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2021年2月10日【事業資源】

トヨタ、2021年3月期第3四半期連結決算

間宮 潔

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トヨタ自動車・ロゴ

通期業績予想をさらに上方修正、営業利益で2兆円確保

 

 トヨタ自動車は2月10日、オンラインで2021年3月期第3四半期連結決算の業績説明会を開催、第3四半期単体(昨年10月~12月の3カ月累計)での連結販売台数が前年同期比6.9%増の235万3000台と回復してきたことや半導体不足による生産への影響も吸収していることから、通期売上高を前回数値から5000億円上積む26兆5000億円に引き上げるなど業績予想を上方修正した。(佃モビリティ総研・間宮潔)

 

 トヨタの2021年3月期第3四半期の連結決算(昨年4~12月の9カ月累計)は、売上高が前年同期比15%減の19兆5253億円、営業利益が同26.1%減の1兆5079億円、当期利益が同14.1%減の1兆4681億円となった。

 

 第3四半期(累計)の連結販売台数(レクサスやダイハツ、日野ブランドを含む)は、前年同期比20.7%減の543万8000台となり、上半期でのコロナ渦による台数減が響いたものの、第3四半期単体で7%近い伸びを確保、プラスに転じた。

 

 非連結の中国事業などを含むトヨタグループ総販売台数では前年同期比11.4%減の721万1000台となる。

 

 連結営業利益での主な減益は、販売面で6150億円、為替変動で1750億円を計上したが、これを原価改善努力で1000億円、諸経費の削減努力で850億円、その他737億円の増益によって圧縮をはかった。

 

 中国事業の状況(9カ月間累計)は連結子会社の営業利益、持ち分法適用会社の投資損益を含めて前年同期比52.7%増の2919億円となった。

 

 レクサスブランドをはじめとする中国のトヨタ車販売(小売り)が前年同期比19.9%増の152万7000台と好調だ。

 

 これに対して中国を除くアジアでは、まだ前年を下回っており、また中近東、中南米などその他市場もコロナ禍の影響で販売回復が遅れている状況にある。

 

 通期の連結販売台数見通しは、前回見通しに対して10万台上乗せした760万台(前期実績比15.1%減)に上方修正した。グループ総販売台数では31万台上乗せの973万台(同7%減)とした。

 

 これを受け、通期の連結決算は、前回公表(11月6日)の見通しを上方修正した。連結売上高は前回数値に5000億円上乗せした26兆5000億円(前期実績比11.3%減)とした。

 

 また連結営業利益の見通しも、7000億円上積む2兆円(前期実績比16.6%減)、当期利益で4800億円上積む1兆9000億円(同6.7%減)にそれぞれ上方修正した。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で先行き不透明な状況の中で、昨春、豊田章男社長はあえて期首に「営業利益5000億円、800万台」の目標(基準)を掲げた。

 

 リーディングカンパニーとしての目標はクリアできる見通しで、9車種の新モデルを予定通り投入し、在庫を丹念に調整し、売りにくいモデルに販売施策を打つという‶当たり前の行動〟をとってきた成果だった近健太執行役員は強調した。

 

 世界的にひっ迫している半導体不足による今期生産への影響について、「減産はない」と否定、先々のリスクを注視している説明した。

 

 特に東日本大震災以降、部品調達で課題を抱えたトヨタでは、3次サプライヤーまで巻き込んだ緊急時の部品調達の情報ネットワーク「RESCUE」(レスキュー)システムを導入、不測に事態に備えている。

 

 またコロナ下でも2次以下のサプライヤー約1万社と緊密なコミュニケーションをとることで、トヨタが求めていない 「過度な品質」で納められた部品が浮き彫りになるなど、副次効果がでてきている。
「現地・現物主義」のトヨタだが、コロナ禍で海外出張がほとんどなくなった分、緊密なリモート会議が増え、また参加者を広げることで情報共有を広げている。

 

 一方、生産部門などは、リモートカメラを駆使して、遠隔地の工場現場をきめ細かくチェック、「匠」と呼ばれるベテラン指導者がリモートで改善指導する場面が増え、効率を上げているといる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。