは35mm狭く、ワゴンは45mm狭い。ホイールベースも60mm短い。

 

「日本での使い勝手を考慮し、日本にジャストフィットな車両パッケージを同時に開発、採用した。そして、TNGAプラットフォームを採用することで、低重心でスポーティなスタイリング、走る楽しさと取り回しの良さを両立させた。欧州の競合車には決して負けない」と上田チーフエンジニアは強調する。その開発ではテストコースの駐車場をグルグルと回って、乗り心地や運転のしやすさを確かめたそうだ。

 

もちろん新型カローラは走りだけでなく、安全装備も充実している。自転車や夜間の歩行者検知が可能な、最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を標準装備。そのほか、駐車場など低速時に壁や車両を検知して衝突被害の軽減に寄与するインテリジェントクリアランスソナーや、後方から接近してくる車両を検知して衝突被害軽減に寄与するリアクロストラフィックオートブレーキもオプション設定できるようにした。

 

 

コネクティッド機能についても、国内トヨタブランドとして初めてディスプレイオーディオを全車標準装備。スマートフォンとの連携が可能になり、日常利用している地図アプリや音楽などをディスプレイで操作することが可能になった。

 

「新型カローラではもう少しユーザーを若返らせるため、ターゲットユーザーを30代に設定した。その世代を中心に幅広いお客さまに乗ってもらいたい」と上田チーフエンジニアは話す。

 

誕生から53年を経過したカローラは大きな岐路に立たされているといっていいだろう。果たしてトヨタの目論見通りユーザーの若返りを実現できるのか、新型カローラの今後の動向には目が離せない。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。