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2020年3月19日【アフター市場】

豊田自工会会長、働き方改革・販売改革を訴える

松下次男

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 日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は3月19日、東京都内で定例会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って「納車遅れ」など自動車の生産、販売活動に大きな影響が出ていることを明らかにした。一方で、直面する課題も見えてきたとし、テレワークなどの働き改革やインターネット販売などの取り組みを推進すべきと提唱した。(佃モビリティ総研・松下 次男)

 

 豊田会長は新型コロナの感染拡大が全世界へ広がっている状況について「今まで世の中のスピードが速いというフレーズを幾度も使ってきたが、こんなにも世の中がガラリを変わる時があるのかというのが正直なところだ」と感想を述べた。会員会社の中からも感染者を確認。

 

 このような中で、自動車の生産、販売にも大きな影響が出ているとの見解を示した。供給が滞っている部品を「他社で作ってもらう」ことや「徹底した予防対策を施して、必死で生産活動を続けている」としながらも、「残念ながら、お客様への納車が遅れ、多くの方にご迷惑をおかけしている」と述べた。

 

 また、先行きについても「人、物の停滞は経済に大きな影響を与える」と懸念を表明。自動車産業みてもユーザーに「購入してもらうことで、生産がある」と述べ、移動の制限が販売、生産活動へ影響を及ぼしているとの見方を示す。実際、欧米でも完成車工場の生産停止が広がっている。

 

国内販売をみても、1月、2月と前年同月比約10%落ち込み、3月商戦への影響も小さくない。豊田会長は販売店では「登録業務に必死に取り組んでいる」としながらも、「先が見えない」状況に見通しの難しさをにじませた。この先の影響度では、「今期より、来期の方が厳しくなるだろう」との見解を示した。

 

一方で、「世の中にはコントロールできる話とコントロールできない話がある。比率でいえば、そのほとんどがコントロールできないものばかり」と述べたうえで、「コントロールできないことを深刻に考えれば人はネガティブになる」と分析。「ネガティブになっても何も良くならない。ネガティブの連鎖は世の中を悪くするばかりだ。だから、深刻にはならず、まずはコントロールできる範囲のことを真剣にやっていければよい」と強調した。

 

そこで今を「改革を進めていく時と捉えている」と提唱。今回の新型コロナの感染拡大に直面し、「急激に、すべての人の生活が変わることになった。その結果、今まで見えてこなかった課題が浮かび上がってきた」と述べて、販売活動の変化や働き方改革などの取り組みを掲げた。

 

販売活動でいえば、インターネットを活用した「消費行動へのシフト」などを予測した。これまでは「クルマはまだそこまでならない、とどこかでそう思っていた」とところあったとし、自動車業界も「世の中の進化についていくことを見つめ直さなければならない」とした。

 

働き方改革についても「待ったなしで実現しなければならない」とテーマに掲げた。だが、感染拡大で多くの人が在宅勤務をしなければならない中、「人事の仕組みは対応できるのか、持ち帰れるパソコンはあるのか、また通信容量は耐えられるのか、仕事の優先順位や標準化ができているのか」などを指摘し、在宅、テレワークと言い出してもすぐに実現できる状況になっていない現状を訴えた。

 

このため、「これらが整っていなければ、働き方改革は到底、実現できない」とし、改革を促した。テレワークの対応分野についえは事務部門や開発分野を示した。

 

生産現場については、ユーザーへの迷惑に直結するため「その手を止めてはならない」と別の対応を提案。サプライチェーンがストップしないよう東日本大震災などの度重なる自然災害の教訓を生かし、「その対応を積み重ねてきたが、それでも今回、お客様への影響は避けられない」と述べた。今回の新型コロナの感染拡大によるサプライチェーンの影響では、経済産業省でも支援に乗り出す。

 

新型コロナの感染拡大による先行きの市場展望をリーマンショックと比較してどうかとの質問では、リーマンショック時には「その後、中国が成長を牽引した。新興国も伸びた。今回はけん引役が見当たらない」と答えた。世界、日本の先行きの市場動向は「見通しは難しい」と述べるにとどめた。

 

自工会もこの時期、次年度の国内の需要見通しを発表するが、今回は見送った。
また、今年の春闘を振り返って「以前は賃金をどうするかがが焦点だった。それが数年を経て、大変革をいかに生き延びていくか、競争力を高めるために、お互い何をしていけばいいのか、労使が向き合って議論する場に変わりつつある」と述べた。

 

自動車産業をサービスや他産業と比較すると、「自動車は賃金、雇用とも拡大している。サービス業は雇用のみ。他の製造業では雇用が微減しているところもある」とし、わが国の経済、社会活動を支えている強調。このため、国際競争力を落とさないためにも、自動車税制軽減を推進すべきだと訴えた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。