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2023年12月20日【新型車】

フィアットの2台の新ピープル・ムーバー、欧州デビュー間近

坂上 賢治

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ステランティス傘下のフィアットは12月19日(イタリア・トリノ発)、同ブランドのピープル・ムーバー、E-Doblò(e-ドブロ)とE-Ulysse(e-ユリス)の刷新内容を明らかにした。車両の受注開始は、1月末までに正式に始められ、まずはイタリアとオーストリアでリリースを開始。続いてヨーロッパの主要市場へと順次展開される予定だ。

 

この電動多目的車は、昨年2022年に10年振りにE-Ulysseとして復活したピープル・ムーバー・シリーズであり、フィアットにとっては欧州市場でマーケットシェア拡大を担うための戦略車両のひとつだ。

 

その性格づけは、ユーザーフレンドリーな車体を持ち、直観的な新インフォテインメントシステムと次世代ADASを実装した製品であり、日常での使い勝手の良さと親しみ易さを訴求する身近な電動モビリティとして、今回は、昨年発表した先代モデルよりも、更に効率性を高めたパワートレインを介して航続距離の拡大を果たしている。

 

そうしたなか新型E-Doblòは、より多くの利用用途に適合させるべく、より日常の使い勝手に磨きを掛けたモデルとなっている。車体は2つの開口部が設けられ、より低められたスキッドプレートを実装させた上で17インチホイールを履かせて走行安定性を向上させた。

 

乗員のためのキャビン空間は、スタンダード仕様では2列目に3人乗りの独立シートを用意しつつも、荷物の積載スペースを3,500リットルまで拡張できるようにするなど利用者側の多様なニーズに応えるシートバリエーションが用意されている。

 

なお後部ドアは、全てを跳ね上げること無く上面のウインドウから荷物を積んだり、取り出したりできる。また荷室空間の確保に関しては、最大容量18リットルや60リットルのプラス空間が確保するなど、フィアット側でMagicTOPと銘打った拡張オプションも用意される。​

 

走行性能は、電動システムを介して0-100kmを11.2秒で駆け抜け、最高速度は135 km/h。WLTP複合サイクルで最大320kmの航続距離を刻む。運転モードはノーマル、エコ、パワーの3つ。

 

ステアリングホイールに搭載した2つのパドルを使用して回生ブレーキのレベルを低、中、強の3つから選択できる。充電機能では、最大100kW急速充電システムを利用すれば30分でバッテリー容量の80%まで充填可能だ。

 

ドライバー向けの快適装備では、巡航運転時に車間距離の維持に役立つアダプティブ クルーズ コントロールをオプションで用意。カラフルなタッチスクリーンディスプレイを備えたインフォテイメントシステムは、Apple CarPlayとAndroid Auto™に対応している。

 

 

対してe-ユリスは、ホテル、タクシー、VIP 送迎などの輸送サービスに適した仕様となっており、車体サイズは3列シートを配する程の室内空間を持ちながらも、郊外や市街地を問わず走行環境を選ばないコンパクトさが魅力の1台となっている。

 

BEVユニットは、用途に合わせて50kWhと75kWhの2つのモーターが用意される。航続距離はいずれもWLTPサイクルで50 kWhモデルが最大224 km。75 kWhモデルは最大350kmへと航続距離を伸ばせる。回生ブレーキレベルの選択は、ステアリング脇のパドル操作を介して低、中、強の3つから選択できる。

 

エクステリアは、電動車であることを印象付ける新たなフロントフェイシアを持たせた上でLEDヘッドランプを組み付けた。

 

対するインテリアでは、Apple CarPlayとAndroid Auto™システムに対応した大型10インチのHDタッチスクリーンに音声アシスタント機能。Bluetooth接続のApple CarPlayとAndroid Auto™システムに対応したオーディオ機能も備え、最上位バージョンには最新鋭ナビゲーションも搭載しつつも、数多くのコンパートメントスペースが備えられ、快適性を大きく向上させている。

 

乗客や荷物の組み合わせは多岐に亘り、7人乗り・8人乗りバージョンを筆頭に最大 9種の座席構成が選択できる。

 

また室内の上部には、外光を取り入れるための2枚のルーフウインドウを備えることもでき、後部ドアは、全てを跳ね上げること無く上面のウインドウから荷物を積んだり、取り出したりできるため、事業上の送迎用途ばかりではなく、休暇を利用した山や海へのレジャー旅行を含め、多目的用途のピープル・ムーバとしても理想的なパートナーになると謳っている。

 

ドライビングのための快適装備では、走行時の潜在的な危険を回避するADASにより、車両が車線を逸脱した場合にステアリング角度を即座に修正するレーン・キーピング・アシスト機能、衝突の危険が生じた場合に自律的にブレーキを作動させる緊急ブレーキ・システム機能。更に最新設計のサイド・エアバッグも備える。

 

また車体構造の手直しにより受動的安全性も向上。新たな180°リアカメラとアクティブクルーズコントロールも搭載されており、ドライバーがプログラムした値に車速を自動的に維持し前車との距離を自動的に調整するインテリジェント・スピード・アシスト機能、サイドパーキングアシストと前後パーキングセンサーによるブラインドスポット検出も搭載した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。